第七十話 偽る
◆アン
私たちは。
世界へ嘘をついていた。
生まれた瞬間から。
三人だけの。
秘密。
アンの能力。
『百倍』
……それは嘘。
本当は。
『三百倍』
つまり。
現在存在する骸骨兵は。
三千四百五十六万。
異常。
狂気。
では、どこへ隠していたのか。
答えは簡単。
海。
私たちは。
世界の端で生まれ。
世界の端で育った。
知っていた。
人は。
必ず私たちを利用する。
戦争へ。
親も。
友人も。
国家も。
誰も信用できない。
だから。
隠した。
二千万を。
海の底へ。
だが。
百倍で充分だった。
世界は。
それだけで壊れた。
なのに。
それを超えてきた。
アンは笑う。
体を震わせながら。
「あぁ……♡」
「今、私は……」
「幸福の絶頂にいるわぁ♡」
踊る。
狂ったように。
トロワが微笑む。
「羨ましいわぁ、アン」
ドゥーは鼻を鳴らす。
「ふん」
「まだ三分の一じゃねぇか」
そのとき。
声が響いた。
「少し、お話しませんか?」
三人が一斉に振り向く。
そこにいた。
複数の。
ルーク。
沈黙。
そして。
「きたぁぁぁぁぁぁ!!!!♡」
アンが絶叫する。
激しく踊る。
「この人がアンの想い人ねぇ!!?」
「会いに来てくれたのねぇぇ!!」
トロワまで興奮する。
ドゥーは泣き始めた。
「負けちゃったよぉぉぉ……」
誰も驚かない。
混沌。
カオス。
ルークですら。
少し引いていた。
だが。
ルークは静かに剣を抜く。
「申し訳ありませんが」
「殺しますね」
空気が変わる。
アンが首を傾げた。
「あれぇ?」
「私とランデブーじゃないのかしら♡」
ルークは即答した。
「残念ながら違います」
その瞬間。
トロワがキレた。
「あなたぁぁ!!」
「さては、他に想い人がいるのねぇぇ!!?」
「この浮気者ぉぉぉぉ!!!!」
椅子を持って突撃する。
だが。
「……ぐはっ」
別のルークの剣。
腹を貫く。
続けて。
――ザク。
――ザク。
アン。
ドゥー。
同時に刺される。
“最悪の三つ子”
崩れ落ちた。
血を吐きながら。
アンが笑う。
「最後に……聞かせてぇ……♡」
「どうして……ここにいるのぉ……?」
「愛じゃ……ないのぉ……?」
ルークが淡々と答える。
「あなたたちが骸骨兵へ出した命令は」
「“進軍せよ”」
「そして」
「“邪魔する者を排除せよ”」
ルークは続ける。
「だから複数の私は」
「一切邪魔をせず」
「骸骨兵の横を歩いてきました」
アンの目が見開く。
そんな。
馬鹿な。
普通、あの骸骨兵の数相手に。
素通りをすることなんて考えない。
だが。
ルークは自分を犠牲にして。
相手の動きを試し。
策を講じた。
ルークは冷たく言った。
「あなたたちが前線へ出ていれば」
「私の動きはすぐに見えたでしょう」
「外に興味のない」
「あなたたちの失敗です」
そして。
最後に。
静かに。
言い放つ。
「ちなみに想い人は」
「もういません」
ルークは。
そのまま去っていく。
残されたのは。
“最悪の三つ子”の。
醜い死体だけが転がっていた。




