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第26節 ラーメン伯爵の懐刀 ~なんでラーメン伯爵にヒヤムギ?~

 そして、ナットウ男爵の影の数が手薄になった頃、ラーメン伯爵の手のものと思われる騎士が訪れた。


騎士団長らしき男「お探ししましたぞ、聖人様に聖女様!なぜラーメン伯爵の屋敷ではなく、孤児院に……」

リュカ「ラーメン伯爵の悪評が酷かったからな。実際回ってみたが、孤児院運営は酷いものだった」

レアナ「まともな食事も与えられてないじゃない!これでラーメン伯爵を警戒するなってのが無理な話よ!」

騎士団長らしき男「……わかりました。ひとまず我々にご同行いただきたい」


 そうして、馬車にゆられてラーメン伯爵の屋敷に向かう。

 馬車は、それなりに金が掛かっているようだが、ぶっちゃけワサビ子爵の馬車の方がすごい。


騎士団長らしき男「申し遅れました、私は騎士団長のヒヤムギです」

リュカ「なんでラーメン伯爵の騎士団長がヒヤムギなんだよ?」

騎士団長ヒヤムギ「?私は平民上がり故、聖人様と聖女様のお考えは測りかねます」

レアナ「で、私たちはこれからどうなるの?」

騎士団長ヒヤムギ「いえ、ただラーメン伯爵とのご面会の機会をと……」

リュカ「それにしては、護衛がヒヤムギだけとか、ちょっと不用心ではないか?」

騎士団長ヒヤムギ「その点については、我々騎士団はナットウ男爵様の采配に全面的な信頼を置いてます故……ラーメン伯爵も同様です」

レアナ「なんか、聞いてた話とだいぶ違うわね?ねえ、ヒヤムギって冷たい性格なの?」

騎士団長ヒヤムギ「冷たいかどうかは分かりませんが、冷静であれとは教わっております」

リュカ「冷製……あ、もういいわ」


 そしてラーメン伯爵の屋敷に着いたのだが、正直ボロい。むしろラーメン屋の方が立派なほどだ。


騎士団長ヒヤムギ「私だ、聖人様と聖女様をお連れした」

門番「はっ、既にラーメン伯爵は応接室にてお待ちです」

騎士団長ヒヤムギ「私も応接室の前まで付き添います。なに、聖人様と聖女様を害そうという不届き者はこの騎士団、いえ屋敷全体にはおりませんよ!」

レアナ「それにしては、随分住民を冷遇してない?」

リュカ「おい止めろレアナ、それはヒヤムギ騎士団長の責任じゃない」

レアナ「そうだったわね、ごめんなさい」

騎士団長ヒヤムギ「……いえ、構いませんよ。今や住民冷遇と言われても、返す言葉もございません」


 そうして連れられた応接室に入ると、想像より若く、そして痩せた男が待っていた。

 おそらく彼がラーメン伯爵だ、痩せぎすで目の下にクマ、疲労感が漂っている。

 金色の瞳に光はなく、頬はこけ、額の皺が深く刻まれている。

 健康なら輝くだろう金髪の髪は乱れ、白髪混じり。

 どこか中華風味と和風の意匠を含んだ、赤と黒を基調にした正装のコートもくたびれている。

 背は比較的高いが、背筋がわずかに曲がっている。


ラーメン伯爵「お待ちしておりました、聖人様と聖女様。まずは、聖人認定同意書をお預かりしましょう」

リュカ「……わかった。ただ破いたりしたら、その事実は広く伝えるからな」

ラーメン伯爵「まさか、そんな不敬を働くはずがございません。ご心配でしたら私の背後で、いつでも斬れるように構えてください」

レアナ「あのね、私たちはそもそも武装してないでしょ?」

ラーメン伯爵「ヒヤムギ、私の背後に立ち、私の首に剣を突きつけておけ。私が不審な動きをしたら、容赦なく斬り捨てろ」

ヒヤムギ騎士団長「かしこまりました。失礼、ラーメン伯爵」


 そうして、本気で剣を首に突きつけるヒヤムギ。そしてラーメン伯爵は、聖人認定同意書に突然サインを始める。


ラーメン伯爵「さあ、これで……リュカ様は確実に聖人になれるでしょう。こんな危険な地は早急に立ち去ってください。それとも、聖人聖女予算がいくらかご入り用でしょうか?」

レアナ「その前に、どうしてラーメン伯爵領がこんな状態になっているのかを……」

リュカ「オデン子爵は、ラーメン伯爵の味方なんだろ?調べたぞ、国内の小麦の動きを!」


 顔面蒼白……それから土気色になるラーメン伯爵。

 それは、自分の首に剣を突きつけられた時より、遥かに動揺している証だった。


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