お引っ越し
数日後、木工担当の男達が協力して仕上げてくれたお陰で家具が完成した。
シンプルなベッドのベッドボードには、美波の名前からヒントを得て、波打ち際で遊ぶ子狼の彫刻が施されている。
床に座る生活をするつもりでオーダーしたローテブルは、大きめの物が二つ。一つはリビングの左側で食事等に使用し、もう一つは右側のスペースへ。
こちらはレシピを書いたり、ランプのデザインを考えたりする作業スペースだ。
二つとも同じサイズの長方形なので、繋げれば大人数で食事が出来る。このテーブルにも側面にさりげなく波の模様が彫り込まれている。
ベッドに敷くマットレスを作り、テーブルの回りにクッションを配置する、ソファー代わりの大きめのビーズクッションも四つほど作った。色は全てブルーの濃淡で統一する。
ルリに頼んでいた配管工事も終了したので、これで新居は完成だ。
協力してくれた人々にお礼を言い、村人達にお披露目する。見たことのないデザインに興味を持ったようで、特にバスタブへの質問が殺到した。
近々、公衆浴場を建設する事になるかもしれない…
ソファー型のビーズクッションも好評で、公民館に置くことになりそうだ。
その日の内に私物を運び込み、引っ越しは完了した。早速泊まりに来たミチルとハクを招待して、新居一日目の夜を過ごす事になった。
その日の夕食に自作のオーブンで焼いたのは、ホワイトソースのポテトグラタンだ。小麦粉にバターとミルクがあれば作れるので、自作してみたのだ。
初めて食べるホワイトソースは二人とも気に入ったようで、どんどん減っていく。
シロガネ様に引っ越し祝いに頂いた白ワインを開けて、ミチルと二人で乾杯する。おつまみはキュウリとニンジンのピクルスに、川でとれたエビをフライにして、タルタルソースを添えてみた。
マヨネーズとピクルス、ゆで卵にタマネギがあれば作れるのだ。これも気に入ってもらえた様で、ハクの口の回りはタルタルソースでベトベトだ。
「美味しい?ハク。初めて作ったから、ちょっと心配だったんだけど。」
口を拭いてやりながら問えば、ニコニコ顔で返された。
「すっごく美味しいよ!僕これどっちも大好き。
きっと村の皆も好きだと思うよ。」
フリフリ揺れるしっぽが、何よりもハクの気持ちを伝えている。
「良かった~。ありがとね、ハク。
美味しいって言ってもらえると、すごく嬉しい。
ミチルも口に合った?」
「もちろん。普通にご飯でもいいし、おつまみにも最高よ。」
今度はカスタードクリームも作ってみようか、トローリ系が大丈夫で甘いもの好きなら気に入るはず、クリームパンとかどうだろう。
内心、今後の新作レシピに想いを馳せつつ、新居での初めての夕食は大満足で終了した。




