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盗み

「今日もたくさん収穫出来たわ。」

彼女は盗みの能力がついてから、甘いものを食べたくなっては小売店でお菓子を盗むことが日課になっていた。

「セバスチャン、お菓子買ったけど食べる?」

「食べたい。」

「セバスチャン、さっき食べたから駄目だ。」

「何で?」

彼にお菓子を与えようとするとジョルジュかヴィルジニーに止められることが多かった。その為彼らがいない所であげることになった。

「次はここね。」

彼女は巧妙だった。同じお店で万引きせず色んなお店で時間をずらして万引きした。


ダミアンとの関係は終わらなかった。

「もうすぐ俺の誕生日だ。」

本屋で2人は話していた。

「プレゼントが欲しいってわけね。何が欲しいわけ?」

「一緒に夜景でも見てキャンプでもしたい。」

「悪くないわね。」

「君は特にお金を出したりとかしなくて良い。君がいることに意味があるから。」

「それなら良いわ。私は人にお金を使うのが趣味じゃないの。」

「この前、ジョルジュにたまたま会って、よくニコルが息子達に買ったお菓子をたくさんあげて困ってると言ってたぞ。」

「それとこれは別よ。」

「君のそう言う抜けてる所が面白いけどな。」

「馬鹿にしないで。私はすきを見せたつもりなんてないのよ。」

2人の関係は何事もなく修復した。まるでセリーヌは最初からこの世に存在してなかったかのように。


「ニコル、犬の散歩お願い出来ないかしら?息子達は常に学校行ってるし、ジョルジュは出張だし、私はやることがあるの。」

「暇なのは私だけってことね。そう言いたいんでしょ?」

「否定しないわ。本当のことなんだから。勘違いしないで暇なことを悪いことだと思ってないから。」 

「あんたにとって暇ってどう言うことなの?」

「新たに物事を起こすことのスタート地点よ。暇になると言うことは何度でも予想できない行動することなのよ。心臓が動いてる限りは人間には暇がある。」

「それなら死んだら暇なの?」

「そんなこと考えてどうするの?大事なのは分からない死の世界じゃなくて現世を楽しむことよ。」

犬が楽しそうに走り回る。

「ゴリアテは暇なの?」

「散歩に行くなら暇じゃなくなるわね。」

ヴィルジニーはニコルにリードを渡した。そしてゴリアテをリードにつないだ。

「犬の散歩か?」

散歩してると老人男性がニコルに声をかけた。

「そうです。」

「とても良い子だね。」

男性は犬を優しく撫でていく。

「そんなに犬が好きなら里親になれば良いんじゃない?」

「もう先は長くない。あと余命半年だ。半年で犬との歴史は作れない。」

「そうなのね。それなら信頼出来る人に託せば?」

「残された家族は犬が好きじゃないんだ。犬は愛されなければ意味がない。」

彼女はそんな老人の話に退屈だと思い、その場を離れた。

「ゴリアテ、この家はどう?私にとっては何だかんだ過ごしやすいところよ。よく誰かは自立するべきとか言うし、家族でもない縁もゆかりも無い人を養うのには何か裏があるとか言うけど私はそんなことどうでも良いの。強いて言うなら私とあんたも同じ立場よ。都合が悪くなれば捨てることをいとわないのよ。あんたの方が相当可愛がられてると思うけど。」

表情を変えずに彼女も犬も前に進んで歩いて行く。

「私犬はそこまで好きじゃないの。だからあんたのことを犬だと思わないことにした。犬の形をしたヴィルジニーの息子か何かかんと思ってる。セバスチャンは兄のクレマンよりやんちゃな感じね。あんたはクレマンみたいな博識なタイプ?」

ゴリアテは彼女が話すたびに顔を向けた。

「そう言えば面白い話があるのよ。この家に住んでるのにこの家の人とヴァカンスに行ったことないのよ。2年以上そんな状態ね。ヴァカンスに行けないならパーティーを無断でしたり、朝まで酒を飲んだり。今度はあんたと留守番ってところかしら?あんたも酒飲めたら話がはずみそうね。」

ランニングしてる公園を散歩して家に戻った。するといきなりゴリアテは走り出した。

「ちょっと、いきなり走り出してどうしたの?」

いつも吠えないのにたくさん吠えた。

「また本?」

本は宅配便で届くことがあったが、突然家のどこかに置いてあることが多かった。

「これってあの本ね。」

さらにゴリアテは他の本もくわえて持って来た。

「ちょっと本をくわえないで。食べれなくなるでしょ。」

そう言うと彼はすぐに本を口から話した。

「あんたは犬用のおやつでも食べてて。」

家主には内緒でおやつを与えた。拾った本は合わせて3冊だった。

「今度は何の本?」

どの本も白紙だったが本によっては少し色味があるものもあった。一冊目は運転をしてる男性が描かれていた本だった。2冊目は棒立ちしてる女性の絵が1ページだけ描かれていた。さらに3冊目も同じように棒立ちしてる女性が描かれていた。

「いったいどう言うこと?特に能力のない本ってことかしら?」

彼女は携帯を手に持っていた。そこにはダミアンの番号があった。彼女は彼の番号を押そうとしたが押さなかった。

「美味しそうね。」

もう彼女は本を食べることに抵抗することがなくなった。本を見て美味しそうと感じることになった。

「そうだ。デーツシロップでもないかしら?」

冷蔵庫からデーツシロップと蜂蜜を取り出して本にかけた。

「待って、これだけラタトゥイユの味がする。」

甘くない本ははじめてだった。

「そう言えば…」

彼女はあることに気がついた。本を食べてもお腹が満たされることがない。

「もっと本を食べたい。もっと本を食べたい!本をくれ!」

彼女はデーツシロップをそのまま飲んで行く。

「本をくれ!食べたい!本を食べたい。」

ゴリアテが叫び声を聞いて駆けつけて吠えた。

「本をくれ!」

犬が吠える声も大きくなる。

「本を食べたい!」

デーツシロップを飲み干した。

「次来るのは待てば良いか。」

彼女が叫ばなくなるとゴリアテは彼女の部屋を出て行った。

「ちょっと、勝手に部屋に入って来ないでって言ってるでしょ!」

昼なのに家の中は暗い感じだった。

「ニコル、さっき何で叫んでるの?」

ヴィルジニーが部屋に入った。

「そのデーツシロップどうしたの?」

「何だか全部飲みたくなったのよ。いけない?」

「今度買いに行ってもらうわ。お金出すから。」

「デーツシロップ飲み干すのおかしい?」

「そう言うところで育ったの?それなら私もそれが当たり前になるわ。」

「違うわ。突然そうしたくなったの。飲み物じゃないのは分かってる。」

「それなら飲む為のデーツシロップが必要かしら?」

彼女は少しにやつきながらニコルに言った。

それからも犬の散歩をすることが増えて、だんだんそれが彼女の日課になった。

「ニコル、犬飼ったのか?」

散歩中、ダミアンの友達にたまたま会った。

「同居人が飼いたいって言うから飼うことになったの。私は反対だったのよ。犬好きじゃないし。」

「それなのに犬の散歩してるんだな。」

「同居人の分身か何かってところね。」

「ポケットに何入れてるんだ?」

「ただのお菓子よ。」

彼女は彼と別れて家に帰った。すると施錠してたはずの部屋が空いていた。

「何で勝手に部屋に入ってるの?」

「壁を張り替えようと思ってるの。」

「勝手なことしないで。」

「勝手じゃないわ。あなたらしい壁に変えてあげてるの。」

壁紙をすごい勢いで剥がしていく。そして新しい壁紙に変えて行く。それを彼女は無言で見る。

「ちょっと水あげてくる。」

彼女はクレマンの部屋に入った。彼の部屋は青い壁紙で宇宙にいるような感じだった。彼の本棚を見た。本棚は勉強の本や辞書は図鑑、少しばかり哲学の本があった。虫の標本や動物の模型とかもあった。さらにセバスチャンが生まれた時に嬉しそうにする幼き彼の写真も飾ってあった。部屋を一通り見渡すと彼の部屋を物色した。

「これをここに置いて…」

盗んだマドレーヌを部屋に置いた。そして彼の部屋にあるルーペを手に取った。それを何もためらいもなくポケットに入れる。さらに他にも盗んだお菓子を置いた。ルーペで色んなところを見た。すると壁にはかなり小さな字が書かれていた。そこには「消して。」と書いってあった。その字はクレマンが書いた字ではなかったし、セバスチャンがいたずら書いたものとも言い切れない字だった。

「何これ?」

「ニコル!」

彼女は急いで彼の部屋を出た。30分くらい彼の部屋にいた。

「今行く。」

ルーペをポケットに入れて部屋に戻った。

「壁紙少し貼ってみたわ。」

「これで良いよ。私にも壁紙貼らせて。」

壁紙はどんどん貼られていく。掃除が終わると部屋の雰囲気は変わった。壁紙は薄ピンクと薄紫だった。壁には大きなユニコーンが描かれていた。

「あんたにぴったりだと思わない?」

「悪くないわ。新しい世界に入ったような気分ね。そこまで悪趣味じゃないわ。」

「悪趣味前提で話されても困るわ。ニコル!」

「何?」

「この前はヴァカンスに連れて行かなかったけど、今度のヴァカンスはあんたも連れて行くわ。」

「それは良いニュースね。どこか決まってるの?」

「今度はあんたが好きな所に行くわ。どこ行くか考えておいて。」

彼女はベットに横たわった。

「これから夕飯作るわ。これお菓子作ったから全部食べて。」

彼女は横になりながらたくさんのお菓子を食べた。

「バズ、これ見ろ!ママとパパには絶対に言うなよ!」

「何?」

「部屋にお菓子が置いてあったんだ!」

「良いな。僕にもちょうだい。」

「良いよ。ママとパパには絶対に言うなよ。分かったな?」

「これ入れたの私よ。」

ニコルが2人に近づいて言った。

「やっぱりそうだと思った。だからわざと部屋を開けといたんだ。」

「じゃあ、僕の部屋にもお菓子置いて。兄ちゃんばかりずるいよ。」

「声が大きい。バレると私があんた達のママとパパに嫌味を言われるわ。」

彼女はヴィルジニーの許可も免許もなく車の運転をした。思ったより思うように運転が出来た。彼女はこの上なく幸せな気持ちだった。初めての体験にはしゃぐ子供のような感じだった。車に乗ってどこまでも行く。車道はあまり車が走っていなかった。

「いけいけー!」

1人でカーレースをした。空を飛ぶ鳥を抜かそうとした。鳥は危険を察して逃げた。しばらくすると高齢女性をひきそうになった。

「ちょっと!あんたなんて運転してるの!」

ニコルは女性を無視して運転を続けた。焦って息が荒くなっていた。

「うわっ!」

突然出て来たうさぎをひいてしまった。

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