第02節 すしねこ王国のインフレ計画 ~どんどん経済を回せ~
レアナの指示で、すしねこ王国銀行は融資を始めた。
融資予算は、ひとまずチカが言っていた十五億円相当だ。
基準は命律端末で「社会的有害性」フラグが立っていないことを条件とした。
当然、信用的理由であれ、社会的有害性フラグが立っているラーメン伯爵は……利用できないのだった。
レアナ「さて、この融資業務、どう転がるかしらね?」
リュカ「適度なインフレが起こって、国民の生活が圧迫されなければいいんだがな……」
チカ「兄くん、心配することは無い。銀行が十五億円相当を保有しているというのは、今で言う『証書』換算で百五十億円相当分以上の経済効果が見込めるのだ」
リュカ「すなわち経済効果は百五十億円前後……こう日本円換算すると、心許ないな」
チカ「何を言っているのだ、兄くん。前世で喩えるなら、やっと明治時代に突入したような世界だぞ?人口も経済規模も明治時代の感覚で測らなければならない。しかも、すしねこ王国は、前世のEU全域より広大で、人口もそれ相応に多い」
レアナは仰天して言う。
レアナ「ちょっと待って!明治時代での百五十億円とか、それこそ天文学的金額になるわよね⁉」
チカ「だから、心配することは無いと言っているのだノイズよ。具体的には明治政府の国家予算百五十年の経済効果だな。むしろ若干過剰だったかもしれないと再計算している位だ……まあ問題はなさそうだ」
リュカは念のために言う。
リュカ「それ、国民生活を圧迫するような……悪性インフレ起こらないか?」
チカ「心配ないだろう、兄くん。そもそも『すしねこ王国グッズ』だけで三十億円も稼げるんだ、すしねこ王国は……庶民だって十分豊かなんだよ。ラーメン伯爵領は、あまりにも経済的に深刻過ぎたがね、そういう意味では明治時代に喩えたのも悪かったかもしれない」
レアナ「ってことは……ラーメン伯爵への二十億円も……」
チカ「あの規模の支援で、更に他領からの支援があって復興できないなら、救いがない無能という話だ」
リュカ「なんか私財が怖くなってきた……っていうか、経済感覚が狂う」
レアナ「なんか、私も怖くなってきたわ……」
震えるリュカとレアナに追い打ちをかけるチカ。
チカ「兄くんの私財だけで明治政府を上回る財政規模を動かせる……つまり、すしねこ王国は『個人財産から始まる国家資本主義』の様相を呈しているんだよ」
リュカ「いやいや、資本主義って個人がやるもんじゃないだろ⁉」
チカ「じゃあ、なんて呼べばいいのだ?『聖人経済主義』か?それとも『ねこまんま財政論』か?」
レアナ「『ねこまんま財政論』はさすがにバカっぽすぎるわ……」
チカ「加えて言うと、王家の財産と今回の融資分は分離されている。すしねこ王国銀行が万一倒産したとしても、王家の財産が投入されて、まともな中央銀行になるだけの話だ」
そこにマルボロが焦って足早にやってきた。
マルボロ「各貴族が、次々と融資を求めています!このままでは金貨袋十五個では、金貨が不足する見込みです!」
レアナ「ねえ、ちゃんと『社会的有害性フラグ』チェックしてるわよね?」
マルボロ「当然です!多くの貴族は、街道の整備に使っているようです!」
チカ「くふふ、命律端末に尋ねれば……当然、街道整備と答えるだろうな。街道設計も命律端末任せ……無駄な道は作らないさ」
このマルボロの一言に、少し悩むリュカとレアナ。
リュカ「わかった……融資について、どうする?」
レアナ「残り金貨袋十五袋も回すわよ」
リュカ「よろしく頼む」
マルボロ「かしこまりました」
チカ「これが『ねこまんまミラクル・ニューディール三〇〇』だな……」
そうして、各領地の街道整備及び、それによる雇用創出で、かつてない程の経済活況化が発生。
賢王と賢妃の名声は高まるばかりであった。
予定通り順調にインフレが発生し、少なくとも中央では銅貨の出番は少なくなっていった。
マルボロ「そろそろ『あるみ貨』とやらの生産と、銅貨の回収を中央周辺で始める時期かと」




