変化
「あなたが知的財産権を侵害したとした訴訟がありました。こちらのデザインが酷似してたり、他にもキャラクターの入った生地で商品を販売されたり。今回はこのデザイナー様からの告発です。他にも訴状が来るのも時間の問題です。」
ニコルは15日以内に弁護士を見つけないといけなくなり弁護士を見つけた。
「え…また訴状が来てる。」
集団訴訟にはなってないものの個別の訴状が次々と来る。
「もうなんなのよ。」
泥沼の裁判が続く。1年半以上続くことが予想される。流石のニコルも服飾ビジネスを辞めることになった。
「もう引っ越すの?」
「そうよ。何だかここの生活落ち着かなかったのよ。常に誰かに見られてる感じしたし。」
「それなら良い先生紹介しようか?」
「良いのよ。私はかかりつけ医を変えたくないの。」
「分かったわ。またパーティーやるから遊びに来てね。」
フランソワーズと話して、シャンボン家に行く。
「ニコル、何で戻って来たの。2ヶ月もしないで戻ってくるの?」
「嫌なの?お荷物が増えたと思ってるの?」
「嫌ではないけど。ただあなた訴状来てるんでしょ。」
「私はもう服飾家ニコルをやめたの。またシャンボン家に帰省するニコルよ。」
「あんたらしいわ。」
ニコルはまた同じような暮らしに戻った。
「せっかく贅沢な暮らし出来たと思ったのに。」
「頑固な一面あるのにこう言う所はあきらめがはやいのね。」
「無駄なことには時間を割かなくて良いの。」
「あんたらしいわ。」
「ニコル‼︎」
ジョルジュやセバスチャンやクレマンも来た。
「もう戻って来たの?」
「サッカーしようよ。」
「サッカーはあとよ。」
ニコルは布をどんどんゴミ箱に捨てる。
「ちょっと何やってるの‼︎ゴミをたくさん出すのは良くないの。リメイクしたら良いでしょ。」
「何故かリメイクは出来ないの。」
本の能力にも制約があった。一つはオリジナルのデザインを作ることができないこと。ニコルの元に送られて来る布でしか服を作れないことだった。
「引き続き水やりをあんたに任せるわ。」
何故かヴィルジニーとジョルジュはニコルを受け入れ続ける。
「ママ、今度のバカンスどこに行くの?」
「久しぶりにアヌシーの別荘にバカンスよ。」
「私も賛成よ。」
「あんたは家でハウスキーピングよ。その分お金は払うから。」
「私は階級の違う人間なのね。私とあんた達とは違うのよ。」
「あんたを少しは信頼してるからよ。そこら辺の業者に任せたら物を盗むのが目に見えてるわ。」
「信頼ね。私はそこまで馬鹿じゃない。」
ヴァカンスはステータスだ。そして金持ちの特権だ。別荘は権威。昔は王冠や貴金属の装飾品などが権威の象徴。革命が起きたフランスでは誰でも権威やステータスを手に入れられるチャンスが少しは増えた。だけど国が変わろうが時代が変わろうが人間社会は地位と言うものを背負って生きるものだ。
「これがリストよ。自分で使った織機とかはちゃんと洗って。」
「分かった。これをやれば良いんでしょ。人使いが荒いな。」
「こんな良い条件出すのは私達だけよ。」
「ストライキでもしようかしら?」
「他に誰とストライキするの?」
「冗談よ。」
バカンスの日はやって来た。
「行ってくるわ。留守の間はリストに書いてあることは守って。」
「言われたことと反対のことやりたくなるな。」
「いつまで続くかね。」
「行ってくるね。」
「またこれか。」
扉が閉まった。
「ここも掃除するの?」
普段掃除しないないたんすの隙間やベランダなども掃除した。
「もう面倒臭くなって来た。」
ニコルはこの前ランニングしてる時にあった男性の電話番号が書いてある紙の切れ端を見た。
「そうだ。良いこと考えた。」
彼女は彼に電話をかけた。しばらくすると彼が電話に出た。
「どちら様ですか?」
「ニコルよ。」
「あの時の!まさかかけてくれると思わなかったよ。」
「ちょっと2人でもパーティーでもしない?」
「パーティーか。面白そうだな。今の仕事中断して行く。」
「待ってるわ。」
彼女は掃除してた。するとシャンボン家の4人の写真が入ったフォトフレームとぶつかり落としてしまった。
「クソ、邪魔ね。」
それを見て。ペンを出した。そして一人一人の顔を塗りつぶした。誰か分からなくなるまで。
「これで良いのよ。」
インターホンが鳴った。
「ニコル、いるか?」
「いらっしゃい。」
「良い所に住んでるな。パーティーだからワイン持ってきたぞ。」
「ここで親子持ちの家族と住んでるのよ。水やりを毎日する条件で。」
「何を育ててるんだ?」
「さあ知らないわ。知ってることはよく分からない木だってことくらいね。ここにあるのよ。」
木はこれからもどんどん大きくなるような感じだった。
「他には菊とか野菜を育ててるのよ。土日になるとこの家の子供も木や花壇の手入れをするのよ。」
「あまりの仕事をしない家政婦ってとこか。」
「お金は少し貰ってる。」
「それがきみの仕事か?」
「そうよ。本当は仕事をしないで一生生きていきたいの。あんた何やってるの?」
「俺は建築デザイナーをしてる。」
「そうなのね。中に入って。」
男性を中に入れた。
「そう言えば名前聞いてなかったわね。」
「この前言ったはずだぞ。俺はダミアンだ。光の入り具合が良い部屋だな。開放感があって俺は好きだな。パーティーをストライキするのかと思ってた。」
「そうよ。これからするの。あんたに手伝って欲しいことがあるの。ここの家の友達からこのリストをこなせって言われたのよ。ちょうどヴァカンスに行って、私はハウスキーピング。1人だと面倒臭いと思ったからあんたを呼んだの。」
「それなら最初から言えよ。パーティーのワインとか色々持ってきたのに。」
「それならこうしよう。このリストのことこなしてくれたら私とパーティーよ。」
「分かったよ。ニコルにつきあうよ。」
掃除を2人ではじめた。
「この棚を動かすわよ。1人だと動かしにくいの。」
「埃が溜まってるな。」
「この棚だけは動かしにくいの。しばらく掃除してなかったみたいね。」
雑巾などで汚れた場所をたくさん拭いていく。
「その次はこっちよ。」
「この家もトイレに本があるのか。環境の本に絵本に自己啓発本もあるな。」
「こっちにはヴォルテールの本よ。」
トイレ掃除や色んな箇所の掃除が終わった。
「お前をヴァカンスにおいておくなんて酷い奴らだな。」
「同情か何か?世の中には階級があるのよ。」
「そんなことばかり気にして生きてるのか。楽しくないな。ちゃんと説得すれば良いだろ。」
「そんなことしたら他に住む家なくなるわ。私にはヴァカンス中のハウスキーピングがお似合いと言いたいんだろうね。」
「でももう君の重荷はなくなったな。」
「そう言えば面白い話教えてあげる。」
彼女は適当に本を出した。
「私本食べたの。」
「ついに本と食べ物の区別もつかなくなったんだな。本が食べれるなら昆虫とか食べれるのか?」
「面白くないわ。2回は食べたわ。1つは桃の味がした。もう一つは梨みたいな味だった。」
「そんなもん食べたら消化出来なくて体に良くない。それに安全性は大丈夫なのか?」
「発がん性かなんかの心配?今こうやって立ててあんたと話せてるんだから心配するほどのことなんかじゃないの。あんた私がすごい速さで走るって驚いてたわよね?」
「それがどうしたんだ?」
「この本を食べたことによって得られた効果よ。人並みの速さじゃないから驚いてたでしょ。」
「それはそうだ。あんな速さで走るのは人間じゃないからな。そう言う秘訣があったんだな。」
「あんたもその本食べてみたい?」
「そんなのなくても俺は自分の人生くらい自分で歩める。」
「本を食べる選択を選ぶのも人生よ。本を食べてって記述に私だって迷ったのよ。本を食べることはどう言うことか考えて食べたの。能力や能力の制約だって自分で見つけたの。何も考えないで本を食べたわけじゃないの。最後に裁縫ができる本を食べたけど著作権で訴えられて裁判の途中なの。裁判も踏み倒したいところね。」
「踏み倒すわけにはいかないな。」
「欠席判決が高確率で出るわね。」
「それでハンドメイドのビジネスはやめたのか。」
「最初は無視してやるつもりだったわ。だけど訴状が5件も来たらそう言うわけにはいかないの。流石の頑固の私でも泣く泣く現実を受け入れるしかないのよ。」
「俺の父親なら勉強不足って言うだろうな。」
「そう言う環境にいなかっただけよ。情報は全ての人にいき渡るわけじゃないの。」
「それはそうだ。情報は知ったものが生き残りやすいように世の中は出来ているからな。」
ワインを開けた。
「知らないで怠けて過ごしてくれた方が得にする人がいる。誰かの都合の良いように使われるだけの人生さ。世界では人権とか表向き言うやつもいる。だけどそれだけじゃ世の中の構図は変わらない。」
「デモとか参加してるの?」
「核保有の反対のデモだな。」
「それなら革命を起こせる本でも食べたほうが良さそうね。」
「それは面白そうだな。」
2人はワインを飲んだ。
「本の話は同居人にはしてるのか?この家のガキも知ってるのか?」
「そんなこと教えるわけないでしょ。せっかく手に入れた能力を誰かに利用されるのが嫌なの。」
「まだ一回しか会ってない俺には教えるんだな。」
「それが正しいと思ったからよ。」
「誰かに話したりしないし、君に近づいたのもその為じゃない。君を愛してるからだ。」
「ありふれたセリフね。」
「愛の言葉に制限はない。君は俺のことは好きか?」
「好きよ。そうじゃなかったらここに呼ぶことなんて一生ないわ。またパーティーでもするかしら?」
「いつになりそうだ?」
「明日でも明後日でもいつでも良いわね。」
ダミアンがいなくなると部屋は静かになった。ニコルは鏡を見ながらナッツを食べた。
「何かしら?」
玄関には女性の配送業者がやって来た。
「お届け物です。」
「何のお届け物ですか?」
「本です。」
依頼主の名前や住所の記載がよく見ると何もなかった。それなのにその家に届いた。
「この住所であってますか?」
「はい。」
女性は無表情だった。
「ありがとうございます。」
配送業者がいなくなると本を開いた。
「また再会したわね。」
届いたのは一ページ絵の描いてある白紙の本だった。




