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異変

車の前で血を流して倒れてるうさぎを見た。彼女は呆然として立ち続けた。辺りは昼なのに人気がなく、薄暗い感じだった。彼女はうさぎを持って木々のある所に埋めた。

「わざとじゃないの。私のせいじゃないんだから。」

彼女は息をきらして急いで車に乗った。手についてる血を見て。車の窓を開けて吐いた。そしてそのまま家に着いた。

「ちょっと、何勝手に運転してるの!」

ニコルはヴィルジニーに見つかった。

「無免許運転でしょ?あんたが運転出来ないのは知ってるのよ。」

ヴィルジニーの用事で遠くに付き添う度に彼女には車が運転出来ないと言った。

「少し運転の練習してたのよ。」

「勝手に運転しないで。それとあんた手に血がついてるけど大丈夫なの?」

「これ?ちょっと転んだだけだから大丈夫よ。大したことない。」

「ちゃんと手を洗ってね。」

その日車の運転や私の異変に問い詰めることはなかった。

「だから今回も僕じゃないって!!」

クレマンとセバスチャンが喧嘩していた。

「何の騒ぎ?」

「僕のルーペがなくなったんだ。こう言ういたずらするのはハズだと思うけど。」

「盗んだって証拠はあるの?なくしたんじゃないの?」

「大切に缶の中に保管してるものをなくすはずない。ここ最近物がなくなるなんて変なんだよ。」

「1つ言えるのはバズはやってないわ。」

ニコルが言った。

「ほら見ろよ!兄ちゃん!ニコルがそう言ってるぞ!」

「それにあんたも悪くない。だから疑って悪者にならないで。」

「悪者って…」

「被害者だと決まったわけじゃないんだから。この家は戸締まりしっかりしてるから空き巣が入った可能性も低いし、この家の人がそんなつまらないことに時間をさかないでしょ。この家の人皆本の虫なんだから。」

「何それ?変なの。」

「そうでしょ。私は本なんてこれっぽっちも興味ないから。」


ある日、ダミアンを連れて家でパーティーをすることになった。

「ダミアン、ここでパーティーはじめてか?ランニング中によく会うけど。」

ジョルジュが聞いた。

「お茶会ぶりだな。中々刺激的なお茶会だった。」

「どう言う意味?」

彼女は彼のことを肘でつつく。

「他にもここに来る用事があったけど。」

「何の用事?」

「ニコルの手伝いだな。」 

密会を含めれば10回はここに来てる。ヴァカンスで不在の時や夜にこっそり呼んだり。一度クレマンに見つかったことがあるが哲学書で口止めした。

「いない間に呼んだの?」

「庭の水やりをさせただけよ。家の中には無断で入れるわけないわ。それが全てよ。」

「君、ヴォルテールの本読むんだな。」

「俺は宗教や思想は戦う武器ではないと思う。ヴォルテールが言うように。そのようになったらそれは思考停止だ。」

「今もどこでも続くことだな。どんな思想にも狂信的な人間はいる。それでいて自分の居場所を失いたくない連中だ。」

「パパもダミアンも左翼なの?」

クレマンが聞いた。

「左翼でも右翼でもある。特定の考えでは右翼でもあり、特定の考えでは左翼だ。考えが完璧に一致してる人間がどこにいるんだろうか。」

「共産主義は反対よ。平等なんて無理よ。」

ヴィルジニーが言った。

「君がこの国にいるなら、自由と平等、博愛は成立しないな。」

「モットーなんて作るのは権力がある人がやることよ。法だってそう。モットーや宣言は全員の総意何かじゃない。共産主義には限界がある。経済的に共産主義が続いた国なんてほとんどないわ。」

「ヴィルジニー、君も意外と抜けてるな。自由平等博愛は革命派の市民も革命の時に掲げていたんだ。権力がある特定の個人が言ったものではない。」

「だけどその言葉が全て正しいわけではないわ。」

「それを言うなら資本主義や新自由主義にも限界はある。」

「痛みや苦しみが平等の方が良いんじゃないか?」

「それには賛成ね。男女の痛みの違い、階級での痛みの違い。それが平等に体験出来る本があったら良いわね。」

「ヴィルジニー、本でも出版したらどうだ?」

「論説やエッセイは書く気になれないの。私のがらではないわ。」

「自由平等博愛はフランスにおいて欠かせない。このモットーを消し去るなら国の終焉だ。」

「極右政党にだけは入れない。」

「そんな危機がこれから何回も起きるだろうけどな。世界がよどめばこの国も淀む方向性にだってなる。」

話してる間にダミアンがいなくなった。

「そう言えばダミアンはどこに行ったんだ?」

「さあ知らない。」

しばらくすると彼が戻って来た。

「ダミアン、どこに行ったんだ?」

「トイレで本を読んでた。」

「何読んでた?」

「料理のレシピの本とヴェルレーヌの詩集だ。」

「気に入ったレシピあったかしら?」

「ニシンじゃがいもサラダとトマトマスタードソースってレシピが気になったな。」

ダミアンは答えた。

「じゃがいもは皮ごと食べたほうがカリウムが豊富だけどな。」

「皮むかないと怖いわ。食中毒で誰か倒れるのは嫌よ。それに夜ご飯に私はじゃがいもは取らないの。」

ヴィルジニーは言った。ワイングラスを置いた。

また別の日もダミアンは家に来た。

「また水やりの手伝いか?」

「悪い?残念だけどここで密会は無理よ。セバスチャンのことをヴィルジニーが見ないと法律違反になるから。」

「法律の問題ではない。10歳にもなってない子供を家に1人にするのは良くない。犯罪に巻き込まれる。俺達の間に子供がいるならなおさらそんなことはさせない。」

「子供なんて欲しくないわ。インテリぶったクレマンとわがままで何かと生意気なセバスチャンでゴリゴリよ。」

「だけど君と彼らって何だか対等だよな。」

「今日は水やりだけの為に呼んだわけじゃないわ。この量の鉢をここに植えなきゃいけないのよ。一人じゃ終わらないから呼んだの。」

「対価は?」

「私の能力で洋服かしら?」

「著作権違反の洋服か。」

2人は笑いながらスコップなどの園芸用品を手に取った。

「そうだ。お菓子たくさん買ったから食べてちょうだい。」

「うわ、虫だ!」

「虫?こんな平気だわ。」

彼女は虫を素手で触ってどこかに逃がした。

「ねえ。」

「何だ?」

「この虫を車で跳ねた人がいたらどんな反応する?ふと考えたんだ。」

「もしさっきの虫が車でひかれたらどう思う?」

「虫は嫌いだけど気の毒に思う。車にひかれて終わる最後なんて想像したくもないな。」

「そう思うよね。私もそこは同じよ。これが人間とかなら?」

「過ちを感じる。罪を犯した気持ちになるな。」

「ただの哀れみの気持ちとは違うのかしら?人間だとそれが強くなるの?」

「人間だからこそだ。罪を感じられるからこそ罪を感じられるものに対しての自分の犯した行為の過ちを感じる。」

「恣意的だろうとなかろうと罪の意識を感じ合うものだ。例外はあるだろうけどな。」

「条件次第ではどうかしら?例えば独裁者とかを思わぬかたちでひいたら?」

「英雄になったとかって言う回答を期待してるのか?そんなことは言わない。少しばかりの罪悪感とシャーデンフロイデが溶け込んでいくような感じだな。少しばかりの罪悪感はシャーデンフロイデに溶け込んで行く。」

「私はそんな相手に悪意のある喜びは当然だと思うわ。罪の度合いが違うだけじゃなく罪の意識があるのに罪を犯すことに喜びを感じてる。それなら罪悪感は抱かないし、そうなるべき運命だったんだなと思う。」

映画のワンシーンでも悪党はろくな死に方をしない。そのようなメッセージが彼女の顔から伝わって来る。

「それなら恨まれるような罪を犯した両親が車にひかれたら?あなたには深い愛情を注いでる条件つきで。」

「よくある答えは聞き飽きてるだろ。それならこう言うよ。人間らしいと思う。どんなに主義主張でぶつかってても、嫌いな部分がたくさんあっても完全に嫌いになることは出来ない。全面的に愛してないのは嘘だから。」

ニコルは笑いながらダミアンに抱きついた。

「アイリスはここに植えて。それとクチナシの木はここね。」

どんどん植えて行く。

「トイレに行ってくるわ。」

その間に土をどんどん掘って行く。掘ると時々ゴミや思いもよらない物が出て来る。

「作業は順調?」

「君も一緒にやるんだぞ。」

「分かってるって。でもおかげではやく作業が終わりそうね。」

「このなかの花で好きなのはあるか?」

「この中なら勿忘草よ。」

「君はやっぱり重い愛が好きなのか?勿忘草と言えば永遠の愛と忠実性。」

「騎士が溺れた話と結びつけないで。私はただ花として好きなだけよ。」

「アルツハイマー協会の花としても知られてるな。」

「ゼウスに言った「いつまでも私を忘れないで。」って言葉が記憶と結びついてるのね。記憶や思い出の花ね。この花見たら今日のありふれた会話は思い出や消えない記憶ね。そう言えばダミアンは?何が好きなの?」

「俺はゼラニウムの花だ。フランスならどこにでもある花だろ。」

「まだその季節じゃないわね。私は香りとしても好きだわ。」

「今度ゼラニウムの香りが入った香水でもするか?」

「その季節になったらつけて来て。」

「分かった。」

「ゼラニウムは南アフリカの原住民が咳や高山病の時に使ってたくらい効果のある植物だ。ストレス緩和や抗うつの効果もある。」

「ゼラニウム1つにそこまで考えたことなかったわ。ダミアン、アロマに詳しいの?料理には使えるかしら?」

「ゼラニウムならシロップか何か作れるんじゃないか?」

花を植えながら話す二人の所に少しばかり水が流れた。

「あれ?ダミアン来てたの?」

ヴィルジニーが帰って来た。


ある日の夜ニコルはまた誰かに見られてる感じがしてあまり寝つきが良くなかった。彼女は薬を飲んで少し飲んで落ち着いたがその感覚が完全には消えない。それに最近食べる為の本が消えたことが不可解だった。たったの一冊だろうととても不可解だった。外はとても暗かった。窓がぼんやりしていたがいつの間にかくっきりと色んなものが見えていた。窓を開けて彼女は落ち着こうとした。外の空気が彼女の口だけじゃなくて瞳や手のひらに触れる。瞳と手のひらがとても反応する感じだった。すると1台の車が彼女の目に入る。そしてその車は勢いよく進む。そこに一匹のうさぎが飛び出して来た。うさぎは車にはねられてきまい酷く飛ばされてしまった。それを見た彼女窓を閉めて窓に鉢植えの土をかけた。

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