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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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二十四話 ズレていく

◆レイナ


戦争は激化していた。


終わる気配はない。


前線基地。


運び込まれる負傷兵。


積み上がる死体袋。


血の匂い。


慣れ始めている自分が。


一番嫌だった。


「また押されてる!!」


「召喚能力者はまだか!?」


怒号が飛ぶ。


今のリグナ軍は。


シオン前提で動いていた。


「シオンが来るまで耐えろ!!」


「召喚能力者投入後に押し返す!!」


それが、当たり前みたいになっていた。


グレンが舌打ちした。


「依存しすぎだろ……」


セラは資料を見ながら言う。


「でも実際、一番効率いいからね」


「通常兵の被害も減るし」


レイナは黙る。


効率。


合理。


正しい。


窓の外。


シオンが歩いている。


兵士たちが道を開ける。


期待。


恐怖。


敬意。


もう誰も普通の子供として見ていない。


……壊したい。


ふと。


そんな感情が浮かぶ。


この国も。


戦争も。


全部。


シオンを兵器に変えた世界ごと。


レイナは静かに目を閉じた。






◆シオン


出撃帰り。


血。


土。


煙。


でも。


シオン自身には傷がない。


兵士たちが笑う。


「今日も助かった!!」


「お前のおかげで前線守れたぞ!!」


シオンは少し困った顔をする。


「そっか」


それだけ。


兵士たちはまた笑う。


でも。


シオンの視線は別の場所へ向いていた。


兵士区画。


ミアとレオン。


二人が待っている。


シオンは少しだけ嬉しそうに走った。


「ただいま」


ミアが少し安心した顔をする。


「おかえり」


レオンはシオンを見る。


「また戦ってたのか」


シオンは頷く。


「うん」


「でも守れたよ」


レオンが眉をひそめる。


「守れた?」


シオンは当然みたいに言う。


「ここ」


「ミアたちいるし」


「お姉ちゃんもいるし」


「だから守らないと」


ミアは、少しだけ黙る。


シオンは続けた。


「なくなったら嫌でしょ?」


その言葉は真っ直ぐだった。


本気だった。






◆レイナ


夜。


静かな部屋。


机の上には報告書。


戦況。


死者数。


補給状況。


その中に。


別の資料。


ユートリア。


レイナの手が止まる。


読む。


“犯罪率ゼロ”


“暴動発生ゼロ”


“食料配給安定”


“南部完全掌握”


並んでいるのは成功例ばかりだった。


レイナは目を細める。


本当にやってる。


ルークは。


本当に国を作っていた。


しかも。


うまくいっている。


続きを読む。


“住民感情の低下傾向あり”


“競争意識減少”


“娯楽消費低下”


そこだけ。


妙だった。


レイナは静かに目を閉じる。


間違っていない。


誰も飢えていない。


誰も争わない。


平和だった。


でも。


気持ち悪い。


まるで、人間そのものを書き換えているみたいだった。


窓の外。


巡回兵が歩いている。


戦争はまだ続く。


グランゼルも。


リグナも。


人を使い潰している。


なのに。


ルークの国だけが平和だった。


レイナは小さく息を吐いた。

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