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平和国家ユートリア ―人類の終着点―  作者: Kk


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第二話 揺らぐ

◆レイナ


……音が、消えていた。


さっきまでの戦場が、嘘みたいに。


焦げた土の匂いだけが、遅れて鼻を刺す。


見渡す限り、何もない。


建物も人も。


影すら残っていなかった。


その中心に、ひとり。


レイナは立っていた。


乾いた指先で。


何度も指を鳴らす。


無意味に。


確かめるように。


「……こんなものか」


静かな声が。


焼け跡に落ちる。


もう、人間じゃない。


それでも。


思考だけは止まらなかった。


……どうする。


敵を倒すためとはいえ。


仲間を殺した。


数えきれないほど。


カイル……


ミナ……


自分で、殺した。


……考えるな。


今は、生きることだけ考えろ。


ミナが最前線にいた理由。


後方支援の人間が、あの場に来るはずがない。


つまり。


グランゼル王国とノクシア王国は。


裏で繋がっていた。


あの戦場は。


“処分場”だった。


それを壊した私は……


殺される。


そうなると。


目撃者がいると困る。


……ちゃんと、全員死んだよね?


「……」


一瞬だけ、思考が止まる。


「……とりあえず、逃げる」


レイナは歩き出した。


味方でも、敵でもない道へ。






◆グランゼル王国・王城。


「最前線の者たちには、悪いことをしたのぅ」


王は玉座で笑っていた。


「ですが」


「あの鉱山の採掘権に加え、同盟まで得られたのです」


「安いものです」


大臣が淡々と答える。


「ノクシア王国には得体の知れぬ“能力者”もおりますからな。」


「はっはっはっ」


王の笑いが、広い王室に響く。


だが。


「しかし、あの爆発は何じゃ?」


「……報告にはありませんな」


「想定外、か」


王は口元を歪めた。


「まあよい。どうせ、全員死ぬ予定の駒じゃろ?」


再び、笑い声が満ちた。






◆レイナ


レイナは、ひたすら歩いていた。


どれくらい歩いたか分からない。


ただ、足を止めなかった。


「……ここまで来れば」


周囲には誰もいない。


敵も、味方も。


静寂だけがある。


レイナは木陰に腰を下ろした。


そのとき。


「……!」


林の奥。


そこに、いた。


黒いフード。


見覚えのある顔。


「……何人、いるの」


レイナは低く問う。


「さぁ?」


男は笑った。


「おっと、あの爆発はやめてください」


「話をしに来ただけです」


指が、止まる。


バレてる……


最悪だ。


「話って何」


レイナは平静を装う。


男は一歩近づいた。


「あなたに興味があります」


「……」


「グランゼルに」


「あんな力を持つ人間がいるなんて」


「聞いたことがありません」


レイナは視線を落とす。


「見ての通りよ」


「この能力は味方も巻き込む」


「だから、使えない」


その言葉に、男は笑った。


「もったいないですね」


予想外の言葉にレイナは驚く。


「指を鳴らすだけで、あの爆発」


「あなた、最強じゃないですか」


一瞬、言葉を失う。


最強。


そんな言葉……


今まで一度も向けられたことがない。


だが。


胸の奥が、冷たくなる。


カイルもミナも、殺した。


「この国に思い入れはありますか?」


突然、男が問う。


「家族?想い人?」


家族……兄。


今はもう、分からない。


恋人はいない。


好きな人は。


さっき殺した。


「……あなたは何が言いたいの?」


レイナは静かに聞いた。


男は、微笑む。


「あなたは、『同化』するには惜しい」


「だから……」


「仲間になりますか?」


その言葉に。


ほんの一瞬だけ。


心が揺れた。


認められた。


初めて。


だが。


「ふざけないで」


指を鳴らす。


爆発が。


起きない。


「……は?」


「残念」


男は。


最初から分かっていたように笑った。


次の瞬間。


背後に、気配。


「……っ!」


口元に何かが押し当てられる。


甘い、匂い。


しまった……


視界が歪む。


足に力が入らない。


膝が崩れる。


意識が……


落ちる。


最後に見えたのは、


笑う男だった。

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