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第22節 銀行の詳細を考えましょう ~前世の技術がチートになってる~

 円卓会議に食事が運び込まれて、雑談の時間となった。


ワサビ伯爵「今までお話を聞くことに専念しておりましたが、なぜ『金行』ではなく『銀行』なのですかな?」


 不意打ちの質問に、リュカはなんとか取り繕おうとする。


リュカ「そ、それは……ほら、金貨銀貨銅貨とあるから、間をとって」

レアナ「随分と雑な説明ね……」

マルボロ伯爵令息「即ち、取り扱うのは金貨だけではない、ということですか?」

レアナ「ゆくゆくはそうなるでしょうね、だけど銅貨一枚預けるためだけに、銀行を使うなんて真似はされないでしょうし……」


 ここでリュカはハッとする。


リュカ「そうだ、両替が必要じゃないか?これも、キッチリ手数料を取って!」

レアナ「あー、両替は必要ね。大量の銅貨や銀貨を金貨にしたり、使い勝手がいいように、逆に金貨を銀貨や銅貨にしたり」


 そこにワサビ伯爵は待ったをかける。


ワサビ伯爵「ここで問題になるのは、偽造通貨ではありませんかな?貴金属の比率を減らした偽造通貨や外国通貨……こういったものを銀行に預けるだけで、資産が増えるということになりかねません」

リュカ「それがあった……!チカ、ちょっと出てきてくれ」


 チカのホログラムが現れた……年齢は変わらないが、なんかホログラムにしてはしっかりした姿になっていないか⁉


チカ「やあ、兄くん。偽造通貨の話だね?グラタンディア王国で偽造通貨は違法となっているから対処は簡単だ。正規の貨幣と秤にかければいい。大きさが怪しい時は水に浸けて比較すれば良い」


 カレー侯爵まで話に入ってくる、これでは食事休憩はどこいった!というレベルのワーカホリックである。


カレー侯爵「その貨幣というのは、金貨、銀貨、銅貨のことでいいのですかな?」

チカ「グリーン・カレー侯爵の理解で正しいよ。あとは、金銀銅の実物と貨幣の交換なども、あった方がいいかもしれないぞ、兄くん」

リュカ「これは鑑定士ギルドでも設立して、そこに怪しい貨幣の鑑定と、実物の貴金属鑑定の業務委託でいいかな?」

ネバリオ王「しかし……偽造通貨を見抜くにも、我がグラタンディア王国には秤がそんなに多くないな……いや、簡易的なものは商売で使われているが、あくまで目安どまりの代物だ」


 ネバリオ王は心底悔しそうに言う。


チカ「命律端末のスクリーンから設計図を出せるぞ。ワサビ伯爵領の技術力があれば、作るのはそれほど難しくもないだろう」

ワサビ伯爵「確かに、我が領の技術力は、それなりに高いと自負しておりますよ……必要であれば、秤程度は幾らでも作ろうではないか」


 チカのホログラムが消えてしばらくの時間が経ち、遂にネバリオ王が決断する。


ネバリオ王「よし、懸念はほぼ潰せているようだ。原始的銀行からという、聖人様のお言葉もありました。しかし、一足飛びにグラタンディア国営銀行と洒落込もうじゃないですか!」

リュカ「ちょっと待ってください、まだ『証書』の正当性についてのお話が」

レアナ「証書管理くらい、マギに任せれば良くない?」

リュカ「え、マギってそこまでできるの⁉」

レアナ「偽造証書くらい、なんてことないわよ……あれよ、ブロックチェーン的な」

カレー侯爵「私もそこは懸念しておりましたが、さすがは聖女レアナ様」


 『証書』偽造についてはマギシステムが管理するから、問題はないらしい。


ネバリオ王「さあ、国営銀行設立グラタン祭りじゃ!王都民を集めろ!」

リュカ「おいおい、本当に大丈夫なのか?」

レアナ「まあ、信用って面じゃ国営の方がいいでしょ」

リュカ「だけど利子の話はどうする?取り付け騒ぎは?」

レアナ「ま、当面は銀行の運営資金で利子無しでいいでしょ?取り付け騒ぎも何も私たちが初めての銀行よ、他の銀行が現れてからでいいじゃない」

リュカ「レアナ……お前実は相当できるだろ」

レアナ「リュカほどじゃないわよ……」


 そうして『聖爵リュカ・聖爵レアナの銀行』が各地に建設された。

 おい、国営銀行どこ行った……と、ネバリオ王に問い詰めた所……。


ネバリオ王「……命律端末が、勝手に聖爵名義で話を進めてしまったのだ」


 リュカはそれを聞いて、ガックリするのであった。どうせチカの入れ知恵だろうと。


レアナ「ところで、なんでカレー侯爵が宰相じゃないんですか?」

ネバリオ王「うむ……カレー侯爵に打診したこともあるのだが、カレー侯爵自身が、王宮派の力が過ぎるのは望ましくないと……宰相の座を辞退したのだ。ワサビ伯爵も同様だ」

リュカ「ま、いいじゃん?円卓会議でもさ、実際に宰相の仕事してるのはカレー侯爵だし、多分形式的なバランス取ってるんだよ。そういう意味じゃさ、考えてみろよ。神殿派の宰相が『ねこ貴族』の可能性だって高いんだから……そのトップである、ワサビ伯爵を投獄するとかあり得ない。何が『宰相辺りなら国家反逆罪として投獄してきてもやむなし』だ……あの狸親父め、ワサビ伯爵のオッサン!」

レアナ「それもそうね……まんまと騙されてたわよ、やるわねワサビ伯爵」

ネバリオ王「わしも、王宮派と神殿派の、従来の対立価値観が抜けきっておらなんだ……ワサビ伯爵には一杯食わされたわ、はっはっは」


 笑い事じゃないぞ、ネバリオ王のおっさん……とリュカは呆れるのだった。


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