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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第六十八話 疲弊する

◆アルマ


戦争開始から。


どれだけ経ったのだろう。


もう。


時間感覚すら曖昧だった。


ただ。


同じことを繰り返している。


ヴィクトール様が能力を放つ。


自分が結界を張る。


疲弊する。


後続兵と交代する。


回復する。


また戦う。


永遠。


その繰り返し。


アルマは息を吐く。


あぁ……。


精神が削れていく。


周囲の兵士たちも。


明らかに士気が落ちていた。


目が死んでいる。


終わりが見えない。


だが、そんな中でも。


変わらない存在がいた。


ヴィクトール。


彼女だけは。


一切揺るがない。


ただ勇敢に。


淡々と。


戦い続ける。


アルマは思う。


彼女の心の何が。


ここまで彼女を支えているのだろう。






◆レイナ


順調。


なのに。


順調ではない。


敵を減らす。


こちらを増やす。


ただ。


それだけ。


勝てそうな戦争。


なのに。


単純作業。


終わらない。


その矛盾が。


精神を壊していく。


ドルガ。


シェラ。


レイヴン。


全員。


明らかに動きが悪くなっていた。


疲労だけではない。


心だ。


だが、ノルンだけは違う。


ずっと。


同じペース。


同じ動き。


まるで疲弊しない。


経験の差?


いや。


それ以上の何か。


レイナはノルンを見る。


底の見えない老婆。


ヴィクトールの祖母。


一体。


どんな人生を歩んできたのか。


そのとき。


ルークが口を開いた。


「情報が入りました」


その顔は。


曇っていた。


ルークは静かに言った。


「リグナが」


「ヴァルディアへ吸収合併されました」


イヤリングの赤い宝石は、暗い色をしていた。






◆グレン


伝令が到着した。


「リグナは」


「これよりヴァルディア帝国の一部となりました」


「旧グランゼル領より」


「ヴァルディア軍援軍到着予定!!」


グレンは固まる。


「……は?」


意味が分からない。


国を。


捨てた?


そのとき。


セラが戻ってきた。


グレンが睨む。


「お前が……?」


セラは平然と答えた。


「そうよ」


「私が王に進言した」


グレンは言葉を失う。


セラは冷静だった。


「だって」


「このままじゃリグナは崩壊する」


「なら」


「これが合理的でしょ?」


合理的。


その言葉が。


妙に冷たく聞こえた。


グレンは。


セラへ恐怖を覚える。


だが、正しい。


これで。


リグナは守られた。


……いや。


本当に?


もう。


分からない。


国とは何か。


戦う意味とは何か。


全てが。


曖昧になっていた。






◆イリス


リグナが。


ヴァルディアへ加わった。


世界は。


さらに減る。


残る大国は。


わずか五つ。


しかも。


今。


ヴァルディアは勢いに乗っている。


「我らの勝ちだ!!!」


レオナールが叫ぶ。


「うおおおおぉぉぉぉ!!!」


兵士たちが応える。


ヴァルディアは。


あっさりとバルゼイン北部を制圧した。


これで世界で最も大きい国となった。


兵士が興奮して聞いた。


「レオナール様!!」


「次はどうしますか!?」


「このまま北上し!!」


「ルミナス教国まで行きますか!?」


だが。


次の瞬間。


空気が凍る。


「図に乗るな」


レオナールの声だった。


兵士が震える。


イリスは。


その兵士の頭を軽く叩いた。


「ルミナス教国へは絶対に手を出すな」


「あの“世界最悪”にはな」


兵士たちが黙る。


“世界最悪ルミナス”


名前だけで。


空気が変わる。


レオナールが静かに続けた。


「今回はここまでだ」


「優先すべきは統治」


「強国バルゼインに占領され」


「貧困へ苦しむ民を解放する」


力強い声。


その言葉に。


兵士たちは再び士気を取り戻していた。

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