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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第五十六話 侵す

◆アルド


国際法。


世界で唯一。


全国家が認めた法律。


“領地を使用不能にしてはならない”


それだけだった。


戦争をどれだけ繰り返そうと。


平和になろうと。


土地が死ねば。


意味がない。


人は生きられない。


国は成り立たない。


だから。


全国家が承認した。


たった一つの。


鉄の掟。


そして。


我々は。


それを侵した。


アルドは静かに理解する。


だから歴史は。


ゼロニウムを使わなかった。


気づいていたのだ。


この兵器が。


世界そのものを壊すと。


アルドは顔を伏せる。


……そもそも。


研究者たちは本当に気づいていなかったのか?


研究中。


被爆した者もいたはずだ。


だが。


グランゼルだ。


そんなもの。


全員処分し。


見て見ぬふりをして。


欲を優先して。


作らせ続けたのだろう。


終わった。


グランゼルは。


もう終わりだ。


そのとき。


王が小さく呟いた。


「世界が敵に回る……」






◆イリス


レオナール様が。


激怒していた。


「放射能だと!?」


怒声が響く。


兵士たちが震える。


イリスですら。


ここまで怒るレオナール様を見たことがなかった。


「南部はどうなるんだ!!」


兵士が震えながら答える。


「南部は……」


「完全立入禁止区域となります……」


沈黙。


「そんな……」


レオナール様の身体が崩れる。


イリスは慌てて支えた。


「レオナール様!!」


レオナール様は苦しそうに呟く。


「イリス」


「国際法違反はどうなる?」


イリスは静かに答えた。


「……前例がありません」


「特別な取り決めも存在しません」


「ですが」


イリスは目を閉じる。


「全国家が、グランゼルへ敵対するでしょう」


静かな声だった。


つまり。


世界中が、グランゼルを敵とみなす。






◆レイナ


放射能。


絶対に触れてはいけない禁忌。


グランゼル。


ここまで落ちたのか。


レイナはただ。


茫然としていた。


だが、そんな中。


ルークだけが静かだった。


「これで」


「挟撃はなくなりましたねぇ」


その瞬間。


頭の中で何かが切れる音がした。


こいつ……!!


レイナが飛びかかる前に。


先にドルガが動いた。


ルークの胸ぐらを掴む。


「お前!!」


「この惨状に何も思わねぇのか!!!!!」


怒号。


レイナは動きを止めた。


ルークは冷静だった。


「何も?」


「では、あなたは何を思ったのですか?」


ドルガが怒鳴る。


「どれだけ無関係の人間が死んだと思ってる!!」


「あんな兵器は……人の道を外れている!!」


真っ当な言葉だった。


だが。


ルークは首をかしげる。


「では」


「あなたたちがこれまで行ってきた人殺しは?」


「人の道を外れていませんか?」


「は?」


ドルガが睨む。


「俺たちが殺したのは向かって来る奴らだ!!」


「無関係の一般市民は殺してねぇ!!」


すると。


ルークは静かに笑った。


「戦争をすれば」


「必ず人は死にます」


「相手が兵士だからいい?」


「相手が一般人だからダメ?」


「笑わせてくれますね」


「なんだと!!」


ドルガが怒鳴る。


ルークは冷たく言い放った。


「殺し方に問題がある?」


「殺す相手に良し悪しがある?」


「そんなもの、ただの綺麗事です」


空気が凍る。


ルークは続けた。


「武器を使おうが」


「兵器を使おうが」


「能力を使おうが」


「拷問して虐殺しようが」


「国際法違反だろうが」


そして。


静かに言った。


「人が人を殺しちゃダメなんですよ」


ドルガが固まる。


絞り出すように言う。


「お前だって……殺してるじゃねぇか」


「はい」


ルークは即答した。


「だから、あの兵器を否定する権利はありません」


「当然」


「あなたたちにも」


誰も。


言い返せなかった。


ルークは本気で。


人類を。


“下等”だと思っている。

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