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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第三十九話 壊れる

◆ミア


男たちについていく。


地下。


暗い通路。


冷たい空気。


ミアの手が小さく震えていた。


隣では。


レオンが無言で歩いている。


でも。


拳だけは強く握られていた。


やがて。


巨大な扉の前へ辿り着く。


重い音。


扉が開く。


ミアの目が揺れた。


地下施設。


無数の薬剤。


並ぶ機材。


白衣の科学者。


鉄の臭い。


そして。


中央には。


巨大な拘束装置。


嫌な予感しかしなかった。


「座れ」


男が言う。


レオンが睨みつける。


「……何する気だ」


男は答えない。


兵士たちが二人を拘束機械へ押し込む。


金属音。


手。


足。


胴。


全部固定される。


ミアの呼吸が浅くなる。


怖い。


本能が叫んでいた。


逃げろと。


でも。


動けない。


男が静かに説明を始める。


「ここには多くの能力者の細胞がある」


科学者たちがケースを運ぶ。


赤黒い液体。


大量。


男は続けた。


「本来であれば、生きた能力者から多量の細胞を得たい」


「だが」


「能力者を生きたまま拘束するのは非常に危険だ」


ミアの脳裏にシオンが浮かぶ。


爆発。


死体。


崩れた戦場。


男は淡々と続ける。


「故に」


「死んだ能力者から細胞を入手している」


「その代わり」


「失敗率が高い」


ミアの身体が震える。


失敗。


その言葉だけが頭から離れない。


男は笑った。


気味が悪いほど静かに。


「だが安心してほしい」


「今までの失敗は全て非適合者だ」


「君たちは健康体だ」


「きっと成功するさ」


そこに優しさはなかった。


ただ。


実験材料を見る目だった。


科学者たちが薬剤を準備する。


針。


管。


機械音。


ミアの視界が滲む。


嫌だ。


怖い。


帰りたい。


でも。


誰も止めない。


そのとき。


機械が動いた。


「始めろ」


男が言う。


ミアが叫ぶ。


「うわぁぁぁぁ!!」


「こわいよぉぉぉぉ!!」


涙が溢れる。


拘束具が激しく鳴る。


レオンも叫んだ。


「やめてくれぇぇぇぇ!!」


子供だった。


二人とも。


ただの。


子供だった。


でも。


その叫びは。


誰にも気に留められなかった。


機械音。


薬剤。


科学者たちの声。


全部に飲み込まれて。


静かに。


消えていった。






◆アルド


ゼロニウムの兵器化は進んでいた。


巨大地下施設。


研究員。


軍人。


大量の防護装備。


国の全てが、この計画へ注ぎ込まれている。


アルドはガラス越しに黒い鉱石を見る。


ゼロニウム。


静かだった。


だが。


その小さな鉱石には。


国を変える力がある。


いや。


世界を変える力が。


研究員が報告する。


「ゼロニウム出力、安定」


「兵器転用、最終段階へ移行します」


周囲がざわつく。


期待。


興奮。


狂気。


皆。


勝利の未来を見ていた。


だが。


アルドだけは違った。


不安が消えない。


ゼロニウムについて。


あまりにも何も分かっていない。


本当に大丈夫なのか。


これを兵器にして。


何も起きないのか。


いや。


そんなはずがない。


アルドは静かに考える。


なぜ、これまで多くの国が。


ゼロニウムを兵器化しなかった?


技術不足?


違う。


この世界には。


もっと狂った国が存在した。


それでも。


誰も手を出さなかった。


そこに理由がある気がした。


だが。


グランゼルは止まらない。


この国は。


歴史を重んじない。


前例を軽視する。


結果だけを求める。


だから。


ここまで来た。


研究員が笑う。


「完成すれば」


「世界最強の兵器です」


別の男も笑った。


「これで」


「我々の勝利だ」


アルドは黙ったまま。


黒い鉱石を見つめる。


静かな違和感。


嫌な予感。


だが。


もう誰も止まれない。


誰も止めない。


このゼロニウムが。


自らの国を壊すことになるとも知らずに。

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