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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第四話 目撃する

◆レイナ


外へ出た瞬間。


戦場だった。


怒号。


爆音。


血の匂い。


「……また、戦争」


レイナは小さく呟く。


「相変わらず醜いものね」


「無意味ぃ」


エルナとロキは、まるで興味もないように言った。


この二人は……何者なの?


そう思った。


その時。


……ドンッ


地面が揺れた。


「……!?」


振動の先を見る。


そこにいたのは。


「……巨大な化け物?」


十メートルを超える異形。


斧を振り下ろし、人を叩き潰している。


多くの人間が囲む。


だが。


「あれ、全部……」


見覚えのある顔。


「ルーク……?」


同じ顔が、何百人もいた。


「珍しいわね」


「ルークが苦戦してるなんて」


「弱いねぇ」


軽い調子で言う二人。


あのルークが……?


レイナの脳裏に。


前の戦場がよぎる。


私達最前線兵を。


一瞬で恐怖に陥れた存在。


それが。


押されている。


「……あの黒い手、効かないの?」


レイナが問う。


エルナは淡々と答えた。


「召喚系には効かないのよ」


召喚……


「右肩ぁ」


ロキが指を差す。


視線を向ける。


そこには、小さな少女が座っていた。


「……あの子が?」


「とても強いわ」


「ルークが欲しがるわけだわ」


その言葉が、引っかかる。


強い者を……集めてる?


なんのために?


思考が巡る。


「ロキ、あれ消せないの?」


「無理ぃ。僕のは“発動前限定”」


なるほど。


つまり。


今の私じゃ、こいつらに勝てない。


なら。


協力するか。


「……私がやる?」


「多分、すぐ終わるけど」


レイナが提案する。


「あら、ありがたいわね」


「でも」


「あなたの能力じゃあの子死んじゃうわよ?」


!?


私は今、あの子を巻き込むことを躊躇しなかった……


私は……


「私がやるわ」


エルナが一歩前に出た。


そして。


「『オーバードライブ』」


空気が、歪む。


熱。圧力。


エルナの身体から、蒸気が立ち上る。


身体強化の能力。


次の瞬間。


消えた。


「……え?」


視界から、完全に。


気づいたときには。


巨人の懐にいた。


速い。


認識が追いつかない。


巨人が斧を振るう。


だが。


「遅い」


エルナはそれを紙一重で躱し、


足元へ踏み込む。


だが。


「……っ!」


足から。


もう一つの足が突き出た。


あり得ない個所からの攻撃。


蹴り。


衝撃。


エルナの身体が弾き飛ばされる。


「……化け物ね」


エルナは。


血を吐きながらも、立ち上がる。


あれを受けて……立つの?


レイナは言葉を失った。


「なら」


エルナが背中の槍を引き抜く。


「これはどう!?」


投げる。


速すぎて、見えない。


次の瞬間。


巨人の胴体に、槍が突き刺さっていた。


「グォォォォォ!!」


巨人が揺れる。


「まだよ」


二本、三本。


連続で投げる。


巨体が傾き。


崩れ始める。


肩の少女が焦る。


「……っ、じゃあ次」


少女が呟く。


魔法陣が展開される。


その瞬間。


「だめぇ」


ロキの声。


魔法陣が。


霧のように消失する。


「!?」


少女の動きが止まる。


その隙を。


エルナは逃さない。


一瞬で距離を詰め、


手刀を叩き込む。


少女の意識が落ちる。


静寂。


「助かりました」


ルークが歩み寄る。


「あなたのことだから、他にも準備してたんでしょ?」


エルナは淡々と返す。


「そうですね」


ルークは、後ろを指した。


そこには、男女が二人。


「……誰?」


「その子の親です」


軽い口調で言う。


次の瞬間。


黒い手が伸びた。


触れる。


歪む。


そして。


同じ顔になる。


ルークが、増えた。


……躊躇はないの?


レイナの背筋に。


冷たいものが走る。


「これで、この戦争には用はありません」


ルークは言った。


「帰りましょう」


当たり前のように。


何もなかったかのように。


レイナは、何も言えなかった。


ただ。


その背中を追う。


逃げるべきだと分かっているのに。


足は、止まらなかった。

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