愛
「嘘よ…突然すぎる。」
ニコルはセリーヌの突然の死に驚いた。
「誰のせいでもないわ。私はあんたが嫉妬でやったとは思わないわ。」
「やってないに決まってるでしょ。」
彼女の計画だと嫌がらせのつもりで腹痛や頭痛にさせるつもりだった。しかし息を大量に飲み物に吹きかけると飲んだ人は死ぬことを知らなかった。
「そうよ。私は何も悪くないのよ。」
彼女は冷や汗をかいていた。
「ニコル!」
ダミアンが後ろから呼ぶ。
「来てくれないか?2人で話したい。」
彼が彼女を引っ張って二人になれる所に行った。
「やっと2人になれたわね。」
彼女は冷や汗をかきつつも笑っていた。
「確認だが、ニコルがやったわけじゃないよな?」
「私にそんなすべなんてないの。塩と砂糖を見分ける能力で何が出来ると言うの?」
「正直に話してくれ。本当にやってないのか?そうだとしたら俺にも責任がある。」
「何の責任?死んだのは誰かのせいじゃない。私もやってない。もしかして罪悪感を感じてる。」
「そうだ。ここまでの事態に発展するとは思ってなかった。もしかしたらお前が手を出したかもしれなくて。」
彼は少し下を見た。
「安心して。今回のことはあんたが起こした色恋沙汰のせいでもないし、私の嫉妬が引き起こしたことでもない。」
「ニコル。」
暗い表情の彼を彼女は抱きしめる。そんな彼を見て笑っていた。
「ずっとあなたのそばにいるから。」
「こちら外傷もなく事件性はないと言っても良いでしょう。女性はアレルギーを持っていませんし、女性が死亡日に食べていた食べ物ら飲んでいた飲み物には毒性のものは検出されませんでした。」
原因不明の死でセリーヌは死亡したので検死が行われた。しかし解剖で確認しても何も手がかりはなかった。彼女の死の真相を知っているのはニコルだけだった。ニコルははじめて過剰な息を飲み物に吹き込むと死亡するケースがあると知った。
「おかしい。絶対この反応は毒物によるものだと思うが。科学で証明できない何かが原因なのか。」
「私の仕事では非科学的なことを結びつけることは出来ません。」
警察官の中では死に不審に思うものもいた。しばらく真相は闇の中に葬られることになる。
あれから一週間が経って何もなかったかのように日常が戻った。
「ねえ、本当に本見てない?」
「だから見てないわ。自分の部屋掃除してる時になくしたんじゃないの?私も探したけどクレマンの図鑑は見つからなかったわ。」
「おかしい。どこにいったんだ。」
「何の騒ぎ?」
「クレマンが恐竜図鑑失くしたのよ。家の外に持ち出してないならきっと捨てたに違いないわ。」
その図鑑はクレマンが大切にしてる一冊だ。
「バズ、俺の部屋勝手に入って何か持ち出したんじゃないか?」
「僕知らない。」
セバスチャンは否定した。
「この前、勝手に部屋入るの見たわ。」
ニコルが言った。
「バズ、部屋に入って持ち出したんだな。」
「兄ちゃん、本当に知らないんだって!」
「ニコルは嘘つかない。それだけは確実だ。」
クレマンはセバスチャンの部屋を漁りまくった。
「ニコル、クレマンを止めて!」
「何で私が?」
彼女は彼の部屋に行った。
「クレマン、探し物は見つかった?派手にやるとうちの主がうるさいわよ。」
「見つからなかった。」
「あんたが捨てたとも思わないし、セバスチャンがそうするとも思わない。」
「それなら、バズが部屋に入ったのは本当か?」
「本当よ。」
「勝手に部屋に入らないでくれ。」
「鍵を閉めないクレマンにも問題があるわ。」
母親が近づいて言った。
「いつの間に?」
「落ち着いて聞いて。無防備になって何か起きた時誰か助けてくれると思う?」
「僕は困っている人がいたら助ける。」
「面倒なことには関わりたくないと思う人がこの世は多いの。あなたも口ではそう言ってるけど行動に移すかは別ね。例えば警察も呼べる状態でもなく刃物を振り回してる人が身内でもない人をターゲットにして殺そうとしていたら?」
「分からない。」
「そうよね。だからこそ無防備でいてはいけないの。」
「そこまで言う必要あるの?」
「ニコル、花壇の花に肥料をあげてちょうだい。」
「質問に答えてもらってないんだけど。」
「良いから。」
彼女は家の外に行き、花壇の花と植物に水をあげた。
「ん?」
土の中に何かが埋まっているようだった。
「ジョルジュ、スコップない?」
「それならこれを使ってくれ。」
スコップで掘って行く。
「何か宝でも見つかったのか?」
「いや、何も。」
彼女が掘り出したものは本だった。名前も分からない木の下に埋まっていた。埋まっていたはずなのに土の汚れが残っていなかった。さらに開いてみると白紙のページが続いていた。
「何か見つかったのか?」
「特に面白いものじゃないわ。ただのゴミよ。」
「そうか。それは残念だったな。」
彼女はそれを自分の部屋にいれた。
「危ない。それにしてもクレマンの本どうなったのかしら?仮に誰かに部屋に入られてこの本のことを知られたらかなりまずい。」
次は自分にそのことが起きるのではないか彼女は不安だった。それから彼女はより戸締まりを厳重にした。
「誰かいるの?」
しかし誰かに見られてる感じはおさまることはなかった。その夜落ち着かず机に座って掘り出した本を読んだ。試しに本を洗うと水を全て跳ね返し汚れだけが落ちた。どんどんページを開いて行く。するとわずかながら絵に描いてるページが破れていた。
「何で?」
そこには財布のようなものを持ってる人が描かれていた。どんなものかも分からず彼女は本を食べた。本はいちごを彷彿させる匂いを口の中で放ちとても甘かった。あっという間に本は跡形もなくなった。
「何だか甘い物でも食べたくなった。」
彼女は誰もいないキッチンで甘い物を探したが何もなかった。ものさみしい思いを抱えながら彼女は部屋に戻って行った。
次の日の昼にまた変化が起きた。
「昨日買ったばかりのバルサミコ酢がないわ。」
「今度はヴィルジニーがなくしものをしたわけ?」
ニコルが言った。
「昨日買ったはずなのよ。」
彼女はまた部屋に戻った。すると部屋の机の上にはバルサミコ酢が置いてあった。
「うそよ…」
「ニコル、どうしたの?」
ヴィルジニーが声を聞いて駆けつけた。
「何でもないの。窓に何かぶつかった感じだからびっくりしただけよ。」
「それなら良かったわ。何かとんでもないことでも起きたのかと思ったわ。」
ヴィルジニーはニコルを抱きしめる。
「探し物はしなくて良いの?」
「もう良いわ。これからお菓子作るつもりだから。」
彼女はもう一度庭に行って植物を手入れするふりをした。そしてヴィルジニーのところに駆けつけた。
「ヴィルジニー!見つかった!」
バルサミコ酢を彼女に渡した。
「ありがとう。どこに落ちてたの?」
「庭のはしの所に落ちてたわ。きっと落としてそこまで転がったのよ。割れてないから良かったわね。」
「今お菓子作ってるけど他に作って欲しいものとかあるかしら?」
「どうしたの?突然。」
「作りたい気分になったのよ。」
「それならベル・エレーヌを作って。」
「分かったわ。」
「スーパーに行って来る。」
彼女は自転車に乗り目的地まで行った。店内はこじんまりとしていた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
レジカウンターには50代くらいの女性が座っていた。ニコルは彼女の目の前でヌガーを落とした。そしてそれを拾ってポケットにしまった。
「どこに行くんだ?」
「探してたものがなかったからそのまま帰るの。これから彼氏に会うつもりよ。」
「楽しそうね。」
「私もこの仕事サボってデートでもしたいわね。今ジムに行ってて彼が来てくれないのよ。」
「それは寂しいですね。」
「この前とかヌガーを落としては戻さない客とかがいたのよ。」
彼女は背筋が凍りそうだった。
「それはいつのこと?」
「そうね。一昨日のことよ。その客は最近ここに来ては棚にぶつかって商品戻さないの。人様のお店に入って店を荒らすなんて論外ね。次来たら出禁にするわ。」
彼女のことではなく少し安心した。
「それは良かった。」
「何が良かったの?」
「この店の邪魔者がいなくなって。」
「店員でもないのにこの店の心配?変な人ね。このあとデートでしょ。楽しんで来な。」
デートなどその日にはない。その場限りの嘘を店員の女性についた。
「ずいぶん戻って来るのがはやいようね。」
「ヌガーを買ったのよ。唐突に食べたくなって。」
「ベル・エレーヌもヌガーも食べるのね。」
彼女は先にヌガーを食べた。口には少しばかりの罪の味がした。人やお店のものを盗むのは罪だと分かってる。これはただの能力の確認のためのチャレンジに過ぎないと自分に言い聞かせた。
「本当に甘い物をよく食べるのね。」
「昔からよ。だけど大人になってその気持ちがより強くなったの。」
ベル・エレーヌを食べながら言った。
「人生は苦しいことがやって来る。だから自ら苦いものを食べて苦しい思いなんてする必要はない。どうせ理不尽はたくさん降ってくるんだから。それなら嫌なものを避けて甘いものばかりを食べる。これが私の生き方よ。」
「相変わらずね。自分磨きとかも悪くないけど。」
「私は甘いものを人生でたくさん食べられるように自分磨きをする。それがニコルの生き方。現世さえ良ければ良い。次がある保証なんてどこにもないんだから。その為にはどんなことだってするわ。」
彼女はセバスチャンのお菓子も一緒に食べた。
それからたくさんの本が家に届くようになった。開いては食べようとしていた。しかし2冊を除いては本当に何もない白紙の本だった。もちろん白紙の本は何も能力などが発動されない。
「ニコル、花壇に水をあげて。」
「分かってるわ。」
能力を身につけてもあの庭の植物に水を与えたり肥料を与える仕事がなくなるわけではなかった。彼女は水をあげては無もない木を見つめる日々が続いた。
「そうだ。この2つの絵の描いてる本まだ食べてなかった。」
1つはしっかりと保管されていた。しかしもう一冊が見つからなかった。どこを探してもそれに該当する本が見当たらなかった。
「嘘よ。何で私の本までなくなるの?」
食べれる本は彼女そのものだった。




