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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第六十九話 鼓舞する

◆アルマ


士気が。


どんどん落ちていた。


さらに。


追い打ちのように情報が届く。


ヴァルディア。


リグナを吸収。


そして。


バルゼイン北部制圧。


“大英雄レオナール”


止まらない。


アルマは唇を噛む。


あのとき。


進言しなければよかったのか。


“平和国家ユートリア”を危険視した。


だが。


もしかすると。


本当に危険なのは。


“大英雄レオナール”の方だったのでは……


そのとき。


「アルマ!!」


参謀の怒号。


「結界はどうした!?」


しまった……!!


ヴィクトール様!!


アルマが顔を上げる。


そこには。


空を舞う。


ヴィクトールの姿。


骸骨兵が次々と崩れ落ちる。


アルマのミス。


なのに。


動きが全く乱れていない。


集中を切らしていない。


アルマは慌てて能力を展開した。


「申し訳ございません!!」


「ヴィクトール様!!」


だが。


ヴィクトールは笑う。


「気にするな、アルマ」


優しい。


あまりにも。


こんな状況でも。


ヴィクトールが叫んだ。


「全員!!」


「顔を上げろ!!!」


兵士たちが反応する。


ヴィクトールが指を差す。


「奥を見ろ!!!」


全員が前を見る。


そして。


固まった。


……地平線。


見えている。


黒が。


明らかに減っている。


ヴィクトールが笑う。


「下ばかり向いていては見えんぞ!!」


「敵が激減している現状も!!」


そして。


誇らしげに叫ぶ。


「私の勇姿もな!!!」


一瞬。


静寂。


次の瞬間。


「うおおおおおおおおお!!!!」


兵士たちが叫ぶ。


泣きながら。


武器を握り直す。


アルマも涙を流していた。


ヴィクトールが笑う。


「その目に焼き付けろ!!」


「最強たるヴィクトールの!!」


「誇り高き姿をなぁぁぁぁ!!!!」


雄叫びが。


世界へ轟いた。






◆レイナ


もう、限界だった。


体力も。


気力も。


全部。


削り切っていた。


ドルガも。


シェラも。


立っているのがやっと。


レイヴンですら。


息が荒い。


なのに。


ノルンだけは。


いつも通りだった。


勝てる戦争。


そのはずなのに。


もう……頑張れない。


そのとき。


ルークが静かに言った。


「さて」


「もう充分ですね」


全員が見る。


ルークは淡々と続けた。


「あなたたちは撤退してください」


沈黙。


「……は?」


幹部たちが固まる。


ドルガが叫ぶ。


「撤退ってどういうことだよ!!」


ルークは平然としていた。


「そのままの意味です」


何を言っているの。


レイナが聞く。


「あなただけで」


「この軍勢を止めれるの?」


ルークは即答した。


「いいえ」


「止めれませんよ」


ルークは少しだけ。


優しい声で続けた。


「でも」


「もう疲れたでしょう?」


全員が止まる。


「後は」


「残った我々だけでやります」


え……?


何それ。


そのとき。


ノルンが怒鳴った。


「ふざけたこと言うんじゃないよ!!!」


全員が固まる。


ノルンが。


怒っている。


「勝てる戦から撤退ぃ?」


「おどれらにゃプライドがないんかい!!!」


怒号。


初めて見る。


ノルンの激情。


「下ばっか向きやがって!!」


「前を見ぃ!!!」


「もうすぐ勝てる!!」


レイナたちが前を見る。


そして。


目を見開く。


敵が。


あと少しだった。


レイヴンが笑う。


「がっはっは!!」


「ばあちゃん怖ぇっての!!」


ドルガが笑う。


「……やりますか」


シェラも頷く。


「だね」


レイナも。


前を向いた。


「……最後までやるわ」


すると。


ルークが肩をすくめた。


「まあ」


「どっちでもいいですけど」


最後の力を振り絞る。


能力を発動する。


その瞬間。


――ダッ……ダッ……ダッ……。


地響き。


全員が止まる。


この音は。


まさか。


レイナが前を見る。


地平線。


再び。


黒。


埋め尽くされていく。


そして。


聞こえるはずもない。


楽しそうな声が。


頭に響いた。


「第二陣、行くわよぉ♡」


アン。


静寂だけが。


戦場へ落ちた。

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