旅のエルフとウンピョウの女の子
マイナーな大型にゃんこ、ウンピョウです。
馴染みがないかも……でも、とっても綺麗なのでユキちゃんはウンピョウにしました。
興味のある方は検索してみて下さいね。
翌日、ミチルと二人自宅で新しいお菓子を試そうと試作品を作り、お茶の準備をしていると、マリさんが訪ねてきた。
「美波さん、シロガネ様がお呼びです。
一緒に来てもらえますか?」
「シロガネ様に何かあったんですか?」
マリさんが自宅へ来たのは初めてで、心配になってそう尋ねた美波に、マリさんは慌てて否定する。
「違うんです、シロガネ様は何ともありません。
ただ、ユーリさんがいらしてその同行者がちょっと。」
「え?ユーリが来てるんですか。
あいつがまた何か厄介事を持ち込んだんですね!」
ミチルが慌てている、珍しい光景だ。
「いいえ、そういう訳では。
とりあえず二人とも来てもらえますか?」
マリさんと共に、シロガネ様のお屋敷へ向かう。道中のミチルの説明によると、ユーリというのは成人したばかりの五百才位のエルフの男の子で、国中を旅しているらしい。
ハクロウ村とは縁があって、年に一度はやってくるのだとか。
そして彼は前にミチルが言っていた残念なエルフだそうで、気品や上品さとは無縁のかなりのやんちゃ坊主らしい。
「あのローザ様の甥っ子なんですって、信じられないわ。」
先日の訪問で判明したその事実は、かなりミチルに衝撃を与えたらしい。
「そんなにすごいの?でもエルフでしょ、いくら何でもそこまでとんでもないって事は…」
「あるのよっ!あいつときたらカケルとハヤテをそそのかして、一緒になって村中にカエルをばらまいたり、お土産にドワーフの作ったアルコール度数の滅茶苦茶高いお酒を、珍しいリキュールだって嘘をついて村人全員を地獄の二日酔いにしたり。
最悪のいたずらを毎回しでかすのよ!」
それは何とも予想の斜め上というか、少なくともエルフのイメージにはそぐわないエピソードだ。
そうこうするうちに、シロガネ様のお屋敷に到着した。マリさんに案内されてリビングに入ると、シロガネ様の正面に件のエルフがいた。
「君が美波?噂は聞いてたよ、俺はユーリ。
よろしくな!想像してたより美人さんだね、綺麗な黒髪だ、触っていい?」
あまりの意外性に固まる美波に、椅子から立ち上がったユーリが迫ってくる。
長い金髪を後ろで一つに結び、濃い紫の瞳の彼は実に端正な美貌の持ち主だ。
ただし、黙ってさえいれば。
「美波に触るな!この女たらしエルフ!」
ミチルが珍しく強い口調で言いながら、美波の前に立つ。
「何だよミチル、いいじゃんか。挨拶だよ、挨拶。
綺麗な女の子に会ったら口説かないと。」
「そんな挨拶はないっ!美波は大事な友達なのよ、あんたと喋ると穢れるわ!」
今にもグルグル唸りそうなミチルと、軽すぎるエルフに呆然とする美波に、シロガネ様が声をかける。
「すまんな、美波。こら、少し落ち着きなさいミチル。ユーリもちゃんと挨拶しなさい。」
我に返ったらしい二人を見て、美波はユーリに挨拶する事にした。
「はじめまして、異世界から来た美波です。
よろしくお願いします。」
「俺はユーリ、よろしくな。」
握手をかわし、どうにか挨拶を終えた。
「シロガネ様、お呼びだと聞いたのですがユーリさんを紹介する為でしたか?」
美波の問いに、珍しくいいよどむシロガネ様。
「いや、まぁ、それもあるんだが。
実はそこのユーリが、旅先で事故で両親を亡くした子を保護してな。
その子の事で頼みがあるんだが……」
子供?改めてユーリの横を見れば、大きめの袋がモゾモゾ動いている。
シロガネ様に目で促されて近付いてみる。袋の口を開けると、その子と目が合った。
「かわいい……この模様、ウンピョウでしょうか。」
袋から出てきたのは、小型犬位の大きさのウンピョウの子供だった。ヒョウとは違う美しい模様、黄褐色の毛に黒のはんもんが実に美しい。
青くて丸い瞳は涙で潤んでいて、庇護欲をかきたてられる。
「知っているのか、ウンピョウ族は数が少ない上に山の上に住んでいるから、あまり町にはいないんだ。この子の親は旅の途中で崖崩れに巻き込まれたらしく、ユーリが通りかかった時にはこの子が一人で泣いていたらしい。」
美波の知識にあるウンピョウと近い種族らしい。
「そうなんだよ。とりあえず俺が保護したんだけど、途中の町で確認してもこの子には親戚がいないらしくてさ。町の孤児院は人間の子ばっかりで、獣人の遊び相手には向かないだろ。
それでここならハクと年が近いし、しばらく面倒見てくれるかと思って連れてきたんだ。」
ミィー。と、小さな声で鳴くその子は、悲しい思いをしたらしい。
ユーリによると女の子で、名前はユキちゃん。
両親を目の前で亡くしたのがショックだったようで、出会ってからずっと獣型のままらしい。
「ユキちゃん、悲しかったね。
お姉さんも別の世界から一人ぼっちでここへ来たの。今はハクロウ村の皆が家族みたいなものだけど、最初は心細くて悲しかったよ。
お姉さんとお友達になってくれる?」
驚かさないように、ゆっくりと手を差しのべると、ユキちゃんは美波の手の匂いを嗅いだ後、ミィーと鳴きながらしがみついてきた。
小さな体を抱き締めて撫でながら、もう大丈夫と話しかける。
「シロガネ様、ユキちゃんは私が預かっても良いですか?疲れているみたいだし、この子にはお風呂と食事が必要です。」
「あぁ、頼むよ美波。出来たら落ち着いて人型になってくれるといいんだが……よろしくな。」
シロガネ様に頷いて、ユキちゃんを抱いてミチルと共に自宅へ戻る。




