第十三話 選別する
◆レイナ
「これが資料だ」
机の上に、束が置かれる。
紙。
数字。
地図。
「読め」
それだけ。
レイナは手に取る。
目を通す。
一枚。
二枚。
三枚。
理解する。
……そういう構造か。
「この国は難民を受け入れている」
男が言う。
「生き残るために」
当然のように。
「だから選別する」
視線は紙のまま。
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分類。
兵士候補。
生産要員。
繁殖要員。
非適合。
「兵士になれる者は前線へ」
「能力者も含めてな」
「それ以外は役割を与える」
淡々と続く。
「女は子を産む」
「兵士を増やすためだ」
男は当たり前のように答える。
「拒否は?」
レイナが初めて口を開く。
男は一瞬だけ笑う。
「しない」
答えになっていない。
いや。
答えだ。
「非適合なら?」
一拍。
「資源だ」
……人体実験。
言葉にしない。
だが、確定する。
紙をめくる。
別の資料。
地図。
周辺国家。
線が引かれている。
「外の国はもっと酷い」
「お前はどこの国から?」
男が聞く。
「……ノクシアから」
嘘ではない嘘をつく。
「ノクシアか。あそこは戦争狂だろ」
「全国民徴兵制……女子供老人、負傷者まで戦場に出る」
「使えなくなれば捨てる」
レイナは破壊した村を思い出す。
「このヴァルディア帝国もひどい」
……シオンのいた国。
男が続ける。
「子供の価値で親の身分が決まる」
「能力者が生まれれば一生食うに困らないらしい」
「その代わり、子供が戦場に出る」
紙の上の線を目で追う。
「グランゼル王国か……」
男が一瞬だけ言葉を選ぶ。
「表向きは普通の国家だ」
「だが、上層が腐っている」
「兵士を売った、という話もある」
一瞬だけ、過去の光景がよぎる。
……どこも同じだ。
形が違うだけ。
やっていることは同じ。
「この国は“活用”しているだけだ」
男は言う。
正しいことのように。
「無駄を出さない」
「効率的に」
「国家を維持する」
レイナは黙って聞く。
「どうした」
男が見る。
「……合理的ね」
短く答える。
男が満足そうに頷く。
「そうだ」
「感情は不要だ」
……違う。
レイナは思う。
これは合理じゃない。
ただの。
選別だ。
切り捨てだ。
見えなくしているだけ。
「お前には期待している」
男が立ち上がる。
「上で働ける人間は少ない」
「判断できる人間が必要だ」
レイナの肩を叩く。
内部に入る。
もっと世界の闇を知る。
「まずは選別からだ」
新しい紙が渡される。
名前。
年齢。
体力。
知力。
能力。
レイナは目を通す。
並んでいる。
同じ形式で。
同じように。
空白がある。
分類。
ほんの一瞬。
手が止まる。
だが。
すぐに動かす。
ペンを取る。
書く。
一つ。
また一つ。
何事もないように。
その奥で。
静かに。
壊すと、決めていた。




