第24節 最大の被害者ヴィルメリア ~狸親父のせいで変な話に~
マルボロは嬉々として、宰相の仕事をしているカレー公爵を訪れた。
マルボロ「私は廃嫡される予定なので、その時は養子にしてください!」
カレー公爵は椅子から転げ落ちそうになる。
カレー公爵「いやいや、何を言っているのだ?ワサビ公爵家の嫡男が廃嫡されるなどと」
マルボロ「ご安心ください!これから実家で横領をして見せます!」
カレー公爵「笑顔で堂々とした犯罪宣言だなぁ……しかし私としては、その話を受けるわけには、いかないな」
マルボロ「なぜです⁉」
カレー公爵「第一に、犯罪者を養子にするなど言語道断。第二に、既に後継がいる、遠縁の親戚に話を通しておる」
マルボロ「……わかりました。不祥事に見せかけて失脚し、カレー公爵が救うというシナリオはいかがですか?もちろん爵位は要りません」
カレー公爵「いや、やめてくれ……ワサビ公爵の私怨だけは買いたくない……」
そこに、学園から『王家の要請』という話でヴィルメリアが急遽呼ばれた。
ヴィルメリア「マルボロ様?これは一体どういうことですか?」
マルボロ「ヴィルメリア⁉いやその、このままでは私たちの婚姻が……」
ヴィルメリア「だからと言って、関係ないカレー公爵を巻き込まないでくださいませ!」
カレー公爵は『うんうん』と言わんばかりに頷く。
マルボロ「関係ないことはありませんよヴィルメリア、カレー公爵は宰相、私は宰相補佐、ほらね」
ヴィルメリア「そ・れ・は!ただの職務上の関係でしょう!」
カレー公爵「マルボロ、あまり婚約者を困らせてはならないよ?」
マルボロ「しかし!このままでは、一体どうしたら……」
ヴィルメリア「仕方がありません。私がワサビ公爵に嫁ぐことに致しましょう」
マルボロ「はぁ⁉いや、それは一体どういう理屈だ!」
ヴィルメリア「そうして息子であるマルボロを父の養子に出します」
マルボロ「いや、私はヴィルメリアしか考えられない……」
ヴィルメリア「私は白い結婚を貫きましょう。そうして、マルボロの従妹様……あの王宮舞踏会でファーストダンスを奪った、あの憎き女を養子に取りましょう!」
マルボロは冗談だとは思ったが、ヴィルメリアの瞳は笑っていなかった。
マルボロ「いやいや、やめてくれないか⁉ってか、従妹に嫉妬は可愛いけど、そこまで憎んでたの⁉」
ヴィルメリア「私は少しずつ――ここでは口に出せない方法で、ワサビ公爵の力を削ぎましょう」
マルボロ「毒殺⁉毒殺だよな⁉」
ヴィルメリア「そうして、マルボロ様の従妹にワサビ公爵家を押しつけて、二人でミネストローネ侯爵邸で過ごしましょうね?」
マルボロ「まだミネストローネ侯爵もご夫人も存命だぁぁぁ!なんで二人になってるの」
ヴィルメリア「ほら、そこはワサビ公爵を愛するあまり――とか」
マルボロ「いやいや⁉それ無理がありすぎます!」
ヴィルメリア「――こういうシナリオにしないよう、ちゃんと父の手綱は握っておきなさい!」
マルボロ「イエス!ユアハイネス!」
カレー公爵も『さすがは軍事の名門ミネストローネ侯爵の娘だ』などと唖然としていた。
とぼとぼとリュカとレアナの元に戻るマルボロを見て、ヴィルメリアは独り言をつぶやく。
ヴィルメリア「マルボロ様、ここが正念場です。私だってワサビ公爵との婚姻など御免ですわ――見せてくださいまし、あなたの真の実力を」
日が傾き、夕日が差し込む部屋で、ヴィルメリアは微笑むのだった。




