進化系すべり台、やっぱりこうなった
さて、二日後の朝である。
本日は晴天だ。冬のキンと冷えた空気は、呼吸する度に鼻をツンとさせる。
広場には村人達が総力を挙げて作り上げた、雪の巨大ジェットコースターが出現していた。
「 何というか…予想はしてたけどすごいねコレ 」
完成した後は、雪に埋まらないように美波が即席の透明ドームで覆っていたので、表面はピカピカのツルツルだ。
遊ぶ時はドームを消して、一冬ずっと遊び倒す計画である。
「 すごいだろ美波。俺達の血と汗と涙の結晶だ 」
物凄く得意気にユーリが言う。隣には村の若者達が一列になっていて、ライさんやイツキさんも混ざっている。
「 うん。すごいんだけどね、コレ大丈夫なの?
あの辺のカーブとかとんでもない角度なんだけど 」
そうなのだ、辛うじて一回転することはないようだが、高いところから滑り降りるだけというすべり台の定義を無視して、急降下からの急上昇を取り入れたジェットコースター仕様になっているのだ。
「 問題ないぞ、美波。この私がしっかり計算して作ったんだ。コースから飛び出す事も、途中で止まる事も絶対にない。
完璧な仕上がりだ 」
ルリさん?一体何があったんですか?
率先して協力しちゃってるんですか?
聞きたい事は山程あるのだが、ルリさんは凄く良い笑顔だ。
「 ユーリ達にジェットコースターの話を聞いたんだ、重力とか慣性の法則だったか?
とても興味深い 。私なりに考察してコースを考えたんだ 」
これも元凶は美波のようだ。
全てはあの一言から始まったのだ。
「 そうなんですね…良いんですよ、ケガさえなければ 」
ケガなんかする訳ないだろ!という、恒例の突っ込みを受けて軽く落ち込んだところで、記念すべき一人目が階段を上がっていく。
公平にジャンケンで決めたそうで、こういう時は絶対に負けないライさんである。
「 行くぞ!見てろよカケル、ハヤテ!
父さんの勇姿を! 」
いやいや、何だよ勇姿って…一人突っ込む美波である。
高さ七メートルはあるだろう頂上にソリをセットして乗り込み、ライさんが滑り降りてくる。
まずは急降下、そして急上昇からの右カーブ。
雪山の後ろを回り込んで前面に出てくると、左右に蛇行しつつスピードを保ったまま飛んだ!
大事なことだから二度言おう。
飛んだのだ。そして少し先の雪だまりに着地した。
「 やったぞ!どうだ!」
うおーっ!凄いぞライ!さすがだライ!
物凄く盛り上がっているが、いいのかこれで…
最後飛んでるし、雪まみれだし。
「 凄いわね!すっごく楽しそう。本当にやらないの?」
滅多に見ないハイテンションのミチルに肩を叩かれて、呆れているのは自分だけだと気づく。
大人達はもれなく全員、子供達もまだ小さいハクとユキちゃん以外は皆やる気である。
長蛇の列ができている……
「 うん。大丈夫かな…行っておいでよ、ミチル 」
そんな会話をしている間にも、また一人飛んでいく。ケガはしないと分かっていても、すごい光景だ。
「 ハク、ユキちゃん、あっちで遊ぼうか 」
美波は今日も子供用コースて二人と遊ぶ事にする。
「 ねぇ、お姉ちゃん。僕たちも大きくなったらアレできる?」
しっぽをフリフリ上目遣いに見上げてくるハクも、もうすぐあちら側の狼になってしまうらしい…
「 そうだね、大きくなったら出来るよ。
というか、ハクが大きくなる頃にはアレも更にパワーアップしてる気がするよ…… 」
そうなの?わぁい!と無邪気にはしゃぐ二人と手をつなぎ、今のこの瞬間を大事にしようと決心する。小さいうちだけだ、付き合ってくれるのは…
すっかり人気を奪われた雪のすべり台一号で、美波はハクとユキちゃんと三人で遊ぶ。
しかし五回目くらいで膝が笑いだした。
五メートルの高さまで階段を上り、ソリで滑り降りてを繰り返すのだ。
結構ハードな遊びである……
「 お姉ちゃん、大丈夫?ちょっと休む?」
「 ごめんね、いつも先にバテちゃって… 」
「 いいの、お姉ちゃん。人間と獣人は体のつくりが違うから優しくしてあげなさいって、いつもパパとママも言ってたの 」
ユキちゃんは小さな手で、座り込む美波の頭を撫でてくれる。
ハクも心配そうに背中に抱き付いている。
何て良い子達なんだろう。いつかあちら側に行ってしまうとしても、今日のこの瞬間を忘れまい!
健気な二人の優しさにグッときた美波だが、ふと大きな影が広場に落ちて現実に引き戻された。
上を見上げると、二頭のドラゴンの姿があった。
手紙の返事を出さずに、直接やって来たようだ。
大きな翼を広げたまま、魔法を使っているのだろう、殆ど風圧を感じさせることなく広場の端に着陸した。




