2つのパーティー
「来週の小学校のパーティーこの服とかどう?」
「これで良いよ。僕シックな服が好きだから。」
ヴィルジニーはクレマンとパーティーで着ていく服を考えていた。
「お兄ちゃんパーティー行くの?僕も連れてって。」
「もちろんよ。家族で行くけどその日はニコルが来れないのよ。」
「何で?」
「高校の時の同級生とパーティーよ。まさかパーティーが重なるなんて思ってもいなかったわ。」
ちょうどニコルはアデルのパーティーに参加する日だった。
クレマンはニコルを部屋に呼んだ。
「パーティーでライバルより目立ちたいの?」
彼女はお菓子を食べながら聞いた。
「うん。学校より皆と話す時間も多いし。」
「勝負時なのね。そうだ。せっかくならそのオリビエって奴にこれをプレゼントしなよ。」
ニコルは包んであるお菓子を渡した。
「あんな奴にあげるならもっと恥をかくようなプレゼントのほうが良い。」
「良い?これには恥以上の苦痛が詰まった物が入ってるの。」
クレマンは不思議そうに見た。
「もしかして毒殺するの?そんな犯罪したくない。」
「エリート人生を台無しにしたくないのは分かってる。だけど何かあったら分からなかったふりすれば良いの。私のせいにしたければ私のせいにして良い。」
「ニコル…」
「ライバルのいるパーティーを楽しみな。」
嫉妬は競争心を生み出す。嫉妬による競争心ならどんな手段もいとわない時だってある。
ニコルはパーティーに参加した。
「ニコル、いらっしゃい。」
青いドレスを着るのはアデルだった。彼女は誰よりもパーティーで輝く存在。彼女なしのパーティーは光が灯さない暗闇になる。
「そのドレス素敵ね。」
ニコルは普段着でパーティーに参加した。
「ダミアンのスーツも素敵でしょ?」
ニコルがアデルに聞いた。
「そうね。」
アデルは少しダミアンのほうを見た。
「隣は旦那のミシェルよ。」
ミシェルとニコルは握手をした。
「それにしてもその格好素敵ね。」
「そっちこそ青いドレスがよく似合うことね。」
アデルとニコルはワイングラスを片手にそう言った。
「こう言うパーティーは久しぶりよ。普段はダミアンの知り合いか同居人とのパーティーに参加してるから。」
「自分の家だと思って楽しんで。それと何かあったらメイドに何でも言って。」
彼女はメイドを数秒間見た。
「これ食べたらどう?」
「ありがとうございます。」
表情がないメイドはニコルがあげたものを食べた。
「このパーティーあなたには楽しくないわよね?それなら私と楽しまないかしら?」
彼女はワイングラスを渡した。
「それは出来ません。私はここで住み込みしてるので。」
「そう。自分の立場を失うのが怖いのね。私にはもう失うものもないし守る者もないの。」
「私にはアルジェリアに家族がいます。奥様と旦那様のおかげで私の生活は成り立ってます。」
「そう。だけどメイドが息抜きしちゃいけないなんてないのよ。それにアデルはそんな怖い人に見えないわ。」
「息抜きくらいはしてます。それに派手なことは出来ません。お酒を勤務中に飲むのは禁止って言われてます。」
「バレなければ良いのよ。あなた名前なんて言うの?」
「サフィーヤです。」
「素敵な名前ね。一緒に写真でも撮ろう。」
ニコルの前だけでは彼女にフラッシュが当たる。誰も目を当てない光が当たる。
「こんな写真でどうかしら?」
「良い写真ですね。」
無表情だった彼女が少しだけ笑った。
「他にも写真見せてあげるわ。」
彼女は最近撮った写真を見せた。
「これが彼氏のダミアンよ。あそこにいるのよ。」
ダミアンはある男性と話をしていた。
「これがこの前会ったホームレスの男性。それとこれがこの前スーパーの目の前で寝てたホームレスの女性よ。」
「同情から写真を撮るんですか?」
「それは違うわ。写真を撮りたかっただけ。別に慈善事業なんて私はどうでも良いの。私もかつてホームレスだったのよ。今の同居人が私のことを嫌えばまたホームレス生活に戻るのよ。」
「仕事は?」
「何もしてないわ。嫌なことをして極力働かないで贅沢な暮らしをするのが夢なのよ。」
「それならダミアンにドレスを買って貰えば?それにあなたの言う贅沢さって何?今のあなた十分贅沢よ。」
「自分の空間がなきゃ意味ないのよ。自分の空間があってはじめて贅沢さが成立するのよ。ダミアンと上手く行けば同棲も考えてる。今の同居人といるよりかはずっと良いわ。」
「サフィーヤ、これ追加して来て。」
「分かった。」
彼女は他のメイドに呼ばれてその場を去ってしまった。
「うちのメイドと何を?」
ミシェルがニコルに声をかけた。
「一緒に食事してたのよ。私が許可したのよ。文句ないでしょ?」
彼女は軽く彼に抱きついた。
「こっちの方に来れるかしら?」
あまり人気のない所に行った。
「その格好素敵ね。よく似合ってる。」
ニコルがミシェルに言った。
「君もとても綺麗だ。着飾ってない感じも良い。」
「アデルみたいな感じは嫌なのかしら?」
「彼女は彼女で綺麗だ。君は君にしかない魅力がある。」
「そう。」
2人は抱き合う。彼女は彼の腕に触れた。
「少し目を閉じてくれる?私も閉じるから。声だけを聞いていたいの。」
「分かった。」
彼は目を閉じた。しかし彼女は目を開けていた。
「アデルとは高校だけの付き合いか?」
「そうよ。特別深い関係とかではなかったわ。」
彼の腰を触ってキスをしながら彼の腕についてる腕時計をとった。そしてそれを手の中に包む。
「久々に話すと彼女は運動好きね。まさか私のようにランニングしてるなんて思ってなかったわ。」
「彼女はバスケもしてるし、テニスだってしてる。」
腕時計をポケットにしまった。
「あなたに会えて良かった。つけてる香水も素敵ね。」
しばらくしてニコルはトイレに行った。トイレにパーティーで盗んだ本を持ち込んだ。それを一冊ゆっくりと食べる。彼女は一冊じゃ物足りなかった。さらにもう一冊を食べる。この本も白紙の本ではなかった。そしてもう一冊も跡形もなく食べてく。彼女のお腹の中に全て入った。
「きゃー!」
遠くから悲鳴が聞こえた。ニコルはトイレから出て何が起きたか確認した。
クレマンは学校のパーティーに参加した。いつもと違って髪をよく整えて少し上品な感じだった。
「クレマン、いつもと雰囲気違うね。良いじゃん。」
1人の同級生の女の子がそう言った。彼は嬉しそうだった。
「オリビエが来たわ。また話そうね。」
「うん。」
彼はオリビエの方をにらんだ。
「クレマン、何飲みたい?」
「ペリエが良い。」
「ほらよ。これも美味しいから食べろ。」
「ありがとう。」
「最近、学校で盗難が起きてるみたいだな。」
「人が多いから物騒だね。でも自分のものくらい自分で管理する。何か起きて誰か対処してくれるわけじゃないからね。」
彼はどんどん食べて行く。
「これ、ギヨームにやる。」
「ありがとう。」
「中学校も一緒のクラスになったからな。もう半年経つけどな。」
「俺はクレマンを同じクラスにして欲しいって書いたぞ。」
「僕も。」
「学級委員になれなくて悔しかったんじゃないのか?」
「別にそんなんじゃない。それに大事なのはこれからだし学年末にはブレヴェだってある。」
「皆には分からなくても俺には分かる。あまり気にすんなよ。誰かと比較したり競い合う必要なんてないからな。誰かと比較して自分がどうしたいか見えなくなるなんて面倒臭いからな。そんなことばかり考えるなよ。」
「だからそんなくだらないこと気にしてないって言ってるだろ。」
「おい、見ろ。ソフィーが来たぞ。」
クラスでも人気な女子が来た。彼女はオリビエの方に行って、楽しそうに話し始めた。
「オリビエとソフィーはもう付き合ってるだろうな。本当にうらやましいな。」
ソフィーは学年の中でもかなり人気な女子だ。もちろんクレマンも彼女のことが気になっている。
「ソフィーの話をするな。」
「嫉妬か。うらやましい気持ちは分かるけどな。」
「ちょっとオリビエと話してくる。」
「急にどうした?」
「渡したいものがあってね。オリビエの為に考えたんだ。」
ギヨームは何が起きたか分からず疑問に思った。
「オリビエ!」
「クレマン、元気か?」
「元気だよ。」
「良かった。この前は本貸してくれてありがとう。誰かに最近本とか盗まれてたからいつも君のお世話になってたね。」
「早くその犯人見つかるといいね。お金の置き引きも起きてるから食堂とかで荷物置きっぱなしには気をつけないとね。」
「そうだね。この学校の食堂のメニュー美味しいからここに通えて本当に良いよ。皆良い友達ばかりだし。」
「良い友達に恵まれて良かったね。」
「もちろん君も良い友達だよ。」
「ありがとう。今日は君に渡したいものがあるんだ。」
「見せて。」
オリビエに渡すものを見せた。
「ママが選んでくれたお菓子だよ。良かったら食べて。今食べると美味しいかも。」
お菓子は少し高級なチョコレートだった。
「ありがとう。早速食べるよ。」
オリビエは躊躇することなくチョコレートを食べた。
「カカオ70%か。甘すぎなくて良いね。」
「パッケージ見なくても分かるんだね。」
「よく食べるからね。」
「美味しいね。」
「良かった。」
食べても特に変化がなかった。お腹を壊したり、倒れたりすることはなかった。
「オリビエに何渡したんだ?」
「お菓子を渡したんだ。せっかくのパーティーだから渡そうと思ったんだ。」
「オリビエに渡すなんて意外だったからびっくりしたな。」
クレマンはギヨームとしばらく話していた。
「やめて!何するの!来ないで。」
「何だ?」
悲鳴が聞こえたので2人は駆けつけて行く。悲鳴の先にはオリビエが刃物を振りまわしていた。
「全てお前らが悪いんだ。全員殺してやる。」
「きゃーー!」
同級生はパニックになりパーティーは地獄と化した。
「来るな!」
「皆こっちに。」
「オリビエ、刃物を床に置きなさい。はやく!」
「嫌だよ。必ず全員殺すと決めたんだ。」
短時間でオリビエの人格が変わった。まるで殺すことに快感を抱く殺人鬼のようだった。
「落ち着いて。」
先生も刃物を持つ彼を見て驚きを隠せないでいた。
「やめろ!」
「うっ…」
ナイフがある先生の背中に刺さった。
「きゃーーー!」
「先生大丈夫ですか?」
「先生!!」
「オリビエを抑えろ!」
先生達がオリビエを抑えた。
「救急車に連絡を。」
「離せ!離せ!」
「暴れるな!」
「オリビエ…」
「先生がどうして…どうして…」
「オリビエ落ち着け!」
パーティーは悲惨なかたちで終わってしまった。




