第七十三話 止まらない
◆アルマ
ヴィクトール様の合図。
それと同時に。
我々は突撃した。
目の前にいるのは。
祭服を着た人々。
全員。
本を持っている。
そして。
笑っていた。
異様だった。
まるで。
別世界。
だが、ヴィクトールが叫ぶ。
「自爆に気をつけろ!!!」
その瞬間。
一人の信徒が呟いた。
「ようこそ」
「死ね」
本が開く。
黒い球体。
空間そのものが歪むような。
異質な黒。
ヴィクトールが叫ぶ。
「かわせぇ!!!」
全員が飛び退く。
だが。
黒球は。
想像以上に大きかった。
一人の兵士の肘へ触れる。
その瞬間。
「ああぁぁぁぁぁ!!!!」
接触部分が。
消えた。
肉も。
骨も。
最初から存在しなかったように消えた。
支えを失った腕が。
地面へ落ちる。
アルマの顔が青ざめる。
なんだ。
これは。
参謀が怒鳴る。
「今すぐ止血しろ!!!」
さらに。
ヴィクトールが叫んだ。
「まだ来るぞ!!!」
前を見る。
数十人。
祭服。
全員が本を持っていた。
これが。
“世界最悪”
アルマへ声が飛ぶ。
「アルマ!!」
「能力を使え!!」
アルマは即座に叫ぶ。
「『最高防御』!!」
結界が、軍勢を包み込む。
その瞬間。
敵の一人が呟いた。
「なんだこれ」
「確かめるか」
何の躊躇もなく。
本を開く。
再び。
黒球。
だが、結界は破られない。
ヴィクトールが笑う。
「よし!!」
「やはりお前を連れてきて正解だったな!!」
嬉しい。
……はずなのに。
安心できなかった。
怖すぎる。
ヴィクトールが前へ出る。
「盾は有効!!」
「ならば反撃だぁぁぁ!!!!」
能力発動。
「『放電現象』」
不気味な音と光。
周囲の信徒たちが。
一斉に崩れ落ちる。
圧倒的。
だが。
その直後。
――ドドドドドドド。
地鳴り。
全員が振り向く。
動物。
犬。
猫。
豚。
ネズミ。
馬。
牛。
羊。
大量。
四方から。
一斉に突っ込んでくる。
なんなんだ。
これは。
アルマの本能が警鐘を鳴らす。
まずい。
ヴィクトールが即座に判断する。
「アルマ一人では!!」
「軍全体を守りきれん!!」
そして。
叫ぶ。
「全員防御態勢!!!」
「動物を叩き切れぇぇぇ!!!!」
兵士たちが迎撃する。
だが。
数が多すぎる。
これでは。
ヴィクトール様の『放電現象』でも。
一掃しきれない。
むしろ。
この混乱。
能力使用後の隙を。
教徒に狙われるかもしれない。
兵士たちは。
必死に斬る。
潰す。
だが。
そのとき。
ヴィクトールが目を見開いた。
「罠だ!!!」
「本を持った動物がいる!!!!」
アルマが凍る。
まさか。
いや。
動物は。
本を開けない。
その瞬間。
ネズミが立ち上がる。
人間へ変わる。
能力『変化』
アルマは反射的に能力を展開する。
「『最高防御』!!」
敵が笑った。
「早いねぇ」
本が開く。
黒球。
だが。
結界が防ぐ。
間に合った。
……しかし。
周囲。
至る場所で。
黒球が発生していた。
兵士たちが巻き込まれる。
悲鳴。
混乱。
ヴィクトールが叫ぶ。
「『放電現象』!!!」
動物たちが消し飛ぶ。
だが。
その直後。
――ドドドドドドド。
また。
動物の群れ。
“世界最悪”は。
終わらない。




