本屋の女
「『探し物』って本を探してたのよ。」
女性はニコルの方を向いて答えた。彼女は40代くらいの女性だった。
「再販予定あると良いわね。確かその本買った人ここで見たわ。」
「よく来るの?初めて見る顔ね。」
「この前たまたま寄ったのよ。同居人が本が大好きで頼まれてここに来たの。私はニコルよ。」
「私はセリーヌよ。」
2人は握手をした。
「ここで何か色恋沙汰とかないのかしら?通ってたら何かしらあると思うけど。」
「あるわ。ここで素敵な男性と会ったわ。」
「それは良かったわね。どうだった?」
「本をこよなく愛する男性よ。とても優しい。ただ彼女がいるのが残念ね。その女性もはやく彼のこと解放してくれれば良いのにって思うの。」
「そうね。縛る恋には未来なんてないわね。セリーヌの言う通りね。その男性とどこまでしたの?」
「一緒に寝たり、映画見たりしたわ。」
「ずいぶん踏み込んだわね。」
「彼のこと愛してるのよ。」
「それはずいぶんつらい恋ね。」
「カフェで話さないかしら?」
彼女は会計に向かった。
「これお願いします。」
「16.5ユーロです。」
お金を払った。
「いつもありがとう。」
店主は2人に笑顔を向けた。セリーヌがいるからもしれない。
「本当に常連なのね。」
「ここが私の行きつけだから。」
2人はカフェのテラスでくつろいだ。
「エスプレッソ1つを私に、カフェオレ1つ彼女にお願いします。」
「ここあなたも来るのね。」
ダミアンがカフェに入った。
「いつもので。」
「ダミアン、奇遇だわ。こっち座って。」
「私も奇遇だわ。」
「ニコル、ダミアンのこと知ってるの?」
「うん。トモダチだから。ダミアン、本屋で私達知り合ったの。一緒にコーヒーでもしよう。」
彼はとてもぎこちない感じだった。
「セリーヌとは本屋で知り合ったのよね?」
「そうだ。」
「もっと堂々と話してよ。」
セリーヌが言った。
「私達愛し合ってるんだから。そうでしょ?」
「そうだな。」
「ニコルは誰かと付き合ってるの?」
「どう見える?」
「この感じはいるわね。どんな男性?それともレズビアン?」
「レズビアンではないけど、そう言う恋も悪くないわ。私も本が好きな男性と付き合ってるの。だけど私そんなに本が好きじゃないの。唯一彼と合わないと思うところね。」
「それは残念ね。付き合ってたらちょっとの差異くらいあるものね。」
ニコルはセリーヌのエスプレッソに遠くから息を吹きかけた。息は水分の表面に触れる。触れると揺れて行く。かすかにセリーヌの顔が変形するように映っていた。
「そのエスプレッソ美味しいかしら?」
「ここのお気に入りよ。エスプレッソと彼と本の話するのが最高な時間なのよ。この前はゾラの居酒屋について話したのよ。」
「目も当てられない労働者の暴力や依存などを書いてるのがとても興味深い作品だな。」
「何だかよく分からないけど楽しそうね。映画だったらぜひ見てみたいわね。」
ニコルはコーヒーカップを手に取って飲んだ。ずっとセリーヌのエスプレッソを見た。談笑を1時間楽しんでいた。
「セリーヌ、どうしたの?」
「何だかお腹が痛くて。」
セリーヌがお腹をおさえていた。
「大丈夫よ。これくらいで倒れたりしないんだから。」
「トイレ誰か入ってるみたい。」
「それなら俺の家のトイレまで連れてくよ。」
「ダミアン、私が本屋に連れて行くわ。」
「どちらでも良いからはやく。トイレに行きたい。」
「ここからだと本屋が近いわ。あんたの家はその後にいきましょう。」
本屋に着いた。
「ステファン、この人がトイレ使いたんだ。頼む。」
「分かった。」
本屋のトイレにセリーヌは駆けつけた。ニコルとダミアンは見つめ合う。
「怒ってるのか?」
「何のこと?怒ってなんかいないわ。セリーヌとダミアンが一緒にいるの見たから気になって見に行ったの。」
「怒らせてたらすまない。」
「何言ってるの?私は怒ってなんかいないわ。だけど2人の反応を見てみたかったの。私は友達だなんて嘘までついたわね。その方があなたも都合が良いでしょ?」
「皮肉か?」
「皮肉?何のことかしら?思ったことをそのまま話しただけよ。セリーヌとはどう?楽しかった?」
「それは答えられない。」
「普段は堂々としてるのにこういう時は変な人ね。オープンになれば良いのに。」
彼には少しばかりの罪悪感があった。
「それでどうだったの?彼女綺麗でしょ?私が男性ならあんたみたいに魅了されたはずよ。だけど残念ね。せっかく仲良くなれたのにお腹を壊しちゃって。」
「まさか君が飲み物に何か入れたのか?」
「誰もあの時席を外してたのに私を疑うの?私は何もしてないわ。」
「もしかして本の能力か?」
「知らないわ。きっと何かストレスになってお腹痛くなったのよ。あなたを手に入れたくても手に入らない思いがストレスになってたかもね。」
ニコルはにやついた。
「変なことを言うのはやめてくれ。」
「きっとそうよ。」
「お待たせ。何話してたの?」
セリーヌが戻って来た。
「セリーヌが綺麗って話よ。お腹は大丈夫?」
「さっきよりかはマシだけどまだ違和感がある感じね。」
「今日はよく休んだ方が良いわ。」
「そうね。そうするしかないわね。」
「リンゴのコンポートでも作ろうかしら?」
「別に良いのよ。立てないほどじゃないし。」
3人はそのまま帰宅した。そして日が過ぎた。その日は休日だった。
「最近ダミアンとはどうなの?」
「他の女と会ってるようなの。」
「スキャンダルね。そう言うの面白そうね。」
「ヴィルジニー、あんたはパパラッチか何か?」
ニコルはテーブルに置いてあるお菓子を食べながら言った。
「彼を解放して新しい恋をするのも1つの選択ね。男性は彼だけじゃないわ。」
「大丈夫よ。最後は私の所に戻ってくるから。」
「ずいぶん自信満々ね。本心なのかしら?それとも人が変わった?」
「どうやら情事にまで踏み込んだようだけどその程度の関係よ。だから何って感じね。」
「ずっとあんたのこと見てれば分かるわ。強がってるんでしょ。私の前ではそう言うところ隠す必要なんとないわ。もちろん旦那や息子達にはあんたの恋のことをベラベラ話さないわ。話したければ話せば良いけど。」
「ママ、サッカーボールどこにある?」
「邪魔だったから、倉庫の右側に閉まっといたわ。」
「彼は私から離れられないそれだけのことよ。」
「嫉妬と過信があんたの中で同居してるのはよく分かった。」
「ママ、レモネード飲みたい。」
「私も。」
ニコルも便乗した。2人は彼女が作るレモネードを飲んだ。
「そうだ。今度友達呼んでお茶会なんてどうかしら?その友達は本屋で知り合ったの。本が好きだからヴィルジニー、あんたと仲良くなれるわ。」
「本が好きな人と仲良くなれるわけではないわ。本にも一つ一つ性格があるの。好みが違えば話しが合わないはずよ。」
「お茶会は駄目?」
「良いわね。」
「決まりね。セリーヌと一回電話して見るわ。」
ニコルはセリーヌに電話をした。
「もしもし。」
「セリーヌ、明日お茶会やるけど来ないかしら?」
「素敵ね。参加するわ。」
「色んなお茶用意するわ。何が良い?」
「モリンガのお茶とかルイボスティ飲みたいわ。」
「分かった。」
「またね。楽しみに待ってる。」
「こっちこそ楽しみにしてる。またね。」
電話をきった。
「ちょっと明日なんて急すぎるよ。ちょうど予定がないから良いけど。」
「特別な招待客もいるの。まだ会わせてなかったわね。」
「特別な招待客?あんたはぞろぞろ呼ぶわね。」
お茶会はシャンボン家のテラスで開かれることになった。
「ようこそ。」
「素敵なところね。緑も花も手入れがされてて洗練とされてるわね。ダミアンも連れてきたかったわ。」
セリーヌ感激していた。
「褒めすぎよ。そんなにすごい家じゃないわ。だけどニコルが水をあげてくれるからよく植物が育つの。」
「あの木は何?何だか見たことありそうでないような木ね。」
セリーヌは名前も分からない木を指さした。
「特に名前なんてどうでも良いの。新種の木で研究になると思ってる?私はそんなことはしないわ。木はそんなことを望んでないのよ。」
「ヴィルジニーって優しいね。」
「優しさじゃない。私の信念よ。幸福を外界からの物さしで決められない。あの木は水をあげて手入れする程度がちょうど良いの。」
「この木は花咲いたりするのかしら?」
「時々花を咲かせるわ。だいたい5月くらいかしら。花の香りは果物のような香りの時もあれば様々よ。」
「スズランも植えてるんだ。大好きな花よ。」
「フランスで生まれてたら誰でも馴染みのある花ね。メーデーの日にあげようかしら?うちにはたくさんあるの。」
「その気持ちだけ頂くわ。貰える人が決まってるんだから。私の愛する人から幸福を貰うのよ。」
「そうだ。そろそろ招待客が来るわ。お茶を作るから待ってて。」
ニコルはお茶を作った。キッチンでは一人である1つの少し水分が残ったティーカップにずっと息を吹きかけていた。息でカップを割ろうとする勢いだった。
「何してるんだ?」
ジョルジュがやって来た。
「セバスチャンとクレマンとバスケしてたんじゃないの?」
「忘れ物をして3人で戻って来たんだ。それで何してるんだ?」
「お茶会の準備よ。お茶を作ってるの。」
「そうか。邪魔したようだな。」
「バスケ楽しんで来て。」
ジョルジュは息子達を車に乗せて出かけた。
「お待たせ。お茶が出来上がったわ。」
ニコルは一人ずつにお茶を入れた。
「セリーヌはこのカップよ。ヴィルジニーはこれね。」
「ダミアン!」
「セリーヌ…」
「どう言うこと?まさか。」
ヴィルジニーが聞いた。二コルは彼女の足を踏んだ。そして目で何かを伝えた。
「2人はどう言う関係なの?」
「ダミアンは私の彼氏よ。」
ニコルの目の前で彼女はダミアンとキスをした。しばらく4人で話をしていた。本の話ばかりになった。
「セリーヌ、顔色悪いけど大丈夫?」
ヴィルジニーが彼女に聞いた。
「何だかお腹が痛いの。」
「また同じ症状。」
必死になってお腹をおさえていた。
「何だか頭も痛い。」
あの時よりはるかに思い症状を発症した。
「一回横になった方が良いわ。」
全員で彼女をソファーで寝かせた。
「大丈夫よ。きっと良くなるわ。」
「セリーヌ、お腹痛い時はコンポートでも食べて。」
「ありがとう。」
ニコルが予め作ったものを口に運んだ。数分するとかなり症状が重くなった。
「嘘よ。」
「救急車を呼べ!」
彼女は救急車で運ばれた。
「はやく病院に連れてください。すごい苦しそうなんです。」
運ばれた病院まで3人で駆けつけた。
「非常に残念ですが、セリーヌ・モローさんは亡くなられました。」
ニコルは驚いて呆然とした。病院の空気はさらに冷たくなった。




