荷車の改良
「そういえば、町までは何で運ぶんだろ。」
木工工房を出たところでふと思い立ち、確認する事にした。右手に見える放牧スペースに人がいるのが見えたので、聞きに行ってみる。
「お仕事中すみません。ちょっと聞いてもいいですか?」
「おぅ、美波じゃないか。何だ?」
答えてくれたのは、グレーの耳にグリーンの瞳のマッチョなお兄さん、ミノリだ。お父さんのアキトさんと一緒に牧場を管理している。
「忙しいところごめんね、ミノリ。
ちょっと聞きたいんだけど、町まで荷物を運ぶ時って何で運ぶの?」
村人達とはすっかり顔馴染みだ。
「町へ行く時か?荷車だよ、ほら、あそこ。」
指差す先には木造の納屋の様な建物、中には荷車がある。
「入ってもいい?近くで見たいんだけど。」
来い来いと手招きされて、荷車を近くで観察する。
サイズ的には軽トラの荷台の倍くらいか、頭の方に御者席があって、木の車輪がついている。
かなりの大型が二台だ。
「大きいね、これって動力は何?馬みたいなのがいるのかな。」
「これはな、森にいるブラックホースっていうでっかい馬に頼んで、ひいてもらうんだ。」
馬に頼む?どういう事だときょとんとする美波に、ミノリは得意気に説明してくれる。
「ブラックホースってのは普段は森で生活してるんだけど、俺たちハクロウ村とは仲が良いんだ。呼べば村まで来て手伝ってくれる。お礼に俺たちは、仕事の後で体を洗ってやってブラシをかけて、村でとれた野菜と砂糖をご馳走するんだ。
とにかくでかくて、良い奴等だ。」
何そのシステム、タクシー?馬がタクシー的な?
驚きのシステムにしばし固まる美波、やはり異世界だ、常識が違いすぎる。
「そうなんだ。それは凄そう、見てみたいな。
町までの道ってどんな感じ?平らなのかな。」
「道か?村までの道と大差ないぞ。土の道だな、デコボコしてるからそれなりに揺れる。御者席にいると確実に尻が痛くなるな。あのクッションの小さいの、今度作ってくれよ。」
それは勿論OKだけど、と考え込む。
やっぱり揺れるか。アスファルトじゃないし、荷車にはサスペンションもないようだ。アイスクリームだけなら構わないが、今作っている繊細なランプは揺れに弱そうだ。
「コレさ、車輪の部分に薄くクッション材を付けたり、荷台に衝撃を吸収するマットとか敷いても大丈夫かな?」
「ん?大丈夫だと思うけど、コレ村の共有財産だからシロガネ様に報告してからの方が良いと思うぞ。」
確かにそうだ。納得した美波はミノリに礼を言って、放牧スペースを後にする。
それにしても、このモコという生物は不思議すぎる。ミルクを出してくれる有難い生物なのだが、顔は茶色の目がクリッとした牛で体が羊なのだ。それはもうモッコモコの羊さんである。
ミルクがとれて羊毛もとれる、一粒で二度美味しい的なスーパー生物なのだ。初めて見た時はびっくりしたが、慣れてくると可愛い奴等だ、とても人懐っこくて手触りも最高。この羊毛から作った毛糸は、セーターの材料となりハクロウ村にとって、なくてはならない相棒なのだ。




