第22節 マルボロとヴィルメリアの結婚話 ~頑張れマルボロ~
カレー公爵が休暇から戻ってきた翌日、マルボロが珍しく自分から口を開いた。
マルボロ「両陛下……どうやら、私の婚姻が決まったようです」
レアナ「え⁉ついにヴィルメリア様と?」
リュカ「めでたいじゃないか、マルボロも十八歳だろ?ヴィルメリア様も確か十六歳か。いい年頃だろう?」
マルボロ「それがですね、父はこれを機に隠居する……そう言って聞かないんですよ!」
リュカ「おい、派閥割りの話はどこいった⁉」
マルボロ「知りませんよ、カレー公爵をお呼びしましょうか?」
レアナ「そういえば、カレー公爵は推測だと言っていたわね……まさか、こんな盤面を描いていたとは……あの狸親父!」
リュカ「さすがにワサビ公爵家内の話には、俺たちでも口を出せないぞ?」
マルボロ「それはやむをえません。私が気づかぬうちに、父がミネストローネ侯爵家ヴィルメリア様との婚姻について、話を進めておりました。ですが、公爵領の領地運営と宰相補佐の同時進行だなんて、そもそも無理ですよ⁉」
リュカとレアナは同時にため息をつく……。
レアナ「そりゃそうよね、マルボロは王宮からは離せないし……一体どうするつもりなのかしら?」
リュカ「というか、あの打診の全てがブラフ、時間稼ぎだったとか――あの狸親父信じられねぇ!……カレー公爵が最大の被害者だな」
そこに、メイドが急ぎ足でやってきた。
メイド「マルボロ様、こちらは鮮魚と共に届いた、ワサビ公爵からのお手紙です。どうぞ」
リュカ「なんでだろうな……メイドが俺よりマルボロを敬っている」
レアナ「やめて、思い出させないでよ!あの旅行の件は!」
リュカ「す、すまん……」
マルボロは蝋封の手紙を無造作に破って、中を確認する。
マルボロ「やっぱりだ……相変わらず父上は無茶を言ってくれる……」
そうして、マルボロはワサビ公爵からの手紙をリュカに手渡す。
それに目を通すと……。
『愛しきマルボロへ
私は極めて不本意ながら、公爵位に就いてしまった。
ゆえに、私は引退して、全権をマルボロに譲ろうではないか!
細かいことは考えるな、領地運営は執事が回してくれる。
私は、文部科学大臣としての残りの仕事をしたら、あとは悠々自適の人生だ!
若いうちの苦労は買ってでもしろと言うが、無償で苦労を提供する私に感謝したまえ!』
レアナ「よかった……わね……マルボロ……」
リュカ「もう……言葉がない……領地運営だけは救いか……」
マルボロ「まったく父上にも困ったものです。父上は学園長に据えるんですから……まだまだ働いて貰わないと。父上のことだから、逃げ先は猫加護のある領地を避けるはず……その上で灯台下暗しな領地は数件。手持ちの諜報でも足取りは掴めますね」
リュカとレアナは、聞き逃せない台詞に反応する。
リュカ「ちょっと待て、手持ちの諜報って何だ⁉」
レアナ「マルボロって直属の諜報がいるの⁉」
マルボロ「ええ、はい。グラタンディア王国時代、諜報を請け負っていた話はしましたよね?その時に買収をしておきました」
リュカ「おいおい、マルボロのお母上が鬼籍に入ったのって……」
マルボロ「?私が五歳の時ですが、何か」
マルボロはきょとんとした顔で答える。
レアナ「さすがにその当時から買収なんてしてないわよね……?」
マルボロ「最初の三年くらいは無理でした、最初の一人を抱き込むのも苦労しましたよ……」
レアナ「ってことは八歳くらいよね、私が母を亡くした頃じゃないの」
マルボロ「まあ、諜報部隊全てを掌握するには至りませんでしたが」
リュカ「もう諦めよう、レアナ……あの親にしてこの子ありなんだよ……」
レアナ「諜報部隊の規模は知らないけど、足りるのかしら?」
マルボロ「グラタンディア王国からすしねこ王国への移行で、今では全隊が私の指揮下なのでご心配なく。それに、この条件で一番怪しいのはラーメン伯爵領です。公衆浴場周辺に民間人偽装といった線でしょう」
そうして、マルボロの予想通りというか……ある日、学園の職員室にあるワサビ公爵の机に『辞表届』が置かれていた。
マルボロ「ふふふ、やはりこの辺の日でしたか……これなら逃亡先を特定する必要もない」
レアナ「え、どういうことよ?」
リュカ「やめとけ……どうせ尾行でもつけてるんだろう」
その日のうちにワサビ公爵は捕縛され、学園に連行されてきた。
マルボロはワサビ公爵の目の前で、高笑いしながら辞表を燃やして暖炉に放り込む。
そしてなぜか、マルボロがワサビ公爵に学園長の辞令を下す。
ワサビ公爵「そんなぁ!私の悠々自適ライフがぁぁぁぁ!」
マルボロ「学園長ともなれば、公爵位は保有しておいた方がよろしいですよね?(にっこり)」
リュカとレアナは顔を見合わせ、口に出さずに思った『一番ヤバいのはマルボロだった……』と。




