第十二話 確信する
◆シオン
朝。
目を覚ます。
天井。
ゆっくり起き上がる。
周りを見る。
ミア。
レオン。
ユナ。
ダグ。
でも。
「……リオト?」
いない。
「ねぇ、リオトは?」
シオンが聞く。
ミアが一瞬だけ固まる。
「……もう行ったんじゃないかな?」
「検査」
暗い口調。
「ふーん」
シオンは頷く。
深く考えない。
外に出る。
いつも通りの朝。
人がいて。
声があって。
ごはんの匂い。
全部、昨日と同じ。
「ねぇ」
シオンがまた聞く。
「リオトは合格したかな?」
今度は。
誰もすぐに答えなかった。
ほんの一瞬の沈黙。
レオンが口を開く。
「……大丈夫だろ」
視線は逸れている。
「そっか!」
シオンは笑う。
それで終わり。
終わってしまう。
その日の夕方。
リオトは戻らなかった。
でも。
誰も探さない。
誰も騒がない。
当たり前のように、時間だけが過ぎる。
シオンは少しだけ空いた場所を見る。
「……リオト」
「帰ってこなかったなぁ」
それだけ言って。
すぐに視線を外した。
遊ぶ。
食べる。
笑う。
全部、変わらない。
まるで。
最初からいなかったみたいに。
◆レイナ
「お前だな」
兵士に呼ばれる。
視線だけ向ける。
「ついてこい」
歩く。
これまでとは違う方向。
廊下が変わる。
人が減る。
警備が増える。
……上か。
扉の前で止まる。
重い扉。
兵士が開ける。
中は。
広い。
整っている。
無駄がない。
「報告通りか」
奥にいた男が言う。
レイナを見る。
値踏みする目。
「体力、知力、戦闘、すべて上位」
「珍しいな」
「はい」
兵士が答える。
「上層候補として回せ」
決まる。
あっさりと。
「今日からお前は下ではない」
「ここで働け」
……内部。
一歩、踏み込む。
そのとき。
別の部屋の扉が開く。
中が一瞬だけ見える。
子供。
拘束。
細い腕。
震え。
「次の個体は?」
声がする。
「名前リオト、虚弱体質、実験行です」
淡々と。
当たり前のように。
もう“人”ではない。
扉が閉まる。
何もなかったように。
……確定だ。
この国は。
救っていない。
使っている。
選んでいる。
壊している。
効率よく。
レイナは前を見る。
「何をすればいいの?」
自分から言う。
男がわずかに笑った。




