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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第三十一話 向き合う

◆シオン


停戦後。


久しぶりに静かな時間だった。


砲撃もない。


怒号もない。


兵士たちも少しだけ落ち着いている。


シオンは走っていた。


兵士区画。


その先。


ミアとレオンがいる。


見つけた瞬間。


シオンは少し笑った。


「ミア!」


「レオン!」


二人が振り向く。


でも。


空気が止まった。


レオンの表情が固まる。


ミアも、笑えない。


シオンだけが気づいていない。


近づく。


いつもみたいに。


「遊ぼ?」


小さな声。


普通だった。


昔と同じ。


でも。


レオンの身体が反射的に下がる。


ミアも目を逸らした。


シオンの動きが止まる。


「……え?」


理解できない。


レオンは苦しそうに言う。


「悪い……」


「ちょっと今は……」


ミアも俯いたまま。


何も言えない。


二人は、戦場を見てしまった。


サモン。


虐殺。


死体。


全部。


知ってしまった。


怖がりたくない。


でも、身体が拒絶する。


シオンは少し困った顔をする。


「……なんで?」


誰も答えられなかった。


沈黙だけが残る。


そして。


レオンが背を向けた。


「……行こう、ミア」


ミアも小さく頷く。


二人が離れていく。


シオンだけが。


その場に残った。






◆レイナ


偶然だった。


廊下から。


全部見えてしまった。


シオン。


ミア。


レオン。


三人の距離。


レイナは目を閉じる。


理解してしまう。


戦争は。


シオン自身だけじゃない。


周囲との関係も壊していた。


シオンが小さく呟く。


「……遊びたかっただけなのに」


その声が。


痛かった。


レイナは静かに歩み寄る。


「シオン」


シオンが振り向く。


少しだけ笑う。


でも。


どこか寂しそうだった。


レイナはしゃがみ込む。


そして。


小さく言った。


「……一緒に来て」


シオンは首を傾げる。


「どこに?」


「ここじゃない場所」


「もう戦わなくていいから」


静かな声。


でも。


シオンは即答した。


「やだ」


レイナの目が揺れる。


シオンは続ける。


「だって」


「また、前みたいに遊びたい」


純粋だった。


本気だった。


だから。


苦しい。


レイナは言葉を失う。


シオンはまだ。


ここを居場所だと思っている。


友人から避けられているのに。


兵器扱いされているのに。


シオンだけが。


まだ普通でいようとしていた。


それが、一番痛かった。






会議室。


部屋の空気が重い。


平和国家ユートリアと隣接したことに。


頭を抱えていた。


グレンは顔をしかめる。


「最悪だな……」


セラも資料を見る。


「バルゼインの南部をあの短期間で制圧」


「……勝てない」


レイナは黙っていた。


脳裏に浮かぶ。


シオン。


もし。


また戦争になれば。


シオンはまた戦う。


また壊れていく。


胸の奥が重かった。


それだけじゃない。


ルーク。


ユートリア。


平和国家。


感情低下。


あの国の違和感。


全部。


頭から離れない。


レイナは静かに立ち上がった。


「……どこ行くんだ?」


グレンが聞く。


レイナは短く答えた。


「確認しに行く」





夜になっても、レイナの足は止まらなかった。


そして。


ユートリアの国境沿い。


防壁には無数のルーク。


一人が振り返った。


レイナを見る。


驚かない。


最初から分かっていたみたいに。


静かな声。


「外の地獄はいかがでしたか?」


空気が止まる。


レイナはルークを睨む。


ルークは変わらない。


静かな目。


感情の薄い顔。


でも。


全部見透かしているみたいだった。

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