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幻影

そこは夢だった。ニコルは自分でも分かっていた。

「どんな夢なのかしら?ここはうさぎをひいた所ね。」

少し霧がかかっていて肌寒さを感じた。1台の車がやって来る。自分の意志とは反対にその車の方に歩いて行く。車にはうさぎの顔をした獣人が運転をしていた。彼はまるで彼女が見えていないようだった。そしてお互いもうスピードで進んでぶつかり合う。車にはねられても彼女の意識はまだあった。車から獣人の男が降りて行く。彼は上半身裸でとても鍛えているような身体だった。そんな時でも彼の身体が目に入る。彼はとても狼狽した。

「ニコル…どうして…」

彼は彼女を抱きかかえた。そしてゆっくりキスをした。そして彼女は大きな穴に落とされて土をどんどんかぶせられる。

「やめて!ストップ!」

真っ暗になった。しばらく彼が彼女のことを暗闇の中呼んでいた。

「ニコル、起きろ!」

「え?」

ニコルは気がついたら廊下で寝ていた。それをジョルジュが発見した。

「どうしてここに?」

「こっちが聞きたい。」

目の前にはジョルジュがいた。まだ夜中の2時だった。そして彼女はトイレに行った。

「眠たい。」

本棚にはいつもと違う本が一冊あった。その本を開いてみた。すると何も書かれていなかった。書いてるあるのは1ページだけ鞄を持つ女性だった。それを口に持っていく。静かに食べていく。その本はもう彼女のお腹の中だった。

「どうしてあの本が?」

考えて見ても答えが出なかった。白紙のページの多い本の存在を煩わしく思ってるヴィルジニーとジョルジュなら捨てると彼女は考えた。

「この家に他に誰かいるわけ…?」

彼女はゆっくりと部屋に戻って行く。

「ニコル…」

「来ないで!」

「え…」

そこにはクレマンがいた。

「何だか目が覚めちゃって。」

「おどかさないで。はやく部屋に戻って。」

「ニコルの部屋に行っても良い?」

「駄目よ。何かあるようね。聞かれたくない話?そんな隠してどうするの?」

「僕、中学校で泥棒したんだ。」

「あんたの部屋で話した方が良さそうね。」

クレマンはオリビエと言う同級生と成績を競いあっていた。とても頭の良いクレマンもいつも彼には勝てなかった。そして学級委員になれず彼に嫉妬心を抱いた。そして彼が大事にしてる物を盗んで困る姿を見ていた。

「罪悪感?」

「そうじゃない。あんなやついなくなれば良いって思ってる。ママには内緒だよ。最初はせいせいとしてた。だけどそうしてるうちに何か盗んでないと気がすまなくなったんだ。」

クレマンは泥棒依存症になった。嫉妬心からはじめたことがいつの間にか他のものにまで手を出して止められなくなった。

「どんだけママに良い子の姿を見せたいの?たまに私のこと駄目な大人を見るような眼差しで見ることあるけど私はあんたのように陰湿でこそこそ隠すような真似はしないわ。ママに嫌われずにクラスの人気の学級委員になりたい?笑えるわ。」

「ニコル!」

「そんなに腹立てたらあなたのママがびっくりしちゃうよ。どんなこと言われても大人しくしてないとね?」

「何でそんな酷いことばかり言うの?」

「世の中はそんなもんよ。私は思ったことは包み隠さないの。誰に対してもそうよ。1つ言うけどあなたのママに嫌われずにクラスの人気者になるのは無理よ。どっちかね。もし世界的な人気者になりたいならもっとすることあるけど。」

「それ居候のニコルが言う?」

「知的財産権で揉めてることまだ持ち出すのね。」

「あいつさえいなければ僕は人気者なんだよ。」

「意外と自分に自信がないのね。嫉妬なんて人間一度は経験するものね。嫉妬するなら何か行動に移せば?」

「嫉妬するなって言ってるの?」

「嫉妬なんていくらでもすれば良いわ。私はあんたが泥棒しようが止めないけど。嫉妬してる時にどう相手を知るか自分がどの手段で相手と対峙できるかが鍵ね。やるならあなたのママにバレないようにしないと。ヴィルジニーが知ったらさぞかしガッカリするでしょうね。優等生の息子がこんな悪いことするなんて。セバスチャンがやんちゃ坊やで手がかかっているようだから。それに私やセバスチャンが何かトラブル起こしてもいつのことだと思うけど、あんたなら驚くなんてレベルじゃないわね。」

「絶対ママには言わないで。」

「分かってる。私はそう言うことは言わないわ。言っても私に何かメリットがあるわけではないし。そう言えば今まで誰から何を盗んだか言える?」

「何で?」

「興味があるの。特権階級の家庭の泥棒って何を盗むのか?」

「まずその学級委員のオリビエの双眼鏡、図鑑、哲学書、あと何かよく分からない本、家族写真とか。」

「何だ。怪盗みたいにもっと銀行のお金とか財布とかそう言う物議を交わすものを盗むのかと思ったわ。」

「金品じゃなくても泥棒は泥棒。オリビエの好きなものをどんどん盗むのが好きなの。どんどん困り果てる姿が見たい。常に悩んで勉強に手がつけられなくなれば良いと思ってる。」

「嫉妬のレベルで言うと?消えれば良いと思ってるのよね?それなら本当に死んだらどう思う?満足?」

「何だか複雑。あんな奴どうでも良いんだけど死を願ったり殺したいレベルじゃない。でもいなくなれば僕に注目するはずだよ。」

「そんなに人気になりたいのね。くだらない。」

「だってニコルみたいにひねくれ者として色んな人嫌われるよりそっちの方が良いでしょ。本当にすごいね。手段を選ばず嫌われる勇気があって。」

「今の言い回し何だか親に似た感じね。私は嫌われるのは慣れてる。あんたが私のことを死ぬほど嫌ってるわけではないのは分かってる。私がいなくなれば良い程度に嫌うような相手は全員その程度の人間だと思ってる。」

クレマンも完璧な人間ではない。親の期待値がものすごい高いわけではない。今まで周りの生徒に博識で人気者だった彼が中学校に上がってオリビエと言う中々勝てないライバルの登場でそれが彼の嫉妬の炎をより強固なものにした。


ある日ホームレスの男性が教会の前でお金を欲しがっているのを見た。彼女はかつての自分を見るような眼差しで見た。

「こんにちは。」

別にその男性は誰かに暴行を加えたりお金を盗むような感じではなかった。

「お金はあげられないけどこれならやることは出来る。」

モノプリで盗んだマドレーヌのパックだ。

「ありがとう。」

彼女は人が買ったものをバレないように盗んだ。

「私にも少し分けて。」

その男性とマドレーヌを食べてその場を後にしてランニングをした。

「ニコル!ニコルよね?」

ランニングをしてるとある女性が彼女に声をかけた。

「あなた誰?」

「高校一緒だったアデルよ。」

「久しぶりね。まさかこんな所で会うとはね。」

アデルとは特別仲が良いわけではなかったが、普通に話せるような関係だった。

「あんたもこの辺に住んでるの?」 

「そうよ。最近ここに引っ越したばかりだけど。」

「ニコル!」

ダミアンがやって来た。

「この人は?」

「私の彼氏よ。」

「ダミアンだ。」

「アデルよ。二人ともランニングするのね。」

彼女はニコルのようにスポーツが得意だ。

「今度一緒にテニスでもしないかしら?」

「テニスね。しばらくしてなかったわ。良いわ。楽しそうだから付き合うわ。」

ダミアンは彼女の方をずっと見ていた。

「ダミアン。また考え事?」

「いや、そうじゃないけど。」

「何考えてるかは分かってるわ。」

「そうだ。今度うちの家で旦那の誕生日パーティーするけどどうかしら?」

「面白そうね。ダミアンも参加するでしょ?アデルがいるパーティーは楽しいでしょ?」

「はじめて誰かと知り合えるのは楽しいから参加するよ。」

「それじゃあ、来週の金曜日よ。これが私の番号。後でメールちょうだい。」

彼女と別れた。

「どうだった?あの子綺麗だったでしょ?」

「うん。」

「旦那さんどんな人か気になるわね。」

「男としてか?」

「そうだとしたら?」

「内心面白くないな。だけどそこまで騒ぐことではないしそれで感情を乱したりはしないよ。」

「そう答えるのね。人に執着はしないのね。」

「君に執着して君との関係が壊れる方が俺はずっと気持ちが乱れる。縛り合う関係に世界は広がらない。」

彼女は無言で彼のことを見た。

「君は時々何考えてるか分からなくなる。」

「私が執着してるように見える?」

「時々そう思う。」

「それは何故かしら?」

彼女は彼を見てにやけながら笑った。

「何と言うか欲望に忠実と言うか。好きなことはものすごいアピールしたり、嫌なことはどんな手段を使ってでも感情をアピールしたり。それが君らしい。」

「一度しかない人生よ。欲望に忠実でいる。それが人生よ。」

「だけど犯罪とか誰かを傷つけるようなことはしないで。」

ニコルとダミアンは抱き合った。その抱擁にはお互いの欲と欲が重なり合う。愛したい欲と愛されたい欲が交差する。失いたくない欲とずっといて欲しいという欲が交差する。

「愛してる、マ・シェリー。」

愛の言葉を言いたい欲と愛の言葉を聞きたい欲が2人の間で交差する。夜の景色とともに見えない欲に光を照らす。

「どうする泊まるか?」

「今日はこのまま帰るわ。」

「この時間は危ないから送って行くよ。」

「ありがとう。」

ダミアンはニコルを家まで送って行った。家に着くととても静かだった。

「また車乗りたくなった。」

彼女は勝手にヴィルジニーの車に乗った。そして運転する。運転中少し肌寒かったのでストールを上から被った。辺りは夜中の1時ということもあって人影がなかった。しばらく車で走行を続けだ。

「こんな時間にここで何してるのかしら。」

興味深く近づいて見る。よく見ると男性はウサギの仮面をつけていた。作り物だと分かるようなものだった。そして車を止めるとその男性はニコルの方を見た。さらに仮面を服を全部脱いだ。

「クソ、クタバレ!」

彼女はその男性をひいた。車から降りて男性を引きずって行く。ちょうどそこはウサギをひいた所だった。

「残念だったわね。」

そんな一言を言って近くにあるスコップで穴を掘った。彼を土に埋めて行く。仮面の下がどうなってるかも興味はなかった。また土に都合の悪いものを隠した。

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