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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第四十八話 追い詰められる

◆アーデル


セレニア側が一人殺されて以降。


ヴィクトールはこちらが仕掛けるたびに。


全て見破り。


全て殺していった。


さらに。


敵の進軍速度が上がっている。


「くそがぁぁぁ!!」


アーデルが壁を殴る。


「このままじゃ……!」


焦り。


苛立ち。


そして。


恐怖。


“セレニアの狂人”である自分が。


押されている。






◆マルクス


会議室。


兵士が勢いよく駆け込んでくる。


「報告いたします!!」


「ヴィクトール軍、現在進軍速度が上昇!!」


「このままでは四日で突破されます!!」


静まり返る。


四日。


その言葉が重かった。


「な……」


マルクスが絶句する。


「四日……だと……?」


皆の顔色が変わる。


すると。


リゼがわざとらしく首をかしげた。


「あれれぇ?」


「敵は一週間分の食料しかないからぁ」


「一週間閉じ込めるって話じゃなかった?」


空気が刺さる。


そう。


エヴァルトの作戦は完璧だった。


敵は一週間分の食料を持って迷宮へ侵入。


何もしなければ三日で突破される。


残り四日。


アーデルが精神を削り。


進軍速度を落とす。


それが作戦だった。


だが。


「“セレニアの狂人”がたった一日しか」


「足止めできていない……」


マルクスが思わず漏らす。


“セレニアの狂人”。


その恐怖すら。


ヴィクトールには通じない。


そんな馬鹿な。


リゼが笑う。


「でぇ?」


「何か作戦でもあるのかしら?」


「天才?」


挑発。


空気が張り詰める。


すると。


エヴァルトが静かに口を開いた。


「作戦は……ある」


全員がエヴァルトを見る。


エヴァルトは報告兵に聞く。


「相手の残りの数は?」


「八十弱とのことです」


エヴァルトは続ける。


「……迷宮を突破した後」


「奴らを攻め続ける」


「奴らはわずか八十」


「しかも後ろは迷宮だ」


「アーデル軍もいる」


「援軍はない」


「残った食料を消費させ」


「潰す」


会議室がどよめく。


一同が感心する。


だが。


リゼが冷たく言った。


「あれを三日も相手に?」


「こちらの兵士がほとんどいなくなるじゃない」


「国が半壊するわ」


沈黙。


エヴァルトは少しだけ黙り。


そして。


答えた。


「そうだ」


誰もが言葉を失う。


エヴァルトは立ち上がった。


「我々セレニア連合国は」


「元々、互いに小国だった」


「ならば」


「もう一度小国に戻るだけだ」


その目に迷いはない。


「意思があれば」


「何度でもやり直せる」


「それが人だ!!」


空気が震える。


エヴァルトが叫ぶ。


「侵略する者には死を与える!!」


「世の平和のために!!」


「“バルゼインの放電現象”を殺す!!」


「それが我々の今なすべきことだ!!」


「おおおおおお!!!」


兵士たちが立ち上がる。


拳を掲げる。


熱狂。


だが。


その裏で。


エヴァルトだけは。


恐怖していた。


この作戦は。


セレニア連合国を作る前から。


何年もかけて考えていたものだ。


侵入人数。


食料。


進行ルート。


全て読んでいた。


それなのに。


ヴィクトールは超えてきた。


理屈ではない。


力でもない。


“魅力”で。


その恐怖に。


気づいた女が一人。


恐怖に最も敏感な女。


リゼ。


「終わったわねぇ」


その言葉を残し。


リゼは静かに姿を消した。

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