ユキちゃんとお風呂
「ユキちゃん、お風呂に入ろっか。シャワーだけじゃなくて、お湯に浸かれるんだよ。」
「お風呂?温泉ならママとパパと入ったことあるよ。」
つぶらな瞳で見上げながらユキちゃんが言う。山で暮らしていたらしいから、温泉もあったのだろう。
「残念ながら温泉じゃないんだけど、気持ちいいよ。一緒に入ろ?」
もじもじしながらも頷いてくれたので、一緒にお風呂場へ向かう。すると、家のドアが開いてハクが入ってきた。
「お姉ちゃん、おやつ食べに来たよ!」
試作品の味見を一緒にする事になっていたのだ、色々あってすっかり忘れていた。
「ごめんハク。今からユキちゃんとお風呂に入るから、ミチルと待っててくれる?」
するとハクは美波の腕の中のユキちゃんに気付いたようで、駆け寄ってきた。
「こんにちは、僕ハクっていうの。
狼だよ、五十才。」
ユキちゃんはびっくりしたようだが、同年代のハクに心を許したようで、きちんと自己紹介した。
「あたしはユキ。ウンピョウで五十才なの。
パパとママが死んじゃって、ユーリと一緒に来たの。」
「そうなの?大丈夫だった?ユーリはいたずらばっかりする困った大人なんだよ。」
ユーリはハクにまで残念なエルフとして認識されているらしい。
「うん、大丈夫だよ。あたしの方が迷惑かけてるの。」
腕の中で小さくなってしまったユキちゃんに、そんなことないよと声をかけ、美波はハクに再度大人しく待っているように言った。
「僕も一緒に入っていい?ユキちゃん、アヒルさんで遊ぼう!楽しいんだよ。」
ニコニコしながらしっぽを振るハクに、ユキちゃんは暫し考えて小さく頷いた。
ハクがいてくれた方が、気がたまぎれるかもしれない。
「じゃあ、三人で入ろっか。ミチル悪いんだけど少し待っててくれるかな。あと、お風呂上がりのハクの世話、お願いしていい?」
もちろんよ。というミチルに感謝しつつ、子供二人とお風呂場に入った。
「ユキちゃん、そのまま入るの?じゃあ、僕も狼になろうかな。お姉ちゃんいい?」
子狼とウンピョウの子と一緒にお風呂……
パラダイスかも、いつ死んでもいいです!
一瞬別の世界に旅立ちそうになりつつ、かろうじて理性を取り戻す。
「いいよ。じゃあ二人で先に入ってて、お湯溜めるから。」
一人ずつ湯船に入れて、お湯を出す。
美波が服を脱いで入る頃には、二人は湯船の底に座り溜まったお湯で遊んでいた。
ハクに一緒に入ってもらって正解だったかもしれない。美波は二人を抱っこして洗い場に下ろし、順番に石鹸で洗っていく。シャワーで泡を流す頃には、いい具合にお湯が溜まっていた。
「泳いでも良いけど気をつけてね。この上なら足がつくからね。」
一人ずつ湯船に入れて、ユキちゃんにはこっそりと例のバリアをはっておく。アヒルさんも投入して、美波も体を洗うことにした。
シャワーを浴びながら、子供達の会話を聞いてみる。
「アヒルさんかわいいでしょ、お姉ちゃんが作ってくれたんだよ。
んー、でもこのままだと遊びにくいね。
噛んだら穴あいちゃうもん、ユキちゃん人型で遊ぼうよ。」
ナイスだハク!ナチュラルに人型への変化を促すハクに、心の中で拍手をおくる。
シャワーの隙間から窺うと、ハクの隣には黄褐色の髪に丸い耳の小さな女の子がいた。
良かった、人型になってくれた!
何気ない風を装って、シャワーを終えた美波は子供達に声をかける。
「お姉ちゃんも入っていいかな?」
湯船に入るとユキちゃんが膝に乗ってきた。人間ならまだ五才、突然お母さんを亡くしてさびしかったのだろう。ギュッと抱き締め頭を撫でて、アヒルさんで遊ぶ二人を見守る。
穏やかで優しいハクはユキちゃんと相性が良かったようで、二人は仲良く遊んでいる。
「お外で入る大きい露天風呂っていうのもあるんだよ。僕は男の子だから男湯に入らないといけなくて、お姉ちゃんと一緒に入れないの。
ユキちゃんは一緒に入れるでしょ、いいなぁ。」
何とも微笑ましい光景だ、夢中で遊ぶ二人にのぼせちゃうからそろそろ上がろうねと告げて、ドアを開けてハクを外に出してミチルを呼ぶ。
「おいで、ハク。外で拭こう。」
ミチルに連れられてハクが脱衣所の外に出たところで、ユキちゃんを連れてお風呂を出る。
大きなタオルで体と髪を拭いてあげて、とりあえずパンツとキャミソールを作って着せてあげる。
ユキちゃんは目をキラキラさせてびっくりしている。美波も手早く着替えて、タオルでくるんだユキちゃんを連れてリビングへ戻った。




