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Heartbeat Reject 〜選ばれなかった僕は――それでも『彼女』を守りたかった〜  作者: もりゃき.xyz
第三章 内政チートの時間:ワサビ伯爵の陞爵
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第20節 やっぱり狸親父のままだ ~ご愁傷様、カレー侯爵~

 レアナがぽつりと言った。


レアナ「ねえ、あの狸親父がこのまま黙っていると思う?」

リュカ「あり得ないな……マルボロ?」

マルボロ「はい、なんでしょうか」

リュカ「なにかワサビ公爵に聞いているか?」

マルボロ「いえ、聞いていませんが……というか、父はよく私に黙って色々企むんですよ」

レアナ「はぁ、実の息子にまでこうなのね」

リュカ「まあ、今さら公爵位をどうこうできるわけじゃないからな」


 そこに、宰相であるカレー侯爵がやってきた。


カレー侯爵「ご機嫌うるわしゅう、両陛下」

リュカ「珍しいな、カレー侯爵が謁見の間に来るとは」

カレー侯爵「いえ、その……ワサビ公爵から打診がありまして」

レアナ「カレー侯爵も公爵になれとか――かしら?」

カレー侯爵「はは、それも言われましたが断固お断り致しました。どうやら、それはワサビ公爵の軽口だったようで……」

リュカ「軽口……ね。何か嫌な予感がする」

カレー侯爵「王兄たるロランティーナ・ヴァルミエ様が公爵のままでは、あらぬ噂が立ちかねない。ここは、大公爵位を新設してヴァルミエ家を陞爵(しょうしゃく――爵位が上がること、ここではヴァルミエ公爵がヴァルミエ大公爵になることを意味する)させるべきだと」


 レアナは首を傾げる。


レアナ「ねぇ、確かにロランティーナ様はリュカの姉だけど……王位継承権は返上していたわよね?」

リュカ「落ち着けレアナ……姉じゃなくて兄だ、身体的には。そして、俺たちに子ができるまでは返上なんて無理だ、そう突っぱねている。そうだよなカレー侯爵?」

カレー侯爵「そうですな、紛うことなき王位継承権第一位でございます」

リュカ「別にヴァルミエ家を大公爵にするのは構わないんだが……何か裏がありそうだな?」


 カレー侯爵は、少し困りながら言ってくる。


カレー侯爵「これは私の推測なので、話半分に聞いていただきたいのですが……ワサビ公爵は派閥を二つに割ろうとしているのではないかと」

リュカ「どういうことだ?現状はねこ貴族を含む『新王宮派』と、弱体化した『神殿派』だよな」

レアナ「もう、『神殿派』なんて名ばかりの愚物ばかりだから、全く使い物にならないと睨んだのかしら?」

カレー侯爵「今まででしたら『新王宮派』のトップはロランティーナ様で、第二位が恥ずかしながら私、そして第三位が元ワサビ伯爵でしたな?ここでワサビ公爵に陞爵したことで、私とワサビ公爵の派閥内での序列が、入れ替わる可能性が高いわけです」

リュカ「貴族の派閥って面倒くさいな?」


 カレー侯爵も、ため息をつきながら続ける。


カレー侯爵「私の推測では『新王宮派』をロランティーナ様に、そしてねこ貴族を中心とした『新神殿派』をワサビ公爵が、という対立軸にした上で、ロランティーナ様が大公爵になれば……貴族達はどう考えるでしょう?」

レアナ「『新王宮派』の方が強い派閥、『新神殿派』は過去が過去だけに――弱い派閥となりそうね」

カレー侯爵「さようでございます。一見すると反旗を翻しているように見せて『新王宮派』から離れて、自らを弱体化させるのではないかと」

リュカ「ワサビ公爵が『新王宮派』から抜ければ、カレー侯爵も序列二位を継続することになるわけか――はぁ、どうしたものか、下手に反対できない」

レアナ「そうよね、カレー侯爵が宰相で、宰相補佐がマルボロという公爵令息になったわけよね」

カレー侯爵「まあ、まだマルボロ様も正式に公爵になられたわけでもないので……私としては大公爵の話は、ひとまず保留でも構わないのではないかと」


 そこに、ロランティーナまで謁見の間に乱入してきた。


ロランティーナ「ねえ、リュカ?私が王兄だからって、大公爵にするとかいう話は本当?」

リュカ「いや、ロランティーナ落ち着いて。その話について、今まさに話し合っているんだが?」

ロランティーナ「忘れていないわよね?私の家からは、王位継承権持ちは出さないわよ?」

レアナ「血縁だから、そういう訳にもいかないんじゃないかしら?」

リュカ「ロランティーナもこういうんだから、大公爵の話も無しだな」

カレー侯爵「それでも、ワサビ公爵が派閥を割ることはやりそうですな……あとは、ワサビ公爵の提案として、すしねこ王国をすしねこ帝国にして、皇帝と皇妃にすべきとも」

レアナ「もうあの狸親父!一体幾つの手を打ってくるのよ!」


 ロランティーナはため息をついて言う。


ロランティーナ「……受けたくはないけど、私が大公爵になるのが一番穏便なのかしらね?」

リュカ「どうしてだ?」

ロランティーナ「だって、私が新王宮派のトップと目されていても、妻オリビアは大神官よ?新神殿派とか出てご覧なさい、私に発言力がなければ……また神殿が揺れるわよ?」

レアナ「……そこまでするかしらね、ワサビ公爵が」

リュカ「……なんだか、ワサビ伯爵時代の動きからすると、どうも違和感があるんだよな」

カレー侯爵「私なりに、ワサビ公爵の出した提案を整理しますね。

 1:私ことカレー侯爵をカレー公爵に陞爵、これはないでしょう

 2:大公爵位を新設して、ヴァルミエ公爵を大公爵に陞爵

 3:仮説ながら、派閥を二つに割って、ワサビ公爵が新神殿派のトップに立つ

 4:すしねこ王国をすしねこ帝国に刷新する

 ……さて、私にはブラフ混じりに見えますな」


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