侍女から見た、鉄の賢王リュカ
リュカ王が『鉄の賢王』と呼ばれる頃には、初の子宝に恵まれましたわ。
リュカ王もレアナ王妃も、とても喜んでいましたし、盛大な祝典が開かれましたの。
しかし、側近の侍女である私は知っておりました。
リュカ王とレアナ王妃が抱擁している時に、二人とも切ない顔をしていたことを……。
そして、リュカ王もレアナ王妃も、一人の時は信じられない程に――寂しそうな顔をしていたことを……。
あまりに激しい……毎晩響き渡る、まるで泣き叫ぶような嬌声は、埋められぬ想いを互いで埋めようとするようでしたわ……。
やがて、子宝は順調に二男三女まで恵まれましたの。
王子も王女も、リュカ王とレアナ王妃直々の教育の成果か、とても聡明に育っていきましたわ。
リュカ王「本日の円卓会議は、これで終わりとする。あとは各伯に任せよう」
会議室から退出するリュカ王の背中に、もはや誰も声をかけません。
かつては「チカに相談しないとな」と、笑顔で呟いていたあの王は、もういないのです。
もはや、リュカ王もレアナ王妃も職務が交わるような国策も定めません。
私はそっと近づき、耳打ちします。
侍女「陛下、先ほど孤児院から、感謝の書簡が届いております」
リュカ王「……そうか。ワサビ宰相には『よきに計らえ』と伝えてくれ」
それだけを言い残して、リュカ王は振り返らずその場を後にしました。
だがその手には──そっと握られた一輪の造花がありましたわ。
それは「かつてチカが好きだと言っていたとされる花に、よく似ていたわ……」と、レアナ王妃は、かつて一度だけつぶやいておりました。
リュカ王は「この淡く青白い光を放つ花、かつては恐怖に襲われていたのだがな……」と仰っていましたが、私の目には純白の造花にしか見えませんでしたわ。




