第09節 レアナとリュカのお忍び一泊二日旅行:二日目 ~ご迷惑をおかけしました~
情熱的な一晩を過ごした朝、メイド軍団が民泊に押し寄せてきた。
「レアナ様は……もう何もしないで欲しいにゃ!」
「服が少し臭ってるにゃ!お忍びでも、王様や王妃様の着る服じゃないにゃ!」
「これが朝食の『ねこまんま』にゃ!」
「マルボロ様の手配した宿からにゃ?困惑した女将さんが、お金を返しに来たときは何事かと思ったにゃ!」
「この宿の女将さんにも、顔を立てるために一旦受け取ったと、お金を返されたにゃ!」
「「「「「両陛下、金銭感覚狂いすぎにゃーーーーー!」」」」」
「両陛下は、ワサビ伯爵邸に挨拶に行きなさいにゃー!」
と、『ねこまんま』を食べ終わると同時に、民泊を追い出されたリュカとレアナ。
レアナ「なんか食器が運び込まれてるにゃ……」
リュカ「そんなに、金銭感覚狂ってるかにゃあ……」
レアナ「平民の金銭感覚……結局わからなかったにゃ……」
二人はとぼとぼと、ワサビ伯爵邸に向かう。
執事「これはこれはにゃ、リュカ陛下にレアナ陛下、ご機嫌うるわしゅうだにゃ」
リュカ「ワサビ伯爵とマルボロはいますかにゃ?」
執事「はてにゃ?伯爵様もマルボロ様も王都にいらっしゃるはずですにゃ」
レアナ「そうにゃ!あのメイド達、わかっててここに誘導したにゃ!」
執事「ああ、あのメイド達に言われたにゃ?湯浴みの準備はできていますにゃ」
リュカ「確かに、昨日は風呂に入ってないにゃ」
レアナ「一日くらい構わないと思ってたにゃ」
執事「いけませんにゃあ、さあ中へどうぞにゃ」
そうして、湯浴みをして結局平民の服も取り上げられ、王族の服に着替えさせられた。
一泊二日の旅行のつもりが一泊一日になってしまった。
レアナ「服を着替えただけなのににゃ……一気に視線が変わったにゃ」
リュカ「あちこちで旗を振ってるにゃ」
レアナ「まるで前世の皇室みたいだにゃあ」
リュカ「俺たちも陛下って呼ばれる立場だしにゃあ……」
レアナ「これからどうするにゃ?」
リュカ「あの寿司処に逃げようにゃ」
寿司処に来ると、久々のナットウ男爵=旧ネバリオ王がいた。
ナットウ男爵「これはこれは……すしねこ両陛下、ご機嫌うるわしゅうだにゃ」
リュカ「王族とは対等だったはずにゃ?」
ナットウ男爵「今や、私はしがない男爵にゃ」
レアナ「『発酵の理』という象徴だにゃ?」
ナットウ男爵「それは学術的象徴にゃ、権力的象徴じゃないにゃ」
リュカ「しかし『発酵の理』って結局なんなんだにゃ」
ナットウ男爵「七代にわたり発酵を研究し続けた結果にゃ、元々はグラタンディア家にゃ……さあ、寿司を食べるにゃ」
ナットウ男爵と共に寿司処に入る。
板前「らっしゃいにゃ!今日はお忍びじゃないにゃ?」
レアナ「そうにゃ、着替えさせられたにゃ」
板前「王妃様は、いつ見てもお美しいにゃ。リュカ陛下とお似合いにゃ」
リュカ「注文は……板前さんのお薦めセットにするにゃ!」
レアナ「私もそうするにゃ」
ナットウ男爵「たまには私もお薦めセットにするにゃ」
板前「お薦めセット三人前にゃ?海藻入りミーソ汁と豚汁、どちらかついてくるにゃ」
リュカ「豚汁は昨日食べたからにゃあ、海藻入りミーソ汁にするにゃ」
レアナ「私もそうするにゃ」
ナットウ男爵「私は豚汁にするにゃ、あとお薦めセットは私だけで三十人前にゃ!」
板前「失礼しましたにゃナットウ男爵……お薦めセット三十二人前にゃ」
そうして出てきた『お薦めセット』は、懐かしい軍艦巻きの寿司だった。
レアナ「イクラにゃ!サラダにゃ!ネギトロにゃ!」
リュカ「ネギトロうまうまにゃ!」
板前「猫加護だとネギトロ人気が凄いにゃ。それで色々工夫を重ねているにゃ。やっぱりネギトロは最強にゃ」
ナットウ男爵「納豆軍艦にゃっとうまんま!」
板前「ナットウ男爵の旦那は相変わらずだにゃあ」
ナットウ男爵の三十人前とリュカとレアナの各一人前の食事スピードがほぼ同等とはどういうことだ、と思いつつも食べ終わって、煮干しの粉末入りミルクを舐めながらまったりする三人。
ナットウ男爵「すしねこ両陛下が王都から離れるのは、はじめてにゃ?」
リュカ「ですにゃ、今回が遅くなった新婚旅行ですにゃ」
レアナ「平民っぽい旅行にしたかったにゃ、だけど昨日だけだったにゃ」
ナットウ男爵「顔があまり知られてなければにゃあ、私みたいに適当な爵位作って動き回れるんだがにゃあ」
リュカ「ナットウ男爵はやり過ぎにゃ」
レアナ「そうにゃ、王自身が王家の影や男爵になるなんて、意味不明だにゃ」
ナットウ男爵「すしねこ両陛下は注目度が高いからにゃあ、今回もワサビ伯爵領では大盛り上がりだったにゃ……とても真似できないにゃ」
リュカ「なんでかにゃあ……?」
レアナ「愚王愚王妃と有名かにゃ?」
ナットウ男爵「まさかにゃ、あちこちで熱狂的な支持にゃ」
レアナ「リュカにゃんの水道政策かにゃ?銀行かにゃ?」
リュカ「レアにゃんの公衆浴場政策かにゃ?」
ナットウ男爵「やる事なす事、全てが国民のためになってるにゃ」
リュカ「ナットウ男爵が言うなら、信じるにゃ」
レアナ「間違ってなかったようで、よかったにゃ」
ナットウ男爵「噂になっている教育制度も注目の的にゃ、潰れない程度に頑張るにゃ」
リュカ「ナットウ男爵……ありがとうございましたにゃ」
レアナ「ありがとうにゃ、そろそろ私たちも王宮へ帰らなきゃいけないにゃ……」
リュカ「ちょっと待つにゃ、また鉄の馬ロボット馬車に乗るのかにゃ⁉」
青ざめるリュカとレアナだった。
レアナ「嫌だにゃー、普通の馬車でのんびり帰るにゃ!」
リュカ「もう、あの馬車はコリゴリにゃ~!」
しかし、メイド軍団に鉄の馬ロボット馬車に監禁され、王宮に着いた時に失禁の始末をしてもらうリュカとレアナであった。
リュカは珍しく、マルボロに雷を落とすのであった。
罰として、マルボロは鉄の馬ロボット馬車でワサビ伯爵領の三往復鉄馬車監禁を行い、身体で覚えさせた。
――帰ってきたマルボロは、ここでは描けないほど悲惨なことになっていたそうな。
一つだけヒントを記すなら、マルボロは『シートベルト』を知らない。
そして、リュカとレアナは失禁ショックのあまり、一週間ほど寝込むのであった。
日程を考えれば、素直に普通の馬車を使っても大差なかったとさ。




