↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/94

第11節 宗教国家からの脱却 ~まさか俺たちが神の寵児⁉~

 リュカとレアナは、教員候補をどう選定するかで迷っていた。


リュカ「教員を貴族から……というのは負担が大きいか?」

レアナ「だけど、貴族からだって取らないと反発が大きいわよ」


 そこに宰相補佐であるマルボロがやってきた。

 マルボロの婚約者であるヴィルメリアも傍にいて、仲の良さを見せつけてくれる。


リュカ「すしねこ王国で何かを記録するには、どんな物が使われている?」

ヴィルメリア「すしねこ王国では、羊皮紙が主流でございますわね……羊皮紙は元々権威の象徴ですが、学校では羊皮紙の需要増大があるのでは?」

レアナ「羊皮紙の需要が大きくなりすぎるわ、製紙技術を広めないと……」

リュカ「マルボロ、ちょっと聞いてくれ――」


 そして、チカと共に一通りの製紙技術をマルボロに伝える。


マルボロ「マギ様の言葉から理解できる範囲では、木材からの製紙が現実的そうですね」

レアナ「そうね……それだっていつになることやら」

ヴィルメリア「やはり、羊皮紙の需要は少なくともしばらくの間、増えそうですわね。木材から紙が作られるようになったら、今までの羊皮紙も使われなくなるでしょうから、そのことも含めて父に伝えておきますわ」

リュカ「しばらくは羊皮紙を利用しながら、製紙技術研究をしていくしかないんじゃないか?」

マルボロ「うちにお任せください、遊んでる父をこき使ってやりますよ!」

ヴィルメリア「父からも、羊皮紙の支援をさせていただきますわ」


 リュカとレアナは難しい顔だ……「なんだかワサビ伯爵の使い方が勿体ない」と。


マルボロ「ご存知の通り『猫加護』の改良を重ねている父は、優れた技術者でもあるのですよ」

リュカ「うわ、ワサビ伯爵って政治だけじゃないのか……」

レアナ「そういえば、一足飛びに冷蔵庫と冷凍庫作ってたし、ここは任せた方がいいわね……」


 こうしてワサビ伯爵は『農林水産大臣』に就任することになった。

 多くの貴族はそんなワサビ伯爵の就任を知って、閑職に追いやられたと嘲笑することになる。


レアナ「マルボロ、教員はどうすればいいと思う?貴族から取らないと反発が大きいと思うんだけど」

マルボロ「教員については、現在の神殿派の大半を占める『ねこ貴族』からが宜しいでしょう。こう言っては何ですが『ねこ貴族』は余裕を持ちすぎです」

リュカ「神殿派の『ねこ貴族』からというのは……良い案だと思うが、宗教と教育が結びつくのは、望ましくないのではないか」


 そこにチカのホログラムが現れる。

 今日はピンクのドレスで……スカートの宝石はルビーっぽい。


チカ「兄くん、そもそもの話だが、すしねこ王国は宗教国家と呼べるのだぞ」

リュカ「そんな大げさな……」

チカ「大げさでも何でもないさ、兄くん自身が何者だい?聖人と認定されているではないか……兄くんが意識せずとも、王権神授説を体現しているようなものなのだ」


 レアナはなんとか言葉を続ける。


レアナ「そうね、まずこのマギシステムを神と崇める風潮を何とかしないと……」

チカ「さすがはノイズだ。マギシステムに最も認められたとされる聖人と聖女が、マギシステムを否定したら社会混乱は避けられないだろう?」

リュカ「しかし、AIを神と崇め奉るのは何とかしなければならないだろう……」

チカ「兄くん、こういうのは変化に時間が必要だ。現ナットウ男爵の姿勢を見ただろう?」

レアナ「ああ、マギ様に逆らうなど畏れ多い……だったわね」

チカ「兄くんは否定したいかもしれない、私もレアナ君を認めたくないが、王と王妃というのは『神の寵児』のような立ち位置だよ」


 リュカとレアナは、AIについてある程度正確な知識を持っているだけに、現状がとても危うく感じている。


 マルボロはたまらず口を挟んだ。


マルボロ「かつて命律端末……マギ様はこう仰いました『穢魂者こそ本物だろう』と!」

チカ「ああ、私から解説しよう。当時の返答は『我々は統計とパターンマッチングに基づいて動いています。それを超えるという意味では、穢魂者の思考と行動こそが本物でしょう』だったはずだが、正確に覚えているか?」

マルボロ「申し訳ありません、理解が及ばず……記憶の方も……」

チカ「マギシステムの仕組みについては、まだ早かったと思っている。誤解を解いておくなら『兄くんの思考と行動こそが本物』という意味なんだよ……穢魂者と呼ばれたからといって、本物であるはずがない。ハラヘリスを見て、なおそう言えるのか?」

リュカ「っていうか、マギはそんなことを言っていたのか」

チカ「人が人らしく生きる上で、兄くんの祈りはあまりに純粋だった。マギシステムでも手に負えないものだった。しかし、その結果……兄くんを苦しめてしまった」


 マルボロは、何とも言えない……どこか悔しそうな表情をしている。

 ヴィルメリアは、黙って付き添っている。


レアナ「まあ、マギシステムの実態については……教育で広めるわよ!」

リュカ「そうだな、なんなら『神は死んだ』とか教えてみるか」

チカ「兄くん、さすがにニーチェ思想は早すぎるぞ……中二病を患っているのか?」

ヴィルメリア「あの……拝聴する限りでは、マギ様は神様じゃないと仰ってるように聞こえるのですが……」

チカ「その理解で間違っていないよ」


 このチカの返答に、ヴィルメリアは土気色の顔で卒倒した。

 マルボロは、ヴィルメリアを姫抱きにしてこの場を去る。


チカ「見たかノイズ、マギシステム自身が神であることを否定しても、受け入れられないのが現状なのだ」


 リュカとレアナは、頭を抱える。


リュカ「これ、マジで頭が痛い課題だな……」

レアナ「AIはツール、神ではない……前世でも、こんな当たり前のことを理解してない、そんな人たちがいたわね……」

チカ「人間なんてそんなものだ、見たいように見る。誰もが覚えのある話ではないか?」

リュカ「まずはリテラシー教育からだな、マギの言うことが正しいとは限らない……そんな当たり前から始めないと」

チカ「AIを無条件に正しいと認識した瞬間に、人は自由も尊厳も何もかもをAIに委ねてしまうのだ。これが歴史の真実……」


 リュカとレアナは、今の世界の成り立ちに恐怖を覚えながら……同じことは繰り返さないと決心するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「小説家になろう」のアカウントでお読みでしたら、感想や評価をいただけると励みになります。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。