十五話 崩れ始める
◆レイナ
警報が鳴った。
「反乱だ」
短い報告。
廊下の空気が一瞬で変わる。
「難民区画が暴走している」
「一部兵士も反乱に加わっている」
グレンが舌打ちする。
「やっぱり来たか」
セラは椅子から立ち上がる。
「思ったより早い」
レイナは何も言わない。
あの違和感はこれか……
ただ、資料を閉じた。
「制圧部隊が出る」
「お前たちも出ろ」
命令は短い。
武器を取る。
外へ出る。
街はすでに揺れていた。
叫び声。
金属音。
火の匂い。
「崩壊だな」
グレンが言う。
「兵士も割れてる」
セラは軽く笑う。
レイナは前を見た。
崩れるのが早い。
単なる反乱じゃない。
広場に出る。
人がいる。
難民。
兵士。
民。
もう区別はない。
「鎮圧しろ!」
叫び声。
だが、その中で。
一部の兵士だけが“動きが違う”。
訓練された殺し方。
迷いのない破壊。
レイナは視線を細める。
そのとき。
視界の端。
一人の男と目が合う。
「……アルド」
グランゼル王国の兵士。
かつて戦場を共にした仲間。
だが今は。
リグナ王国の制服を着ている。
偽装。
潜伏。
“混ざっていた側”だ。
向こうも気づく。
「レイナ……」
一瞬の沈黙。
私をどちらとして見ている?
……今はいい。
レイナはその場を離れる。
グランゼル王国の仕業か。
◆シオン
「逃げて!!」
叫び声。
走る。
ミア。
レオン。
ダグ。
ユナ。
後ろから兵士。
ダグが転ぶ。
「大丈夫!」
ユナが手を伸ばす。
その瞬間。
刃。
ユナの動きが止まる。
理解する前に崩れる。
「ユナ!!」
ダグが叫ぶ。
立ち上がる。
だが次の瞬間。
同じ刃で倒れる。
ミアの顔が歪む。
「やだ……やだ……!」
「走れ!!」
レオンが叫ぶ。
そのとき。
シオンが止まる。
「おい!シオン!!」
声が遠い。
世界が薄くなる。
なんで。
なんで。
なんで。
死は知っている。
慣れている。
でも。
“意味が違う”。
「……なんで」
声が落ちる。
「なんで、これは嫌なの?」
兵士が迫る。
レオンが前に出る。
「逃げろ!!」
木片で防御する。
限界。
レオンが吹き飛ぶ。
「レオン!!」
ミアの叫び。
その瞬間。
何かが“切り替わる”。
「……『サモン』」
地面に魔法陣。
空間が裂ける。
巨大な異形。
斧。
一振りで兵士が消える。
「……召喚系の能力者だ!!」
ミアが震える。
「シオン……これ……なに……?」
シオンは答えない。
サモンは止まらない。
ただ“排除”する。
◆レイナ
通信が入る。
「子供区画で能力反応」
「召喚系確認」
グレンが顔をしかめる。
「最悪だな」
セラは目を細める。
「……味方だといいけど」
レイナは走る。
「おい!レイナ!!」
グレンの声を無視する。
迷いはない。
シオン……!!
◆シオン
静寂。
動くものは消えた。
空気だけが残る。
「……なんで」
自分の手を見る。
分からない。
でも一つだけ分かる。
だめだった気がする。
そのとき。
足音。
レイナ。
シオンは顔を上げる。
少しだけ安心した顔。
「お姉ちゃん」
「……大丈夫」
レイナは抱きしめる。
シオンの力が抜ける。
目を閉じる。
◆レイナ
サモンは消えている。
だが、見られた。
もう隠せない。
シオンは兵士になる。
同じ未来。
それはダメだ。
この国を破壊するしか……
そのとき、通信が入る。
「敵兵の武器に毒付与確認」
「能力者による混入痕跡あり」
レイナの目が細くなる。
毒付与……
脳裏に一人の顔が浮かぶ。
レイナは拳を握る。
「……お兄ちゃん」




