表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

苦痛

「何で私まで腹痛になったのかしら?」

ヴィルジニーが言った。

「ヒステリックになってるからじゃないの?」

「そんなことはないわ。あんたを受け入れて時点で私はだいぶ心が広いと思うわ。食当たりでもない。それにお腹を痛めない食事をしてるからそんなはずないわ。」

「もうそんなこと気にしなければ良いじゃん。」

「大きな病気になって死ぬなんて嫌よ。」

「年を取るってそう言うものだと思うわ。」

「見て。少しあの木大きくなったわ。」

ヴィルジニーが木の方を指差した。

「何の木か分からないの?」

「分かんなくても良い。育ってることに価値があるんだから。」

「ほとんど水をあげてるの私だけど。」

「それはありがとう。水をあげたりちゃんと肥料をあげてるから育ちが良いわ。病気とかにもなってないし。」

「そう言えばあの木だけ何で剪定とかしないの?いつも業者には他の木は剪定して貰ってるのよ。」

「奇跡の木だからよ。」

「どこかで聞いたことある言い回しね。」

「モリンガのことでしょ?私にとってはあの木も奇跡の木なのよ。水と肥料で何とかなる天がくれたプレゼント。」

「そんな大事な木なのね。」

「食べるか?」

ジョルジュが市販のクッキーをニコルにあげた。

「美味しそう。」

彼女は誰よりも甘いものが好きだ。どの時間帯でも甘いものを食べる。

「本当によく食べるな。」

「私はダイエットとは無縁なのよ。砂糖がたくさん入ってようがそれが楽しい人生ならどうでも良いでしょ。」

「あんたがそう言うなら干渉はしないわ。」

ヴィルジニーは洗い物をしながら言った。

「息子達よりよく食べるな。まるで大きな子供を養ってる気分だな。」

「息子達がこんな感じならどう?」

ニコルは二人に聞いた。

「俺はちゃんと自立して欲しいと思う。」

「私もよ。」

「それならそれが女の子だとしたら?」

ヴィルジニーは洗い物をやめた。

「考えたこともないわ。私なら可愛いと思ってしまうわね。」

「え?それ違いがあるの?」

「なんでもないわ。やっぱり自立して欲しいと思うの。こんなつまらない話やめましょ。」

彼女は不機嫌そうに出た。ジョルジュも数秒間ニコルを見てその場を離れた。

「何なのかしら?あの2人。」

クレマンがやって来た。

「そう言えば僕の虫眼鏡返して欲しい。てんとう虫の観察をしたいんだ。」

彼とは何回もこんなやり取りが続いていた。

「虫眼鏡そんなに借りて何してるんだ?」

「理由なんて特にないの。私の心が借りるべきって言ってるの。」

「観察もしないで。」

「道具は使用だけが目的だと思ってる?私にとってつかの間の癒しなのよ。」

「ニコルは変だね。」

「そう言えばあれからあんたも腹痛になった?」

「僕は大丈夫だよ。セバスチャンはそんなにストレスを感じるタイプじゃないと思うから変だと思うんだ。」

「ストレスは本人にしか分からないわ。ストレスないように過ごしてるようでも気がつかないことがストレスになることがあるかもね。私はストレスはすぐ発散するタイプだからそう言う症状にはなりにくいけど。中学校は楽しい?」

「ミシェルとファビアンとかがいるから毎日楽しいよ。学校終わった後も公園でサッカーとかランニングしたり、噴水で遊んだり。」

「楽しそうで何よりね。勉強とか面倒臭いでしょ?」

「勉強は楽しいよ。」

「勉強は一生ついてくるものよ。昔から嫌いだけどこの年になるともっと嫌いになるわ。」

「新しいことが嫌いなの?保守的なの?」

「そんなことはないわ。怠けてた方が楽よ。私の理想は怠けて金持ちになることよ。」

「それで裁判になっちゃったね。」

「それは余計よ。」

クレマンが彼女を見て笑った。

「勉強ってインテリになる為のものなのかな?」

「そんなの私に聞かないで。」

「勉強は生きる為にするのよ。勉強しなければ生きれないように世の中は回ってるのよ。ごく一部抜け道を探せる人間もいるけど。」

ヴィルジニーが話に入った。

「感情や野心だけで何とか出来ないの。特に法律なんてそうね。」

ニコルは彼女からお菓子を貰って食べた。

「法廷では感情なんて通じるものではないの。覚えておきなさい。」

クレマンは勉強部屋に戻った。


数日が経ってニコルは手に入れた能力であることが分かった。相手に腹痛や頭痛などを与える能力は相手の飲むことだけが条件ではなかった。彼女が飲み物に息を吹きかけても同じような症状を起こすことが出来る。さらに吹きかける息のスピードによって症状の重さが変わってくる。かなり速いスピードだと症状が重くなるケースがあった。彼女はその能力を自分が嫌だと思った人に使うようになった。

「ダミアンにだけは話そうかしら。」

彼だけには話に行こうとした。

「ダミアン、今から会える?」

「悪いけど大事な商談がある。チャンスなんだ。」

「本のこと話したいの。」

「誰かに聞かれると不味い。後でにしてくれ。」

本のことを直接話したかったがその日は話せなかった。ある日公園でランニングしてる途中に本屋を見つけた。そこにはダミアンがいた。本のことを話しにその本屋に走って向かおうとした。するとある一人の女性がダミアンの方に近づく。

「あの女は?」

彼女と彼はキスをした。お互い腰を触って行く。恋のコミュニケーションを交わしていた。

「誰よ。あの女!」

彼女は怒りがこみ上げた。

「私がいるのに。」

その時ヴィルジニーの言葉を思い出した。人生は感情だけでどうにかならないこともあると言うことを。

「そうね。まあ良いわ。」

ダミアンがある女性と別れると本を持ってどこかに行った。

「ダミアン。」

「ニコル、ばったり会うなんて奇遇だな。」

「私もランニング中にこうやって会うなんて思いもしなかったわ。お腹すいたからビストロでも行かないかしら?」

「良いね。行こう。」

ビストロで料理が来るのを待ちながら会話を交わした。

「昨日言ってた本の話って何だ?」 

「一緒に見た本を食べたの。それでどんな能力か分かった。あの本は砂糖と塩を味見にしないで見分ける能力よ。あっても仕方ない能力でがっかりした。」

「そんなことで電話したんだな。」

「くだらないことも共有したいの。商談だってダミアン以外にはくだらないことよ。他人事ね。」

「早速その能力は役に立ったか?」

「まさか役に立つことなんてないわ。他にも能力が見つかったらあんただけには話すつもりだわ。」

「俺が誰かに話したら?」

「私の能力でどこでも追いかけるわ。まだ速く走れる能力残ってるのよ。スピードは落ちてしまったけど。服を作る能力は今も健在よ。」

「何か俺に作るか?」

「また訴状が出るでしょうね。」

ワインを飲みながら笑い合った。

「私のこと愛してる?」

「愛してるよ。この上なく愛してる。」

「愛してるわ。」

2人は軽くキスをした。

「この料理香りが好みじゃないな。」

「そうかしら?私は好きよ。それなら私が食べようかしら?」

「別に良いんだ。俺が全部食べる。」

「今日は何してたの?」

「本屋に行ってた。」

「どこの本屋かしら?」

「大通りの花屋の隣にある本屋だ。」

「相変わらず本が好きなのね。」

彼女は彼をじっと見つめた。

「そんなに見つめてどうしたんだ?」

「本のこと考えてるんじゃないかって思って。」

「本で小説を見つけたんだ。この辺に住む無名作家の作品だ。」

「見せて。」

タイトルは「探し物」と言う本だった。

「そんなページ数のない本ね。」

「何となく買ったんだ。他には南オセチア紛争についての本も買った。」

「ヴィルジニーが読んだら一日で読み終わりそうな小説ね。」

彼らは本の虫だ。

「読みたいなら貸してやる。」

「それは楽しみね。」

2人はたくさん話をしてビストロから出た。

「今度は家で一緒に飲まないかしら?」

その日はたくさんのワインやカクテルを飲んだ。


「ようこそシャンボン家へ。」

シャンボン家では犬を飼うことになった。犬種はマノリアだ。

「名前はゴリアテにしよう。」

「ゴリアテ。」

犬は名前を呼ばれると皆の元に来た。家族の一員として、家族と言う共同体として馴染んだ。

「犬飼うなんて聞いてないわ。」

「話したはずよ。」

「聞いてないわ。」

ニコルは犬があまり好きではなかった。同じ空間にいると落ち着かない感じがした。

「あまり犬好きじゃないの。」

「大丈夫だわ。ちゃんと暮らせるようにしつけはするわ。それにクレマンもセバスチャンも喜んでるのよ。」

「ゴリアテ、こっちに来て。」

「兄ちゃんばかりずるい!」

本当に2人は楽しそうだった。

「ゴリアテは何歳?」

「5歳よ。雄犬よ。里親として迎え入れたの。酷いことに元々飼ってた飼い主が捨てたのよ。良い?同じトラウマをゴリアテに与えちゃ駄目よ。分かった?」

「うん、大切にする。」

「僕も。」

2人は優しくゴリアテを撫でた。警戒心の強い犬のはずだかシャンボン家の人達には警戒心を出さなかった。

「宅配便です。」

宅配業者にはとても警戒心を示した。

「ゴリアテ、怪しい人ではないわ。」

「犬の吠える声がうるさいんだけど。」

「ニコルが犬好きじゃないのは知らなかった。すまなかった。」

ジョルジュが彼女に言った。

「ちゃんとしつけしておいてね。私の部屋とかに入ったら本当に嫌だから。」

「分かったよ。」

「ヴィルジニー、何が届いたの?」

「オーガニックドッグフードよ。犬にも有機の物じゃないと。」

彼女は徹底していた。

「ジョルジュ、オプス・ミュチュエルの保険プランの手続しといて。」

「分かった。」

「何それ?」

「ゴリアテに何かあった時の保険よ。オンラインで手続きできるの。」

「犬も選べたら良いのにね。」

「そうね。」

「もうこっちに入って来ないで。分かった?入って来ないで。」

ゴリアテはニコルのこともとても気にいっていた。彼女があからさまに距離を置いても彼は彼女が好きだった。

「ゴリアテ、ニコルは部屋に入って欲しくないの。入らないようにして。」

クレマンが優しく彼に言った。

5日後さらにゴリアテはシャンボン家に馴染んだ。

「どこ行くの?」

「本屋に行ってくる。」

「本が嫌いなあんたが?」

「ダミアンが本が好きだから適当に買ってプレゼントするのよ。あんたも彼もジョルジュも本の虫ね。」

そしてニコルも本の虫だ。

「彼氏の為ね。」

彼女はランニングをしながら本屋に向かった。その日は雲が曇っていて今にも雨が降りそうな感じだった。そして本屋の中に入った。本屋もあの時彼女が見た本屋と比べて店内が薄暗い感じだった。店内を見渡すとダミアンの浮気相手の女性が本を探していた。

「何探してるのかしら?」

ニコルは女性に話しかけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ