第七十八話 見抜かれる
◆アルマ
問答は続いていた。
ヴィクトールが答える。
「……責任なら取る」
ルミナスが静かに聞き返す。
「ほう」
「では、どのように?」
ヴィクトールは。
真っ直ぐ前を見た。
そして。
気高く言い放つ。
「平和にする」
声が。
白い部屋へ響く。
「世界を平和にすることで」
「これまで死んでいった者たちへの弔いとする」
「それが」
「この戦争で死んだ者たちへの責任だ」
兵士たちの目が揺れる。
感銘。
やはり。
ヴィクトール様は美しい。
そう思った。
だが、次の瞬間。
ルミナスが冷たく言い放つ。
「醜い」
空気が止まる。
ヴィクトールが睨む。
「……なんだと?」
ルミナスは一切怯まない。
「それは」
「勝者の自己満足です」
アルマの背筋が冷える。
ヴィクトールが低く返す。
「どういう意味だ?」
ルミナスは静かに問う。
「そもそも」
「誰が平和を望んでいるのですか?」
ヴィクトールは即答した。
「全世界の人々だ」
当然。
そう答える。
だが。
ルミナスが突然。
大声を上げた。
「違う!!!!」
全員が震える。
ルミナスは続ける。
「本気で平和を望んでいるのは」
「我々ルミナス教国だけです!!」
何を言っている。
アルマには理解できない。
ヴィクトールが冷たく返す。
「意味が分からんな」
すると。
ルミナスは静かに言った。
「なぜなら」
「我々は一度として侵攻していないからです」
その言葉が。
突き刺さる。
ヴィクトールが一瞬詰まる。
ルミナスは続けた。
「他国は」
「“戦争は終わらない”と」
「馬鹿の一つ覚えのように言う」
「ですが」
「そんなものは簡単です」
「全員が侵攻をやめれば」
「その瞬間」
「戦争は終わります」
正論。
誰も。
否定できない。
ルミナスはさらに続ける。
「国際法違反?」
「国際法が制定された時」
「この国は存在していません」
「そして我々は」
「一度も国際法を承認していない」
淡々と。
事実だけを並べる。
「招集を断ったから滅ぼす?」
「そんなことを言う国の」
「どこが平和を望んでいるのですか?」
アルマは息苦しくなる。
もう、やめてくれ。
ヴィクトールが小さく返す。
「だが」
「あのミサイルは人道を外れている……」
すると。
ルミナスは即答した。
「でも」
「それは戦争していたからでしょう?」
静寂。
「全員が戦争をやめていれば」
「あのミサイルも生まれなかった」
「戦争している時点で」
「最初から人道を外れているんですよ」
否定できない。
ヴィクトールが。
初めて。
下を向く。
沈黙。
そのとき。
ルミナスが静かに言った。
「特にあなたは」
「質が悪い」
ヴィクトールが顔を上げる。
「……え?」
ルミナスはまっすぐ見つめた。
「私はずっと気になっていました」
「なぜあなたが」
「戦争へ参加するのか」
ヴィクトールが眉をひそめる。
「どういう意味だ?」
ルミナスは続ける。
「だってあなたは」
「“世界最強”」
「誰が命令しても」
「力でねじ伏せられる」
ヴィクトールは黙って聞いている。
「なのにあなたは」
「王の命令へ従い」
「戦争へ出向き」
「自分より遥かに弱い味方を守り」
「本当は思ってもいない信念を掲げた」
アルマが固まる。
思ってもいない信念?
ヴィクトールの目が鋭くなる。
「……思ってもいない信念だと?」
「私の誇りを否定する気か!」
だが。
ルミナスは顔を近づけた。
そして。
静かに。
断言する。
「はい」
「あなたは」
「世界平和を望んでいない」
空気が凍る。
ルミナスは続けた。
「むしろ逆」
「戦争を望んでいるんですよ」
「……ふざけるな!!」
ヴィクトールが激高する。
無視してルミナスは続ける。
「なぜなら……」
「戦場でしか居場所がないからです」
「あなたは」
「居場所が欲しいだけの」
「か弱い少女です」
“世界最悪”は。
ヴィクトールの核心を。
見抜いていた。




