ドラゴンもエルフも雪まみれ
今更ですが、コクガ様は漢字だと黒牙・ソウキ様は蒼姫というイメージです。
シロガネをカタカナ表記にしてあるので、合わせてあります。
コクガはともかく、ソウキはイメージしにくいと思うので……
すぐに人型になったコクガ様ソウキ様ご夫妻と、背中から降りたローザ様を、村人全員で歓迎する。
「 お呼びだてして申し訳ありませんでした。
寒い中ようこそいらっしゃいました。
村人一同歓迎致します 」
先程までのはしゃぎっぷりが嘘のように、涼しい顔で挨拶するミナトさん。
さすが大人である。腹黒くはない、多分。
「 返信せずに来てしまってすまないな。ローザの話を聞いたら待ちきれなくてな、干し柿とやらが。
ところでそれは何だ?面白そうな物を作ったな 」
コクガ様は、巨大なジェットコースターに釘付けだ。隣に寄り添うソウキ様も同様である。
「 お久しぶりです、皆さま。あれは元々は、あちらの小さめのすべり台を作るところから始まったんです。子供用にと説明して作ったもので、小さい方も既に私の想定外の仕上がりなのですが、こちらは更にパワーアップしてしまって……
今は一人用のソリで滑り降りる、大人も楽しめるジェットコースターという全く新しい遊びになっています 」
「 まぁ美波、楽しそうじゃない。私達もやってみたいわ!」
ローザ様もそちら側なんですね…
若干ショックを受けたものの、勿論ですと笑顔で返す。
「 かなりスピードが出る上に、最後はあちらの雪だまりに飛び込むことになります。
大丈夫ですか?」
「 問題ない。干し柿の前にこちらを体験したい 」
コクガ様はソウキ様と手をつなぎ、既に歩き出している。
「 こっちだよ、ここから上がるんだ。
俺達が作ったんだよ!」
ユーリは三人を階段まで案内し、先に立って上っていく。
「 これに乗るんだ。こうして、そしたらこう!」
雪山の天辺からユーリが滑り降りてくる。
あっという間に飛び出して、雪だまりへ落ちる。
「 こうするんだよ!やってみなよ!」
雪まみれの髪の毛から豪快に雪を払いながら、ユーリが上に向けて叫ぶ。
そして滑り終えたソリにロープをかけて、雪山の上に引き上げる。大人用のソリは全部で四つあるので、スムーズに次の人に渡すことが出来るのだ。
「 楽しそうだな、ではまず俺からだ。行くぞ!」
コクガ様はそう言うと、勢いよく滑り降りてくる。ドラゴンの長が雪だまりに突っ込み、雪まみれになっている……良いのだろうか。
己の一言から始まって、あっという間にこんな事態になってしまった事に目眩を覚える美波に、コクガ様は雪を払いながら歩み寄り声を掛けた。
「 面白かったぞ。空を飛ぶのとはまた違って良いものだな。学校にあったトランポリンなんかもそうだが、純粋に楽しめる娯楽も広めて欲しいものだ 」
畏れ多いお言葉である。こんな悪ふざけの集大成のようなシロモノに、そこまで価値を見いだして貰えるなんて、申し訳なくなってしまう。
「 楽しんで頂けたのなら嬉しいです。正直なところ、こんな風になるはずではなかったのですが。村の皆には例のバリアもあるので、ケガをする事もありませんし、喜んでくれているので結果的には良かったのでしょうが。
普通の人間が安全に楽しむなら、あちらの小さい方のなだらかなものと、カーブのあるものが限界でしょうか 」
そんな話をしていると、滑り終えたソウキ様も雪を払いながらやって来た。
今日はパンツスタイルなので、見事なプロポーションが強調されていて、同性でも見惚れてしまう。
「 たのしかったわ、良いものを作ったわね。
ねぇコクガ、もう一度滑りましょう 」
ドラゴンの仲の良さを見せつけるように、コクガ様の手は物凄くナチュラルにソウキ様の腰にまわされている。
「 ありがとうございます、ソウキ様。ぜひ楽しんできて下さい 」
その後はローザ様も虜になったようで、三人は雪のジェットコースターを満喫するまで、それぞれ七回位は滑ったらしい。
村人達は順番を譲ろうとしたのだが、きちんと並ぶとおっしゃったので、シロガネ様のお屋敷でテーブルを囲んだのは一時間以上後の事だった。




