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第18節 ワサビ子爵の動き ~脚気という足かせがなくなり~

 ワサビ子爵キャビンと嫡男マルボロ・ワサビは、執務室で話し合っていた。

 キャビンは、マルボロをそのまま老けさせたような風貌で、髪を七三分けにしている。


キャビン「マルボロ……庶民達の難病は克服できたようだにゃ?」

マルボロ「はいにゃ、ミーソ汁や豚汁の義務化に加え『猫加護』の影響で広まった、煮干しの粉末入りミルクも効果が見られたようですにゃ」

キャビン「これで、我が領の問題は解決したにゃ」

マルボロ「そうですにゃ父上、そろそろ動き出すべきかにゃ?」


 キャビンは頷き、言葉を続ける。


キャビン「問題はないと思うにゃ、ちなみにナットウ男爵は……おそらくネバリオ陛下その人にゃ」

マルボロ「そうだったのかにゃー!」


 キャビンはマルボロの驚きを見て「まだまだ未熟だな……」と思うのだった。


キャビン「まずは……我々の悲願だった『ねこ貴族』を増やしていくにゃ」

マルボロ「わかりましたにゃ父上……しかし一気に増やすと、怪しまれるにゃ……」

キャビン「そのための布石にゃ、ネバリオ陛下なら間違いなく、リュカ様とレアナ様を取り込むにゃ?そのヴァルミエ伯爵家と繋がっていれば……」

マルボロ「ある程度、警戒心は薄れるにゃ……」

キャビン「そういうことにゃ。既に、ある程度の信頼はある、そういう前提で動くにゃ!」

マルボロ「我が家がネバリオ王の影と取引をできていたのかにゃ?」

キャビン「おそらく、影を通じて我らを探っていたのだろうにゃあ……」


 キャビンは大まかな方針を伝えるが、息子といえど、全ては伝えない。


マルボロ「わかりましたにゃ!」

キャビン「まずは、派閥内から行くにゃ……ソバ男爵とウドン男爵に、あの『ねこあげ』を進呈するにゃ、それできっと二人は陥落するにゃ」

マルボロ「確か聖人様の言う『きつねうどん』『きつねそば』が基本だったかにゃ?」

キャビン「そうにゃ、それとなくソバ男爵とウドン男爵にも情報を流しているにゃ」

マルボロ「わかったにゃ!『ねこあげ』を手土産に……『猫加護』を受け入れさせるにゃ!」

キャビン「『猫加護』があれば『ねこあげ』入りの蕎麦もうどんも、抜群に美味しくなるにゃ!」


 マルボロは、王宮派と『猫加護』の相性が悪い貴族を気にする。


マルボロ「ラーメン伯爵とオデン子爵はどうするかにゃ?」

キャビン「ラーメン伯爵と『猫加護』は相性が悪すぎるにゃ。オデン子爵なら『ねこあげ』に興味を示すかもにゃが……」

マルボロ「無理は禁物!だにゃ!」

キャビン「そういうことだにゃ。まずは、ソバ男爵とウドン男爵だにゃ!」


 そうして、派閥のソバ男爵・ウドン男爵の麺連邦に向かうマルボロ……。


 キャビンはマルボロにも秘密で、ショウガ子爵やカラシ男爵と『ねこあげ』で交渉を続けている。

 カラシ男爵は『ねこあげ』との相性の良さで好意的だが、ショウガ子爵は難敵だった。


ショウガ子爵「『ねこあげ』?そもそもうちには『猫加護』なんて要らんわい!」

ワサビ子爵「せめて一口だけでも……毛がフサフサになりますぞ」

ショウガ子爵「ショウガがあれば、全て解決する!今や、ショウガは多くの領地に輸出してる!ワサビ子爵だって買っておるだろう!」

ワサビ子爵「ショウガだけでは栄養バランスが……」

ショウガ子爵「ショウガは万能!お湯に入れてよし!蕎麦に使ってよし!寿司の口直しによし!」


 頑固なショウガ子爵に辟易しながらも、ワサビ子爵は言葉を続ける。


ワサビ子爵「……わかりました。ただ『ねこあげ』は渡しておきます……気が向いた時に食べてみてください」

ショウガ子爵「『ねこあげ』とやらが……果たして、ショウガと合うかな?」


 こんなやり取りをしている間にも、ソバ男爵とウドン男爵は『ねこあげ』を喜んで輸入品目に加えた。

 同時に『猫加護』の一時発動にも同意してくれた。


ウドン男爵「この『猫加護』……なんか、少し危ないにゃ。うどんより『ねこまんま』食べたくなってきたにゃ」

ソバ男爵「私もだにゃ……蕎麦より『ねこまんま』の気持ちだにゃ……」

マルボロ「そんなお二方に朗報だにゃ!うどんと蕎麦に、この『ねこあげ』を乗せたら……どうなるかにゃ?」


 そして、うどんと蕎麦に『ねこあげ』を乗せるマルボロ。


ウドン男爵「『ねこまんま』より、このうどんを食べたいにゃ!」

ソバ男爵「業腹だが、私もこの蕎麦を猛烈に食べたいにゃ!」

マルボロ「どうぞどうぞ、そのための『猫加護』ですからにゃ!」

ソバ男爵&ウドン男爵「「うまいにゃー!」」


 マルボロの手腕により、麺連邦は『猫加護』の魔の手に堕ちたのだった。


 この結果、ざる蕎麦にショウガという組み合わせは、一気に廃れた。


ソバ男爵「ショウガ子爵……申し訳ない、麺連邦でのショウガ需要が激減……というかゼロになってしまい」

ショウガ子爵「な!それはあまりに勝手ではないか⁉」

ソバ男爵「今年度分の賠償金は、麺連邦としてお支払いをいたしますが?ですが、それ以上の取引は、できかねます」

ショウガ子爵「な……あれほどショウガをありがたがっていた、ソバ男爵のお言葉とは思えませんな……」


 そうして、ショウガ子爵は聖人聖女解放派閥自体からの離脱を決断したのだった。


 王宮にて……。


ネバリオ王「いよいよ、ワサビ子爵が動き出したか」

カレー侯爵「あまり、好ましくない展開ですな?ショウガ子爵が派閥から抜けると、今度はラーメン伯爵への打撃が大きく……豚骨ラーメンには、紅ショウガが欠かせませんからな」

ネバリオ王「さて、どう動いたものか……」


 頭を痛めるネバリオ王であった。


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