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調理



ヴィルジニー達がヴァカンスから帰って来た。

「ヴァカンスから帰って楽しそうね。パーティーも楽しかったわ。」

「ちょっと、勝手にパーティー開くのは困るわ。」

「この家で開いたとは言ってないわ。ランニング中に知り合った人の家のパーティーに参加したのよ。ランニング好きのパーティーよ。」

「そうなのね。楽しそうで何よりね。そうだ。ワインを買ってきたから飲みましょう。」

「僕も飲みたい!」

「子供はブドウジュースよ。まだ選挙権も手に入る年齢じゃないでしょ。」

「大人だけ飲むなんて不平等だよ。」

「そう言う問題じゃないの。子供はアルコールの毒性が大人より高いの。子供のうちに腎機能障害障害や脳の細胞の損傷になったら取り返しがつかなくなるの。」

「そうだ。選挙権もお酒ももう少し先だな。」

「平等には限界があるの。覚えておきなさい。」

「自由平等博愛なのに?」

子供の時も制約は多い。酒は大人になったた時の特権。生きる残ることが出来ればその特権を享受することが出来る。どこにでもいるような人だろうと犯罪者だろうと。

「このロゼ悪くないわ。重さもしつこくない感じだし。」

「普段私のことこだわり強いとかあんたは言うけどこう言う時に役に立つのよ。」

「それはどうも。」

「良いところも悪いところもあんたのことよく見えるんだから。」

2人はワインをどんどん飲んで行く。目の前の植物がいつもと変わらず伸びている。

「休暇中、ちゃんと手入れしてたようね。」

「誰かさんが水やりちゃんとやれって毎日言うからね。」

「さあ、そんなうるさい人どこにいるかしら。それでパーティーで何かロマンスでもあったの?」

「趣味がよく合う男性よ。運動好きで話しがのく弾むわ。」

「写真とかあるの?」

「あら、ジョルジュじゃ物足りないの?」

「あんたがどんな相手を好きになるか気になっただけよ。」

ダミアンの写真を見せた。

「パーティーの写真じゃないけど彼のプロフィール写真よ。唯一趣味が違うと言えば読書が好きな所ね。」

「それならうちの本1つ貸してみたらどう?哲学とか自己啓発本もたくさん置いてるのよ。」

ヴィルジニーが言った。

「まさに好きそうなジャンルね。気が向いたら貸してみるわ。」

「普段はどんな本を読むの?あんたあまり本のイメージないのよ。」

「私は映画見てる方が良いわ。本はその世界に入り込める感じがしない。」

「それが分かるともっと本が面白くなるわ。本は世界よ。入り込みたい世界もあれば入り込みたくない世界もある。人間が書いてる限りはそうね。」

「AIだって文章を書くわ。人間みたいに思考することはあるわ。」

「人工知能が書くものは生きてる文章ではないし、そこには世界なんてないの。人間は合理だけで動かないの。人間だからこそ感情や哲学と言うものを持つの。」

「それならAIが人間と同じように感情を持てたら彼らの書く文章はどうなるの?私には人間が書く文章もAIが書く文章も同じよ。」

「依存には何も生まれないのよ。」

「まるで地動説を否定するような人達と同じね。新しい論説や発明品や文明が登場すると受け入れられない。まさにヴィルジニーね。」

ニコルが言った。保守的な考えと改革的な考えは心の中で同居する。

「私は良いものは良いもの、批判が必要なものは批判するスタンスで生きてるの。それにあの時代の人達と現代を生きる私を一緒にするのは違うわ。私は情報を色々分析したうえで言ってるの。人工知能によってたくさんのエネルギーが消費されてるし、データーセンターの装置の冷却にたくさんの水が使われてるのよ。このままだと資源が枯渇する未来があるわ。」

「人間と同じじゃん。環境汚染とか起こしてるのは人間。そのうち彼らにも差別的なAI、共産主義者のAIとかが出てきそうね。」

ニコルはグラスのロゼワインをすべて飲んだ。

「そうだ。せっかくだから料理作って見ても良いかしら?」

ニコルはキッチンに向かいながら言った。 

「ニコル、料理は俺達しかしてないのにいきなりどうしたんだ?」

ジョルジュが彼女の後ろ姿を見て言った。

「私の腕を確かめたいの。」

「最近になってあんたは突発的に何かをしたがるようになったわね。別に良いわ。好きなものを作ってみて。」

「レシピ本とかある?」

「これでも見たら?」

レシピを手に取ってキッチンに向かう。

「まずはじゃがいもの皮を剥くのね。」

「じゃがいもはちゃんと芽も取るのよ。」

「そんなの知ってるわ。セバスチャンとクレマンよりかは料理したことあるんだから。」

「よく料理が出来るのね。それは楽しみだわ。」

ヴィルジニーはそう言いながら部屋の片付けをした。

「ニコル、何作ってるの?」

「料理作ってるのはじめて見た。」

クレマンとセバスチャンが声をかけた。

「出来てからのお楽しみね。」

しばらくすると料理ができるはずだったが…

「何この焦げ臭い料理は!」

とても料理とは言えない焦げたものだった。

「何作ってたんだ?」

ジョルジュがきいた。

「これはグラタンドーフィノワよ。」

「酷くこげてて分からなかったな。」

「こんなに焦げたのははじめてね。ニコル、作ったからお腹すいたでしょ。何食べたいかしら?」

「牛肉の赤ワイン煮込みを食べたい。」

「私達、肉は鶏肉だけなの。だけどあんたはヴァカンス中やることやってくれたから特別よ。」

彼女はいつもよりたくさんご飯を食べた。


それからもいつものように一週間が過ぎ裁判の出廷の日になった。

「今日、裁判があるのに何ずっと寝てるの!」

「裁判なら無効になってるはずよ。」

「欠席は欠席判決になるのよ。原告の言い分が全て通るようになるの。」

「だから問題ないよ。ある方法で無効にしたのよ。」

「今回は有名デザイナーの知的財産権のケースよ。あんたは何も持ってないよ高確率で欠席判決になる。変な意地を張らないで冷静に考えて。」

「そこまで言わなくても良いでしょ。」

「そうよ。スラップ訴訟とかじゃない限り出廷しないのは不味いから。相手はあんたのことを脅したりとか脅迫してるわけではないのよ。」

「私からしたらそう言うふうにしか見えないけど。」

それでも彼女は出廷しなかった。しかし不思議なことが起きた。その日訴状を出したデザイナーは交通事故でなくなり、原告も被告も欠席の状態になった。さらにデザイナーは遺言を書いていないのでさらに混乱を招くことになった。無効になったわけではなかったが原告の遺言がない為知的財産の権利の相続人を誰にするかで揉めていた。他の裁判では原告側の態度が急変して和解することになった。あり得ないことがたくさん起きた。


「やっと1つの訴状はなかったことになったわ。」

ニコルはダミアンとカフェにいた。

「それは良かったな。何事も知らないと不味いことはある。この世界は知識の戦争で出来てる。知識を得てちゃんと行使できるものこそが有利になる仕組みだ。」

「堕落はどう思う?」

「何も考えない堕落には何も生まれないな。」

「それなら堕落を得る為にどうするかって話ね。私は禁欲こそ何も生まれないと思うわ。生まれるとしたら堕落以上に恐ろしい悪魔を生み出すことね。」

「悪魔?君はカトリックか?」

「私は無神論よ。宗教の話は嫌いよ。して来ないで。人間死んだらどうなるかなんて分かるわけないんだから。」

「悪かった。禁欲は堕落以上に恐ろしいか。」

「堕落は元々潜在的に動物が持ち合わせてるものよ。人間が定義した概念の1つ。禁欲は人間が作り出したもの。」

「そうだな。死生観も人間が生み出したものだな。人間には知らないことへの不安や恐怖を抱えて生きる宿命があるからな。死と生は知らないことの連続。そこに導く思想があるならどうだ?負の感情か解放と思うだろう。」

「結果として負の感情を巻き起こしてるのよ。堕落の方が良いわ。堕落の中には嫌なことをいかに避けて生きる堕落もある。決して悪いものじゃないわ。私は嫌なことを避けて金持ちになりたいわ。」

「君はよく考えるのに、お金への執着はすごいね。君のそう言う所嫌いじゃないけどな。」

ダミアンが彼女を抱きしめた。彼らは抱き合う時は思想の摩擦を忘れる。

「香水、肩にするんだね。今まで見た女性の中で君が初めてだ。」

「新鮮な感覚を楽しませてあげる。」

キスとは音のない言葉の交換。愛の言葉を音のない空気で2人は交換する。

「香水はコミニュケーションよ。」

「そうだな。君の香水と俺の香水は批判し合わないな。」

2人の香水の相性はとても良い。

「批判は言葉だけで良いのよ。香水で摩擦が起きるようなら今こうしてないから。」

お互いを見つめては強く抱きしめ合う。服が床に落ちることを忘れるくらい。

「ダミアン、結構女性経験あるのね。何だかムカつくわ。」

「嫉妬か?」

「嫉妬じゃなくて感想よ。」

「君がそう言うなら、そう言うことにしておくよ。」

彼は大きく笑って彼女に言った。彼女は彼に背を向けた。

「香水はあなただけの匂いにして。」

「俺はこの香水しかすることない。」

「分かったようね。」

「香水はどこで買ったんだ?」

「香水はヴィルジニーが持ってるの使ってるわ。ヴィルジニーは物はそんな持たないと言ってるけど香水は例外よ。香水は棚に100以上はあるわ。持ってるのはフランスだけじゃないのよ。」

「それは君は香水選びに困ることはないな。」

「彼女の香水のセンス嫌いじゃないわ。その中で私にぴったりなものがあったの。」

ニコルが使ってる香水はヴィルジニーはあまり使っていない。

「いつかあそこは香水博物館になるんじゃないかしら?」

「それなら彼女が館長だな。」

笑ってる彼女を見て彼は笑った。

「愛してる。」

「愛してる。」

2人はビズをして帰った。

「お腹痛い。」

家に帰るとセバスチャンがお腹をおさえて苦しんでいた。

「どうしたの?」

「食当たりかもしないな。」

ジョルジュは言った。

「私は何もしてないわ。」

「かかりつけ医がこっちに来るわ。」

それから見て貰いストレス性による腹痛だった。

「はやく良くなると良いわ。」

彼は数日して良くなった。


「まさか腹痛の原因は私…」

彼女は腹痛を起こした日にセバスチャンの飲み物を少し飲んでしまった。試しにヴィルジニーの飲み物をわざと飲んだら彼女は見事に腹痛になった。

「あの本の能力だ。」

彼女が食べた本は調理が出来る能力を身につけるものではなかった。飲み物をシェアすると相手に身体に苦痛を与える能力だった。


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