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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第二十六話 決断する

◆グレン


吹き飛ばされた毒霧。


開けた視界。


前線全体が、止まっていた。


兵士たちが呆然とする。


「……なんだ今の」


「毒霧が消えた……?」


「誰がやった?」


視線が集まる。


その先。


レイナ。


指を下ろす。


静かな目。


グレンが目を見開いた。


「あいつ……」


セラも言葉を失う。


「ちょっと待って……」


「規模が、普通じゃない」


兵士たちもざわつく。


今まで。


誰も知らなかった。


レイナが。


能力者だと。


でも。


二人だけ。


驚いていない人物がいた。


「お姉ちゃん、やっぱり強い」


シオンの目は。


キラキラ輝いている。


そして、もう一人。


煙の向こう。


静かな目でレイナを見る。


レイン。


レインは昔から知っていた。


レイナの能力は危険であることを。


自分とは比べものにならない。


一歩間違えれば、全部を消し飛ばせる。


だから。


家では恐れられた。


失敗作として扱われた。


レインだけが。


その本当の異常さに気づいていた。






◆レイナ


静かだった。


周囲の音が遠い。


レインを見る。


兄。


憧れていた人。


怖かった人。


壊れた人。


レインは立ち上がろうとする。


でも。


動けない。


『毒界』の反動。


そして。


レイナの能力範囲。


レインは理解していた。


あぁ……


ここで死ぬのか……


驚いてはいなかった。


ただ。


静かだった。


レインがレイナを見る。


「俺を……兄を、殺せるのか?」


挑発じゃない。


確認だった。


レイナの指が震える。


脳裏に浮かぶ。


幼い頃。


まだ小さかった頃。


壊れる前の兄。


兄が手を引いていた。


一緒に走った。


笑っていた。


ほんの少しだけ。


普通の兄妹だった時間。


その記憶がよぎる。


そして。


消える。


レイナは静かに口を開いた。


「……今更」


声が震える。


「兄と言うな!!!」


レイナの目から涙が落ちる。


でも。


指は止まらない。


——パチン


轟音。


地面が消し飛ぶ。


爆炎。


衝撃。


レインの姿が飲み込まれる。


兵士たちが息を呑む。


誰も動けない。


静寂。


煙だけが残る。






◆レイナ


終わった。


なのに。


何も終わらなかった。


膝が震える。


息が苦しい。


兄を殺した。


憎かった。


怖かった。


でも。


尊敬していた。


ずっと。


レイナは頭を押さえる。


分からない。


自分が。


何をしたいのか。


壊したい。


消したい。


全部。


でも。


脳裏に浮かぶ。


シオン。


ミア。


レオン。


笑っていた。


戦争が始まる前。


あの小さな日常。


シオンの声。


「また遊びたい」


レイナは目を見開く。


そして。


初めて。


答えが形になる。


戦争を終わらせる。


シオンを守る。


もう。


壊させない。


レイナはゆっくり立ち上がった。


涙は止まっていた。


でも。


もう以前のレイナではなかった。

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