第08節 レアナとリュカのお忍び一泊二日旅行:一日目午後 ~平民生活チャレンジ~
レアナ「ねえ……この民泊だにゃ……?」
リュカ「絶対最高級だにゃ……」
レアナ「なんか、ズラッと出迎えが並んでるにゃ……」
リュカ「これのどこがお忍びなんだにゃ……これ、絶対貸し切りにゃ?」
レアナ「マルボロ……人の話を聞いてなかったのかにゃ?」
リュカはキャンセル料として金貨袋半分、すなわち明治時代の五千万円相当を渡し、レアナと共に改めて平凡な民泊を探す。
レアナ「平民の一般的な宿より、少し贅沢するにゃ?」
リュカ「それがいいにゃ、落差が激しすぎると辛いにゃ」
そうして、二階建てで六部屋か八部屋くらいの民泊を見つける。
レアナ「リュカにゃん、ここにするにゃ」
リュカ「そうするにゃ」
女将「にゃ!王様と王妃様にゃ!」
リュカ「静かにするにゃ!お忍びにゃ!」
レアナ「リュカにゃん、声が大きいにゃ!」
女将「わかりましたにゃ、お泊まりですかにゃ?」
リュカ「一泊にゃ」
女将「お食事はどうしますかにゃ?夜と朝は出せますにゃ」
リュカ「レアにゃん、どうするにゃ?」
レアナ「夜は私が用意するにゃ、朝はお願いにゃ」
女将「厨房をお使いかにゃ?」
レアナ「お願いしますにゃ」
女将に通された部屋で……。
レアナ「やっと、汚れた服を洗濯できるにゃ!」
リュカ「臭う前でよかったにゃ!」
レアナ「旅をしていた時は私が食事、リュカにゃんが洗濯だったから、今日は私が洗濯するにゃ!」
リュカ「大丈夫かにゃ?」
レアナ「洗濯くらいできるにゃ!おまかせにゃ!」
川で洗濯してきたはずのレアナが、一時間ほどで泣き付いてきた。
レアナ「服がビショビショにゃ……これじゃ乾かないにゃ!」
リュカ「このまま乾かしたら雑巾臭くなるにゃ、ちゃんと絞るにゃ!」
レアナ「頑張って絞ったのにこれにゃあ……」
リュカ「わかったにゃ、絞っておくから干してにゃ?」
レアナ「干すならできるにゃ!」
しかし、リュカが絞った洗濯物をレアナは全て地面に落として、リュカが洗濯し直すことになった。
レアナ「二度手間でごめんにゃ」
リュカ「それでも、ずっと手伝ってくれたにゃ?嬉しかったにゃ」
レアナは少し涙目だ。
レアナ「夕食は楽しみにするにゃ?マルボロとヴィルメリアの婚約の時に言った、ミネストローネの約束を果たすにゃ」
リュカ「楽しみだにゃ!るんたった~♪」
レアナ「ちょっと買い出しに行ってくるにゃ」
リュカ「荷物持ちするにゃ!」
レアナ「そんなに多くないにゃ?」
リュカ「口実だにゃ、言わせるなにゃ」
そして頬を赤くして、手を繋いで歩く二人をほっこりと見つめる、ワサビ伯爵領の人々であった。
レアナ「ミネストローネ、できたにゃ!デザートはバナナミルクプリンにゃ!」
リュカ「美味しそうだにゃ!るんたった~♪」
レアナ「温かいうちに食べるにゃ?」
リュカ「美味いにゃーとても優しい味で、心がポカポカするにゃ!」
レアナ「よかったにゃ、さすがにヴィルメリアほどの味じゃ無いと思うけどにゃ」
リュカ「よそはよそ!うちはうち!にゃ!」
レアナ「私も食べるにゃ、うーん……まあまあにゃ……」
リュカ「これで、まあまあなのかにゃ?」
レアナ「ワサビ伯爵領だからにゃ、揃わない材料があったにゃあ……今度、王宮でも作るにゃ!」
リュカ「これ以上の味とか、楽しみすぎるにゃ……!」
レアナ「バナナミルクプリンは……これはさすがに美味しいにゃ!」
リュカ「俺はまだまだミネストローネにゃ!美味しいにゃ美味しいにゃ!」
レアナ「ちゃんとバナナミルクプリンの余力を残しておくにゃ?」
リュカ「旅の時もレアにゃんの料理食べてたけど、やっぱ美味しいにゃ!」
レアナ「王宮の料理人が聞いたら、卒倒するにゃ?」
リュカ「わかってるにゃ!そろそろバナナミルクプリンにゃ!……なんだにゃ、頬が落ちそうだにゃ!」
レアナ「よかったにゃ、リュカにゃんが美味しそうに食べてるだけで幸せにゃ」
リュカ「ふーごちそうさまですにゃ」
レアナ「お粗末様でしたにゃ、食器を片付けてくるにゃ」
レアナが二人分の食器を重ねて持っていこうとするので、リュカは自分の食器を重ねて一緒に洗い場に向かう。
リュカ「ご馳走になったから、皿洗いくらいはするにゃ」
レアナ「なんか悪いにゃ……じゃあ厨房の方を掃除してくるにゃ」
リュカが食器を洗っていると、厨房の方から『どんがらがっしゃ~ん』と派手な音がした。
何事かとリュカが駆けつけると……割れた食器が散乱していた。
レアナ「あ、リュカにゃん……拭き掃除をしていたらうっかり……皿とかが、全部割れたにゃ……」
リュカ「誰にでもミスはあるにゃ?女将さんにまず報告に行こうにゃ?」
レアナ「本当にどうしようかにゃ……」
リュカ「女将さんに相談にゃ、何とかなるかもしれないにゃ?」
女将「何の音だにゃ?うわぁ、派手にやっちゃったにゃあ……」
レアナ「お客さんは大丈夫かにゃ?」
女将「今晩泊まるお客さんは皆、外で食べるから大丈夫にゃ。だけど、明日のお二人の食事は……」
リュカ「気にしないでほしいにゃ、食器はちゃんと弁償するにゃ」
女将「安物だから、弁償とかは気にしなくていいにゃ?」
しかし、リュカとレアナの使った食器はそれなりに手が込んでいたのを知っている。
レアナは涙目だ。
リュカ「それではこちらの気が済まないにゃ、これで食器の足しにしてほしいにゃ」
リュカは金貨袋半分、すなわち明治時代の五千万円相当を手渡した。
女将「いけませんにゃ、こんなに受け取れませんにゃ!」
レアナ「迷惑料と思ってほしいにゃ?」
リュカ「妻のためと思って、受け取ってくださいにゃ」
女将「わかりましたにゃ、率直なところ……経営が厳しかったので助かるのにゃ」
なんとか話を収め、部屋に戻るリュカとレアナ。
レアナ「しょぼんにゃ」
リュカ「済んだことは気にしないにゃ」
レアナ「だってにゃ?これで明治政府一年分の出費にゃ?」
リュカ「旅の恥はかき捨てにゃ、気晴らしに散歩にいくにゃ……ワサビ伯爵領は星が綺麗だにゃ!」
リュカはレアナの肩を抱いて、散歩に出かける。
リュカ「ワサビ伯爵領に来ると実感するにゃ、王都って案外空気が汚れてるようだにゃ」
レアナ「……明かりも多いから、星もあまり見えなかったにゃあ」
リュカ「ありがとうにゃ、レアにゃん」
レアナ「どうしたのかにゃ?」
リュカ「レアにゃんが誘ってくれなかったにゃら、こんな空気も吸えなかったにゃ」
レアナ「でもにゃ……失敗ばかりにゃ……」
リュカ「大丈夫にゃ、こんな時くらいは、ぱーっとお金を使うにゃ」
レアナ「だけどにゃ?大切な食費にゃ?」
リュカ「新婚旅行にも来られなかったにゃ?やっと来られた新婚旅行と思えば、安いものにゃ」
レアナ「強がりにゃ……ちゃんと半分分け合うにゃ」
リュカ「聖人聖女予算のように共同管理にするかにゃ?」
レアナ「本物の家族だにゃあ……」
リュカとレアナは立ち止まり、熱い抱擁とキスを交わすのだった。
その周囲には、最高級民泊の護衛、ワサビ伯爵領の護衛と住民が大量にいて、隠れて見ているのだった。
その夜は、久々の猫加護で二人きり……。
初夜のようで初夜じゃない、まだまだお互い初めてを保ったままの、甘酸っぱい猫の時間を過ごすのだった。
レアナ「リュカにゃん、ここの毛が枝毛になってるにゃ……」
リュカ「ありがとうにゃ、レアナの毛は相変わらず綺麗だにゃあ……」
レアナ「だけど私たちも十八歳にゃ……そろそろ一歩先に進む時期かもにゃ……」
明け方まで毛を繕い合うリュカとレアナであった。




