第五十七話 招集する
◆レイナ
私たちは侵攻したヴァルディア帝国領土に防衛線を張り。
いつもの屋敷へ戻っていた。
誰も喋らない。
空気が重い。
ルークの言葉は。
間違っていない。
戦争そのものが。
人を殺すことそのものが。
悪。
それは正しい。
でも、あのミサイルは。
それでも。
許されない気がした。
レイナはドルガを見る。
ドルガは。
ずっと下を向いていた。
拳を握ったまま。
そのとき。
ルークが突然口を開く。
「やはり」
「招集が来ましたね」
机へ手紙を置く。
そこには。
“世界会議”
と記されていた。
ユートリアも招待されている。
だが。
レイナは違和感を覚えた。
「……バルゼイン主催?」
なぜ。
ヴァルディアではない?
被害国なのに。
ルークが答える。
「前例がありませんからね」
「各国、混乱に乗じて」
「言いたいことを言い」
「やりたいことをやるでしょう」
冷静だった。
まるで。
予測していたように。
「バルゼインは」
「自分たちこそ世界の中心だと示したいのでしょう」
こんな状況で。
そんなことを。
レイナの顔に怒りが浮かぶ。
だが、ルークは笑った。
「ではこちらも」
「やりたいことをやりましょう」
その笑みは。
不気味だった。
◆アルマ
我々は今。
王の間へ集められていた。
ヴィクトール様もいる。
それだけで空気が変わる。
国王が笑う。
「各国より先手を取った」
「これで主導権は我らにある」
各国へ送られた手紙。
世界会議の招集。
グランゼルの国際法違反。
世界がどう動くか。
全てが決まる。
国王は楽しそうだった。
「さて」
「どんな反応が来るかのぉ」
そのとき。
兵士が駆け込んできた。
「各国より返答が届きました!!」
「要求は?」
王が笑う。
アルマは少し疑問だった。
要求?
グランゼルを裁くため。
世界が手を取り合うのではないのか。
だが。
ヴィクトール様が静かに言う。
「前例がないからな」
「どの国も好き勝手やる」
「当然我々も」
あぁ。
頭の中の疑問まで。
自然に答えてくださる。
なんて素敵な御方なのだろう。
アルマが見惚れていると。
兵士が続ける。
「ノクシア王国からです」
「即時停戦」
「及び不可侵条約の締結要求」
王が大笑いする。
「はっはっは!!」
「即時停戦はまだしも!!」
「不可侵条約とは!!」
「滅びかけの国がよくほざくわ!!」
楽しそうだった。
兵士は続ける。
「リグナ王国からです」
「グランゼル崩壊後」
「リグナ南部のグランゼル領譲渡要求」
王が感心する。
「思ったより欲がないのぉ」
兵士はさらに続けた。
「ヴァルディア帝国からです」
空気が変わる。
当然だった。
被害国。
最も怒っている国。
「グランゼル崩壊後」
「全グランゼル領土の譲渡要求」
まぁ、そうなる。
王も予想通りという顔だった。
「トリプレッツの部屋からです」
ざわつく。
あの三つ子。
得体の知れない存在。
「要求はなし」
沈黙。
王が険しい顔をする。
「やはり食えん連中だ」
兵士が次を読む。
「ルミナス教国からです」
「招集には応じない」
「なに!?」
王が激怒した。
「世界会議を拒否するとは!!」
「我らを愚弄するか!!」
怒号が飛ぶ。
招集拒否は、面子をつぶされることである。
王が最も許せないこと。
……アルマは困惑する。
どういうつもりだ。
“世界最悪”は。
そして。
最後。
兵士が言った。
「ユートリアからです」
空気が静まる。
兵士は続けた。
「世界会議の場所を」
「ユートリアにする」
沈黙。
「……は?」
王が固まる。
アルマたちも固まる。
要求が。
あまりにも異質だったから。




