夜桜もいいものです
間が空いてしまい申し訳ありません。
不定期になるかもですが、完結させますのでよろしくお願いします。
お花見から数日後、早朝のコザクラ群生地では慌ただしく美波特製夜桜ライトの取り付けが行われていた。
お花見はこの世界でも喜ばれたようで、連日の大盛況となり日没ぎりぎりまで人の波が途切れることはなかった。
それならば是非とも夜桜も楽しんでほしい!という事で、早朝の準備作業となったのである。
「こっちは終わったぞ!あとはどこだ」
「照明が足りないぞ、持ってきてくれ!」
コザクラ町の男たちは人海戦術でサクサクと取り付けていく。
人間が運び、身体能力の高い獣人さんが木に登り巻き付けていくのだ。
うまい具合に役割分担をしているので、すでに結構な数のコザクラに乳白色のテニスボール大の照明が巻き付いている。等間隔に15個ずつロープに通された照明は日没とともに自動点灯するので、今夜は青白い光に照らされた薄紅色のコザクラを見ることが出来るはずだ。
「順調ですね、フェラリーデ様。今夜が楽しみです」
「そうですね、お試しで見た夜桜もとても美しかったです。一本であれだけの美しさなら今夜はどんな光景を見られるのか、今から楽しみです」
夜桜の美しさを説明する為にお披露目した、ライトアップされたコザクラを思い出したようだ。
一本だけだったけれど、とても幻想的な美しさだった。
「私も楽しみです!一度村に戻りますけど、今夜は必ず見に来ます」
「では、夜にお会いしましょう。お疲れでしょう?少しゆっくりして下さいね」
「ありがとうございます、でも昨夜は快適でしたよ?ドームハウスホテル」
手を振ってフェラリーデ様と別れた美波は、ミチルとクロを探す。
早朝からの作業の為、前日からコザクラ町に入りホテルでひたすら照明を作っていたのである。美波が作りミチルとクロがロープに通して固定するという流れ作業で、大量の夜桜ライトを生産した。
町側の厚意で、ドームハウスホテルでの作業となったのだ。
町の男達にまじって取り付け作業をしていた二人と合流し、すべての作業を終えることができた。
「お疲れ様、朝ごはんどうしようか。こっちで食べていく?」
「そうね。お腹すいちゃったし、そうしましょう」
「俺は肉が食べたい、トムの店のサンドイッチにしよう」
クロのリクエストで、がっつり系のサンドイッチで有名なトムさんの店でテイクアウトすることにした。
分厚く切った自家製ハムを香ばしく炙って、チーズとマスタードソースと共にハードなパンにサンドしたものが一番人気だ。
奥さんの焼くパンもこの時間なら焼きたてなので、町の住人の朝ごはんに大人気なのだ。
「いいね!あそこの奥さんの耳、ほんとに可愛いよねぇ」
奥さんのルビーさんは純白のうさぎさんで、真っ白で長い耳は内側がほんのりピンク色、毛並みはつやっつやなのである。ちなみにトムさんは茶色いうさぎさんだが、ゴリマッチョなワイルド系なので美波のモフモフレーダーには引っかからない。マッチョなうさぎは微妙である。
「美波...サンドイッチが目的だからね、恥ずかしいからあんまりじっと見ちゃだめよ」
「分かってるよ!でも可愛いんだもん、あの耳に真っ赤な目でいらっしゃいませって言われたら、それは見るでしょ!じっくりと」
ブハッ、とクロが吹き出す。
「いやいや、駄目だろう。いい加減慣れろよな、もう半年以上たつんだからさ」
力の抜けそうな会話をしつつ、どうにかサンドイッチを購入してホテルまで戻った三人は、熱々のミントティーを飲みながら朝食をとることにした。
「ん~。美味しい、このソースが良いよね」
早くも二個目に取り掛かる二人もコクコクと頷いている。さすが人気店だけあって文句なくおいしい、チーズもハムの熱でいい感じに溶けているのでソースと一体化している。
三個目をほおばる二人にミントティーのお代わりを注いで、美波は部屋の入り口にシーツや毛布をまとめていく。後で担当者が洗濯してくれるので、作業が楽なようにお手伝いだ。
「快適だったね、このお部屋。クロも寝心地よかった?」
昨夜はロフトのベッドを美波とミチルが使い、クロは予備のマットレスでリビングで寝たのだ。
「あぁ、ぐっすり寝れたよ。予備のマットレスをその都度運び込むのはいいアイデアだな、ロフトのベッドも大きいから大人二人でも使えるんだろ?結構大人数でも泊まれるな」
ドームハウスホテルを作ったあと、露天風呂のそばに予備のマットレスを収納したり洗濯したりする為の建物を建てたのだ。上から見るとL字型になっていて、ホテルからも露天風呂からも死角になる所でシーツなどを干せるようになっているすぐれものだ。リビングを広く使う為の工夫でもある。
「うん、ロフトに4人リビングにも詰めればマットレス四つは入るからね。お客様が何人になるか分からないから、なるべく自由に使えるようにしたんだ。友達とか家族なら同じベッドでも大丈夫でしょ?」
「そうね、そろそろ気の早い方々は来ちゃいそうよね。まだ一週間あるけど」
「笑えないよ~、ミチル。まぁ、もうホテルは作ってあるから後はコザクラ町にお任せだけどね」
最後にもう一度室内をチェックして、三人は自動車でハクロウ村への帰途についた。




