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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第四十九話 恐怖する

◆アーデル


ヴィクトールは。


順調に進んでいた。


俺の価値を。


否定された気分になる。


くそが。


こうなれば全員で特攻するか?


……いや。


駄目だ。


勝てるわけがない。


ちくしょう。


そのとき。


「やぁ、アーデル」


綺麗な声。


アーデルが振り返る。


そこには。


リゼの軍勢がいた。


「なぜ、お前らがここに?」


アーデルが目を細める。


リゼは笑った。


「援護しに来たのよぉ」


援軍。


エヴァルトの指示か?


こいつの能力があれば。


恐怖を植え付け。


進軍を遅らせられる。


アーデルは言う。


「わかった」


「お前が奴らに恐怖を植え付けてくれ」


「あとは俺がやる」


リゼがにこりと笑う。


「じゃぁ、地図頂戴ぃ」


アーデルは迷わず地図を渡した。


そして。


リゼは軍を連れ。


ヴィクトール軍のもとへ向かった。






◆アルマ


進軍速度が速い。


だが。


兵士たちは疲弊していなかった。


我々には。


ヴィクトール様がついている。


その安心感が。


恐怖を上回っていた。


そのとき。


ヴィクトールが足を止める。


「軍勢がこちらに来る」


空気が張り詰める。


全員が武器を構えた。


真正面から来るとは。


何を考えている。


だが。


現れた軍勢は。


武器を持っていなかった。


全員。


両手を上げている。


そして。


先頭の女が口を開いた。


「はじめましてぇ、“バルゼインの放電現象”さん」


綺麗な声。


だが。


不気味だった。


ヴィクトールが冷たく返す。


「なんのつもりだ」


女は笑う。


「私たちは降伏派の人間ですぅ」


「降伏しますぅ」


「情報も全部渡しますぅ」


「だからぁ、良い待遇を下さいぃ」


なんだこいつは。


「……」


ヴィクトールが考える。


そして。


「全員、武器を下ろせ」


兵士たちが従う。


女は安心したように笑った。


「ありがとうぅ、話が分かる人でよかったぁ」


しかし。


ヴィクトールは冷たく言い放つ。


「礼は結構だ」


「情報をよこせ」


すると。


女は二枚の地図を差し出した。


「これをどうぞぉ」


そこには。


迷宮の全容。


そして。


我々が進むルートまで。


細かく記されていた。


参謀が息をのむ。


「こりゃすごい……」


「ここまでの迷宮とは……」


「そして」


「ここまで読まれるとは……」


エヴァルト。


恐ろしい天才だ。


ヴィクトール様ですら。


一瞬言葉を失っていた。


さらに。


女は続ける。


「それとぉ」


「この迷宮を出た後、敵軍が待ち受けていますぅ」


「なに?」


ヴィクトールの目が細くなる。


女は笑った。


「セレニアはあなたたちを攻撃し続けてぇ」


「消耗させてぇ」


「殺しますぅ」


最後まで策があったのか。


だが。


ヴィクトールが問う。


「我々を三日も止め続ける?」


「国が壊滅するぞ?」


女は当然のように答えた。


「はいぃ」


「だからセレニアも終わりますぅ」


背筋が寒くなる。


セレニアは。


そこまでやる気なのか。


すると。


女は笑顔のまま言った。


「だからぁ」


「裏切るんですぅ」


こいつには、忠誠心が存在しないのか?


不気味だ。


だが。


信憑性は高い。


女はヴィクトールを見る。


「私の作戦」


「聞いてくれますかぁ?」






◆アーデル


我々は待機していた。


リゼの能力があれば。


俺の恐怖は再び輝く。


見せてやる。


俺の力を。


だが。


通用するのか?


俺の力。


信じてきた力。


狂人となり。


他者を恐怖させてきた力。


それが、通用しない。


そんな相手に。


リゼの能力があっても。


通用するのか?


怖い。


否定されるのが怖い。


怖い。


怖い。


怖い。


思考が止まらない。


呼吸が浅い。


胸が苦しい。


そして。


アーデルは気づく。


……あれ?


なんで俺は。


こんなに恐怖してるんだ?


その瞬間。


背後から。


声がした。


「『放電現象』」


「え?」


アーデル軍は。


消えた。

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