第五話 出会う
◆レイナ
そこには。
一軒の屋敷が建っていた。
場違いなほどに静か。
戦場の気配は一切ない。
「あなたもどうぞ」
ルークが穏やかに言う。
レイナは何も答えず、そのまま中へ入った。
中は、さらに異様だった。
広い空間。
整えられた調度品。
まるで戦争とは無縁の世界。
「まずは」
「この子が起きるのを待ちましょうか」
ルークはそう言って椅子に腰掛ける。
エルナも、ロキも続く。
レイナも、無言で座った。
しばらくして。
「……ここは?」
少女が目を覚ました。
「こんばんは」
ルークが微笑む。
「あなたは誰?」
「私はルークです。仲間になりますか?」
唐突だった。
「……いいよ」
少女は目を伏せる。
動揺はない。
「反応が薄いわね」
「何か思うところはないの?」
エルナが問いかける。
「ないよ?」
「負けたから、どうでもいい」
淡々とした声。
「君のご両親は死にましたよぉ?」
ロキが軽く言う。
レイナの身体が強張る。
やめろ……
だが。
「……そう」
少女の表情は、何も変わらなかった。
「何とも思わないの?」
「あの人たちは、私を作っただけの人間」
「他の人と同じ」
壊れている。
レイナは直感した。
「では、これからあなたは仲間です」
「待って!」
思わず声が出た。
全員の視線が集まる。
「……どうしましたか?」
ルークが穏やかに首を傾げる。
「こんなの、おかしい……!」
「こんなやり方で仲間って……!」
「なるほど」
ルークは一度頷く。
「では」
「あなたにとって仲間とは何ですか?」
言葉が詰まる。
仲間……?
カイル。
ミナ。
切り捨てた存在。
私は……
答えられない。
「仲間に定義は必要ありません」
ルークは静かに言った。
「“仲間になりますか?”」
「“はい”」
「それで成立します」
狂ってる。
「……あなたは、それでいいの?」
レイナは少女を見る。
「いいよ」
「ありがとね、お姉さん」
微笑む少女。
レイナは、何も言えなかった。
「では、皆さん」
「好きな部屋で休んでください」
ルークが立ち上がる。
「明日、別の戦争に向かいます」
また戦争か。
全員がそれぞれの部屋へ向かう。
レイナも歩き出すと。
「お姉さん」
振り返る。
少女が立っていた。
「一緒の部屋、いい?」
……罠?
一瞬考える。
だが。
そんなわけないか。
「いいよ。名前は?」
「シオン」
小さく笑う。
「よろしくね」
こうして、二人は同じ部屋へ入った。
翌朝。
長いテーブルに、五人が揃う。
「本日は」
「ノクシア王国とバルゼイン王国の戦争へ向かいます」
ルークが淡々と告げる。
またノクシア……
「ねぇねぇ」
「私たちって傭兵なの?」
シオンが首を傾げる。
「いえ、違います」
ルークは紅茶を口にする。
「私はノクシア王国の人間です」
「それなりの地位と身分を与えられています」
「私はノクシアの味方です」
一拍置いて。
「今は、ですが」
薄く笑う。
……底が見えない。
「というわけで」
「今回はこの五人で出ます」
「また勧誘?」
エルナが聞く。
「いいえ。今回は戦力支援が主です」
「ですが」
ルークの目が細くなる。
「強い者がいれば、勧誘はしますよ」
やっぱり、それが目的……
レイナは黙って席を立つ。
ふとルークの耳の。
イヤリングが視界に入った。
赤い宝石。
昨日はなかった気がする。
どうでもいいか。
こうして。
彼女はまた、戦場へ向かう。
自分が何に堕ちていくのか。
分からないまま。




