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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第六話 手を伸ばす

◆レイナ


戦場近くへ降り立った。


またこの音。


匂い。


「かなり劣勢のようね」


エルナが静かに呟く。


「相手が強国バルゼインですからねぇ」


「まぁ、“世界最強”がいないだけマシですが」


ルークが笑う。


……世界最強?


「戦況を変えましょう」


ルークが淡々と言った。


「我々は敵の中心に向かいます」


「中心!?」


レイナは思わず声を上げる。


「味方が一人もいないじゃない!!」


「いつものことよ」


「あはははぁ」


エルナは冷静に答え、ロキが楽しそうに笑う。


「レイナお姉ちゃん」


「弱いの?」


シオンが聞く。


レイナお姉ちゃん……


昨日で随分距離が近づいた。


「弱いよ」


投げやりに答える。


もう、どうにでもなれ。


戦場の奥へと進んだ。






◆バルゼイン王国・司令部。


「順調だな」


軍司令部長が腕を組む。


「現在、戦況は75対25。我々が優勢です」


部下が報告する。


「ノクシアは三方向同時戦争」


「兵力の分散を読み違えたな」


そのとき。


「報告します!!中心部に敵が出現!!」


「何!?中心部だと!?」


場が一気にざわつく。


「味方が敵に変化」


「さらに巨大な化け物が暴れているとのことです!」


「変化……化け物……?」


「能力者か。厄介だな」


司令部長は顔を歪めた。






◆レイナ


戦場の中心。


巨大な化け物が斧を振るい、敵兵を薙ぎ払う。


「どんどんやっちゃえ!」


「サモン」


異形の肩に乗るシオンが叫ぶ。


サモン……化け物の名前か。


「あの子一人でいいんじゃないかしら」


エルナが呟く。


「順調ですね」


「中心部を半壊させたら戻りましょう」


ルークはそう言いながら。


次々と敵を“自分”へと変えていく。


その瞬間。


ドゴン!!


巨大な拳がサモンを吹き飛ばした。


「きゃあ!!」


「シオン!!」


思わず叫ぶ。


サモンが崩れ、消える。


シオンの身体が地面に叩きつけられた。


「う……」


血が流れる。


「敵にも能力者がいるようですね」


拳の先。


右腕だけが異様に肥大化した男が立っていた。


「召喚能力か!」


「だが、この拳に敵うものはない!!」


堂々と構える。


「ロキ、無効化は?」


「だからぁ、発動後は無理だってぇ」


まずい。


あの能力者、相当強い。


「彼は仲間にはならなそうですね」


ルークが淡々と呟く。


こいつ……


「シオンを助けないと!」


「そうですね。エルナ」


エルナが一歩踏み出す。


「『オーバードラ……』」


その瞬間。


「次!!」


シオンが叫ぶ。


魔法陣が展開される。


再び、サモンが現れた。


「……まだ出せるの、あの子」


エルナが目を細める。


サモンと拳の能力者が激突する。


シオンは木にもたれ。


血を流しながら笑っていた。


「不意打ちじゃなきゃ」


「私のサモンは負けない!!」


押している。


だが。


様子が……


おかしい。


「やれ!!やっちゃえ!!」


声が、歪んでいる。


「もっと……もっとやって……」


笑っている。


痛みを忘れたように。


「あの子……」


エルナが眉をひそめる。


そして。


「ぐはっ……!」


拳の能力者が倒れた。


決着。


……のはずだった。


「サモン!!」


「ぐちゃぐちゃにしちゃえ!!」


止まらない。


何度も。


何度も。


何度も。


叩き潰す。


肉が、音を立てて潰れていく。


原型がなくなっても。


まだ振り下ろす。


「あはははははは!!」


シオンは空を見上げて笑う。


血に濡れながら。


両親を失い。


壊れた心のまま。


シオンは笑っていた。


その姿は。


悪魔となっていた。


周囲が、引いていく。


敵も、味方も。


誰も近づかない。


「壊れましたか」


ルークが冷たく言う。


「このまま暴れて中心部は壊れるでしょう」


「帰ります」


「……帰る?」


レイナは信じられない顔をする。


「シオンはどうするの!?」


「放置します」


「そのうち力尽きて殺されるでしょう」


「仲間じゃないの……!?」


ルークは返答しない。


見捨てるの……?


あんな状態の子を……?


「私が、何とかする」


気づけば、口にしていた。


ルークがわずかに目を見開く。


「……好きにしてください」


背を向ける。


エルナは一瞬だけレイナを見る。


迷いのある目。


だが、そのまま去った。


ロキは何も言わずレイナの後についていく。


……今なら、こいつらを。


一瞬、殺意がよぎる。


違う。


今は。


シオンだ。


「あははは……もっと……もっと……」


まだ笑っている。


止まらない。


レイナは一歩、踏み出した。


「シオン」


その瞬間。


「あはは……」


笑い声。


ゆっくりと、シオンの顔が上がる。


その目は。


完全に、壊れていた。


「……次は、お姉ちゃん?」


ゾクッとする声。


サモンが、ゆっくりと向きを変える。


レイナへ。


……敵認識。


幸い、シオンは離れている。


レイナは、静かに息を吐いた。


「……そう」


指を構える。


「なら、止めるだけ」


その瞬間。


サモンの巨腕が、振り下ろされた。


躱す必要はない。


レイナは、指を鳴らした。

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