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新しい本

「やっぱり変なのよ。」

「気にしすぎてもなかったようだな。」

「今度は何の小説?」

「これは本として成立してないの。リサイクルにでも出さないと。」

白紙の本がまた届いた。シャンボン家の間で騒ぎになった。

「それ、私に任せてくれない?」

「良いけど、どうして突然?」

「それが私の人生だから。」

「白紙の本は読めるのね。」

「文字が多い本読んで権力者にもなった気分かしら?まあ良いわ。これは私がリサイクルに出すから。」

「その前に警察に相談した方が良いだろ。」

ジョルジュが言った。

「たったの2回の配送ミスで気にしすぎよ。ここは私に任せて。」

「その本僕にも見せて。」

「子供が見てもつまらないものよ。」

彼女は部屋に行き本を開いた。誰も入って来ないように鍵を閉めた。

「今度は何の本かしら?」

スタンダールの赤と黒と表紙に書いてあった。ページをめくるとミシンで服を作っている人の絵が描かれていた。

「今度はミシンが出来る能力ね。」

彼女は本を食べた。

「今度はモモとケーキの味だわ。」

彼女はどんどん本を食べる。紙くず一つ落とすことなく口に運ぶ。そして全部食べ終わった。ゴミを一つ出すことなく。

「ニコル、何してるの?」

「ミシン探してるの。」

「どうして急に?」

「洋服を作りたい気分になったのよ。」

「ミシンならジョルジュが得意ね。聞いてみるわ。」

「ジョルジュ!!」

「どうしたんだ?」

桃を食べながら二人の所に来た。

「ミシンどこにあるか知らない?ニコルが使いたんだって。」

「ニコルが?どうして急に?」

「洋服を作りたいんだって。」

彼女は生地を適当に集めた。

「まずはクレマンとセバスチャンの服を作るわ。今まで言ってなかったけど私裁縫とかミシンとか得意なの。」 

能力を確かめもせず勢いで言った。

「裁縫苦手って先週聞いたばかりよ。先週ボタン取れた時も私に直してもらってたし。」

「それはあんたの能力を試したのよ。ボタンくらいはつけられる実力だってことは分かったわ。」

「当たり前よ。それなら皆の前で作ってみたら?」

すごいスピードで生地を裁断する。

「はやい…」

「ジョルジュ、私の実力に驚いてるんだね。」

「はやくやれば良いもんじゃない。世の中常に効率主義で言い訳ではない。だけどこの速さでこんなに綺麗に切れてるのはすごいな。」

彼は認めざるを得なかった。

「まだまだよ。」

ミシンにボビンをセットした。彼女はボビンの存在すら知らないのに自然と手が動くかのように縫っていく。

「おかしい。速度マックス以上の速さで縫ってる。」

「ニコル、怪我したらしゃれにならないわ。」

「ボタンを縫える手と速いスピードでミシンも扱える手は違うのよ。」

余裕な表情だった。

「それなら手元を見ないで作業もできるのよ。」

「変なこと言わないで。怪我したらしゃれにならないの。せめて手元は見て。」

「心配しないでもう完成するから。」

3時間で出来上がる服をなんと1時間以内で作り終えた。

「人間技ではないな。」

「正真正銘の人間よ。これくらいなんてことないのよ。次はクレマンの作るよ。」

クレマンのも1時間以内で作り終えた。

「ここ最近あんた人が変わったみたいね。性格は元々後さき考えないで行動していき当たりばったりだけど突然能力を開花させるもんだから。能力を開花させられるなら性格も少しは変わるんじゃないかしら?」

「性格?私は変える気ないわ。人間の性格なんて癖しかない。人間は皆性格悪いのよ。」

「そうね。だけど罪を起こしたらもはや人間でもない。罪を犯したら人権も人間主義も主張する権利などない。啓蒙思想を生み出した哲学者が全ての人間を救うわけではない。きっかけを作っただけで。あんたもそんな人間にならないことね。」

「私がアクション起こすのは不遇にあった時よ。確かに人間技じゃないことはしたけど人間の所業じゃないことはしない。」

「必ずしも罪を犯したものが救われないとは限らない。」

「何で?」

「罪を犯したものの放置は新たな罪を再生産するから。」

「パパは犯罪者の味方なの?」

「そう言うわけじゃない。事実を言ったまでだ。人間と神は近いもの。救済するのは最後は人間だ。世界を作るのも。このレ・ミゼラブルの世界を作ったのも人間だ。」

「だけどあんた達も罪を犯したら幸せになれないことを肝に銘じなさい。ジョルジュの言ってること全てが通るわけではないし、人間主義には倫理があるの。倫理があっての人間主義よ。」

「ママの言うこと何だかよく分からないけど悪いことはしないよ。」

「殺人は許されないけど、人って生きてるだけで罪犯してるでしょ。この前庭に来たリスだって鳥だってウンコしてきたし。」

クレマンが言った。

「倫理があるのは人間の特権なのよ。人間だから持てるものよ。哲学も全て人間の特権なのよ。」

ニコルがクレマンに言った。

「戦争を起こすのも人間だし、動物愛護をうたうのも人間だし、環境保護、核の反対をするのも人間よ。動物が対立するのはせいぜい縄張り争いよ。思想対立など存在しないのよ。」

お金が無くても持てる特権は考えることと思想を持つことだ。人間として生まれれば誰もが持てる特権。中にはその特権を使わない人間もいる。人間のかたちをした存在にすぎない。

「人間って哀れなのか賢いのかよく分からないね。」

「さあ二人とも私の作った服着てみて。」

ニコルはクレマンとセバスチャンに服を着せた。

「採寸してないからサイズ合うわけないだろ。」

「すごい。ぴったりだ。」

「僕のぴったりだ。」

速さの割には丁寧に縫われていた。

「ジョルジュ、私の実力に驚いたんじゃないの?」

「どうやらそのようだな。」

「私、服を作って商売するわ。」

「良いわね。」

「まず生地を入手しないとな。」

「それがここに届いたのよ。ちょうど庭に置いてあったの。」

庭に置いてあったのは泥がついた布だった。

「汚すぎる。」

「これで洋服を作るのか?」

「無理よ。そうだ。隣にある布なら作れるわ。」

ニコルは1日で何枚もの服を作る。工場よりも早いスピードで。

「服を作るのは良いけど、大量に作るのは反対よ。」

「ヴィルジニー、あんたには関係ないでしょ。売れれば良いのよ。」

「本性も能力のように明るみになるのね。」

「世の中の人は結構最後は便利さを求めるのよ。文明が出来るのは便利な暮らしにする為よ。」

「不便すぎるのは私も嫌よ。だけど大量消費は好きな考えではないわ。服はもう世界中にたくさんあるのよ。これ以上大量生産してどうするの?」

「結局求める人がいる限りはそう言うのは消えないのよ。求める人がいる限り私は服を作り続けるわ。」

「確かに綺麗に縫えてるしはやいけど君の作る服には感動しない。志も。」

「まだ結果が見えてないのにあれこれ言わないで。私が仕事もないメイド以下だと思ってる?大間違いよ。何を言われようと私はスタンスを変えないわ。」

彼女の言う通り彼女の服を求める人がいた。布は宛先不明な所から家の天井に毎回届く。ミシン糸なども同じように届く。実質経費ゼロだ。

「この調子で大儲けね。」

高級な生地の物を安く大量に売るのが彼女のビジネスだ。もちろんヴィルジニーのように彼女のやり方を好まなかったり詐欺ではないか不信感を抱く人も多かった。求める人が減ることはなかった。他の国からのかなり知れ渡り注文が殺到した。もちろんニコルが作ってることはシャンボン家以外の人間は知らない。

「エルから買ったバッグでしょ。それ。」

エルと言う単純な名前なので検索もしやすかった。

「違うわ。ちゃんとした信頼ある高級ブランドのバッグよ。詐欺のような安物と一緒にしないで。」

「エルは高級素材の物をネットで安く買えるから良いんじゃん。それに早いのよ。」

もちろん配送は光の速さで色んなの国に自分の足を使って届けている。光の速さで走れる条件は晴れの日で午後の15時から16時の間だ。陸上選手の絵本の効果が彼女には残っていた。その絵本の効果を色々試した結果彼女が発見したことだ。

「すごい大儲かりだわ。」

「何作った服に文句でもあるの?」

ジョルジュは服を5分くらい見ていた。

「何かの服に似てるんだよな。」

「だから何?」

「デザインの盗作はしてないよな?どこかの大手ブランドの服と類似してる気がするんだよ。」

「そんな馬鹿なことはしないわ。全て私の手から生み出されるオリジナルよ。」

「手から生み出される?」

「そうよ。」

「パパ、僕の絵本見なかった。どこかに消えちゃったの。」

「トラブルになっても俺は知らないからな。」

「心配ありがとう。だけどちょっとだけミシンが使えるあんたとは違うのよ。」

彼女は頭で考えなくても手が勝手に服を作ってくれるようになった。特に彼女は服を着て欲しいとか作りたい気持ちなどこれっぽっちもない。売れて自分の経済状態が良くなれば良いと思ってる。

「今日からあんた達のところ出て1人で暮らすわ。」

「それは良いニュースね。」

「ニコル、いなくなるの?」

「行かないで。」

「セバスチャン、悲しむことないの。私が死ぬわけじゃないから。会いたい時はいつでも会えるのよ。」

「分かったよ。だからいつでも遊びに来てよ。」

「その時はサッカーやってあげる。もちろん手加減はするわ。」

彼女はパリの13区に引っ越した。ヴィルジニーの所にいつでも行ける距離だ。

「隣に引っ越したニコルよ。」

「俺はジャンだ。隣は妻のフランソワーズだ。」

「素敵な洋服ね。」

「最近買った服よ。」

「今度うちでパーティーをやるの。良かったらあなたも参加して良いわ。」

「ありがとう。」

その夜彼女は1人で静かにベットに入っていた。快適な空間なのに何だか落ち着かない感じだった。

「誰かいるの?」

誰かに見られているような違和感を感じたが誰もいなかったし、何も起きていなかった。

「気のせいか。」

そのようなことが何週間も続いた。

「お届け物です。」

「ありがとう。」

「裁判所からの書留郵便⁉︎何で私が⁉︎」

開けてみると彼女が知的財産権を侵害してるとして訴状が出された。

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