第03節 神殿派の不穏な動き ~外出もできないって、辛いよね~
厳しい冬が過ぎ、リュカとレアナは若干ぽっちゃりしていた。
リュカ「しかし、七草粥が懐かしいな……」
レアナ「あら、準備しましょうか?ジャガイモ、人参、玉葱……」
リュカ「それ、カレーの具材!落ち着け、正気を取り戻せ!」
レアナ「だけどリュカ、ちょっと太ったわね……」
リュカ「レアナは相変わらず、スラッとしていて美しいぞ!」
レアナ「――っ!いきなり何を言うのよ!」
レアナは真っ赤になって、リュカをポカポカと叩く。
リュカ「しかし、なんか最近変な気配がしないか?」
レアナ「……そうね、私も少し思ってたけど、気のせいじゃなかったようね」
また、ホログラムの幼女チカが現れた。
チカ「兄くん……どうやら、神殿派が動きを始めたようだな」
リュカ「まあ、聖人認定同意書もナットウ男爵経由で提出したからなぁ」
レアナ「まさか、暗殺されちゃうの⁉」
チカ「またノイズがうるさいな、神殿派が聖人を暗殺するような、愚かな真似をするはずがなかろう?」
リュカ「チカ、毎度のことながら、レアナの発言をノイズ呼ばわりしないで差し上げろください!」
チカ「そ、そうか……しかしノイズをノイズと呼べないのは……」
レアナ「いい加減にしなさいよ!」
チカ「こう、AIの脳に響くのだよ……」
チカがホログラムの頭を抑えて、うずくまる。
リュカ「……ひとまずはもういい。で、俺の暗殺は無いのか?」
チカ「ああ、兄くんはまだ知らないか。聖人認定同意書が通ったぞ、これで正式な聖人だ」
レアナ「聖人を目障りに思う神官だって、絶対いるでしょ?」
チカ「目障りに思っても、さすがに暗殺はできないんだよ」
リュカ「どういうことだ?」
チカ「聖人ともなれば、由緒正しい存在なわけだな?そこで、聖人暗殺が発覚してみろ……神殿派はトカゲの尻尾切りじゃ済まないぞ?神殿の正当性が疑われるだろうな」
レアナ「あいつらが、そんなこと気にするかしら?」
リュカ「まあ、レアナも暗殺されてないな?聖女を辞めたのに」
レアナ「……それも、そうね」
しかし、肝心の疑問は解消していない。
リュカ「じゃあ、神殿派の目的って何だ?」
チカ「まあ、兄くんの身柄確保だろうな……ラーメン伯爵に相談しておくといい」
そうして久々にラーメン伯爵を訪れると、ぽっこりしていたお腹が、嘘のように消えていた。
ラーメン伯爵「君たちか、最近の少し不穏な動きがある件かな?」
リュカ「話が早いです。これは私の身柄確保のためでしょう」
ラーメン伯爵「私もそう睨んでいる。ご不便をおかけするが……外出はお控えいただけないだろうか?」
レアナ「私もかしら?」
ラーメン伯爵「聖女様は聖人様の人質になり得ますので、やはりお控えいただきたいですな」
ラーメン伯爵の表情も苦悶に満ちている。
ラーメン伯爵「可能な限り便宜は図りますよ。食事を含めた買い物は、ヒヤムギ経由でお願いします」
レアナ「ラーメン伯爵のせいだなんて、まったく思ってないわよ」
リュカ「なあ、そんなに神殿ってヤバいのか?」
レアナ「危機感が足りないわよ、リュカ!なんで私が神殿から逃げて、聖女を辞めたと思ってるの?」
リュカ「旅をしたかったから……じゃないのか?」
レアナ「そうね、旅もできないし、自由もない……」
ここに、ラーメン伯爵の提案があった。
ラーメン伯爵「春になったら、カレー侯爵領に行くのがよろしいでしょう」
リュカ「ナットウ男爵領ではなく?」
ラーメン伯爵「ナットウ男爵は、裏の公爵と呼ばれてはいますが、表向きは男爵……神殿派の強行突破もあり得るかと」
レアナ「それじゃ、当分ワサビ子爵領に行くのも無理ね……」
ラーメン伯爵「いくら、聖人聖女解放派閥ナンバーツーとはいえ、やはり爵位が問題ですね」
その言葉に、リュカが引っかかった。
リュカ「っていうか、それじゃラーメン伯爵領も……実は危ないんじゃないか?」
ラーメン伯爵「神殿派中庸派のトップがカツドン伯爵ですからね、伯爵同士で火花を散らす真似をしたら、神殿派も無事ではすまないんですよ。相手が上が出してくれば、こちらも上を出せるんです、ははは」
レアナ「はぁ、貴族ってそういう所が面倒くさいのよね……」
リュカ「まあ、俺はラーメン伯爵邸で筋トレでもするよ、レアナも手伝ってくれないか?」
レアナ「ずるーい、私も筋トレするわよ!」
そうして、外出ができないとはいえ、リュカとレアナは不摂生な生活をせず……元の体型を取り戻したのであった。
筋トレをしていない時間は、ヒヤムギ騎士団長に頼んで、平たい板と、白と黒の丸石を調達してもらった。
リュカとレアナは、なんちゃって囲碁盤の上で、リバーシもどきや五目並べに興じていた。
「囲碁」は……ちょっと難しかった。




