コザクラ町へ行ってみる
朝七時半、本日は月に一度のコザクラ町への遠征日である。
先日の案を多少改良し揺れに強くなった荷車に、ジャムやランプ、冷蔵庫を積んで売りに行くのだ。
ランプを詰めた箱にはプチプチ的な緩衝材、更に荷台と車輪に改良を加えたので、破損する事はない筈だ。
現金を入手したら砂糖などを購入し、秋祭りの出店の申し込みもしなければならない。
今日は荷車一台に荷物と、ギンとクロ、ミナトさんにイツキさん、美波が同行する。ギンとクロは御者役で、ミナトさんとイツキさんは売買の交渉にあたる。
美波は町へ行った事がないので、良い機会だから見ておいでと、村人達に勧められての参加である。
お仕事モードで馬車に乗るのはこのメンバーだが、村の休日でもあるので、行きたい人は着替えの入ったバックを荷台に載せて狼になって走るのだ。コザクラ町まで約二時間、美波には絶対に無理だ。
ブラックホースがいてくれて本当に良かった、御者席の先には、先程クロが笛で呼んだブラックホースが二頭繋がれている。本当に大きい、北海道のばんえい競馬の馬くらいありそうだ、体重は多分トン単位だろう。
言葉は持たない生き物だが、その漆黒の毛並みは美しく、優しい目をした馬だった。
「さぁ出発するぞ。準備は良いか?」
クロの声に狼達が一斉に応える、何とも素晴らしい光景だ。普段はみんな人型なので、狩りに行く男達を見送る時くらいしか、大人の狼の群れを目にする機会はない。
あぁ、モフモフしたい……
しかし、撫でたら変質者だ。人型のクロを撫で回せるか?
絶対ダメ!!と、心の中で葛藤しつつ眺めて楽しむに留める。
撫でて良いのは子狼まで、彼等は人狼……
頭の中で繰返し、我慢する。ちょっとした我慢大会だ。
ギンとクロの掛け声で馬車が走り出し、お出かけに参加する狼達は馬車の前を駆けてゆく。
ここから二時間、馬車の旅だ。
「美波、このアイデア大正解だな。揺れが全然違う。」
ミノリが言っていたのは本当らしく、御者役になったら二時間はお尻の痛みと戦わなくてはいけなかったらしい。今回の改良で御者席には、低反発素材のクッションと背もたれが設置されている。
荷台にも床一面にクッションが敷かれ、幾つかビーズクッションも載せたので、いつもなら走った方がマシなので荷台には乗らないはずのミナトさんとイツキさんは、荷台で寛いでいる。
美波の席は御者席、クロとギンの間である。
「そうなんだ、良かった。何もしなかったら多分、わたし二時間ももたなかったよ。」
今の乗り心地は正直なところ、安めの軽といったところで、許容範囲内だが極上の乗り心地とは言えない。おそらく何の対策もとらずに乗っていたら、確実に酔っていただろう。
「ははっ、かもな。子供達は自分の力で走れるまでは町へ行けないんだ、荷台に乗せるとバテるからな。」
俺達が初めて町へ行ったのは120才位だったか、と思い出話をするギンとクロ。
小6で二時間走り続けるとか、狼凄すぎる…
体力の違いを再認識する美波だった。
ハクロウ村の入口から続く森を抜けて街道に出ると、その先は平原だ。道の左右には果てしない草原が広がり、遠くには森が見える。コスモスの様なピンクの花が群生していて、風に揺れている。
この道の先に、コザクラ町があるのだ。




